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アルヴィノーラの森で  作者: ありかわつぐみ
挿話
49/81

幸せであれと思う心



晴れの門出を祝う人々……そして公の場に初お目見えの人。


思いやりが交錯してる感も……。



マーサの婚礼に、増える予定の家族も含めて総出で向かう。

馬車は3台。

父上とお母さまとエリーザ。

ハンナと婚約者のアレクサンドル。

そして僕とイリーナ……と、なぜかここにクロードが同乗。

更に……僕らの乗る馬車の御者がエミリーさんで、御者台には従者の格好をさせられたアルフ。

「イリーナにとって見知った顔が多いほどいいかと思ったけど……それでクロードがこっちに乗ったのか?」

「いや、それはまた別の話」

「は?」

「エリーザがハンナ達の馬車に忍び込もうとしてたから捕まえてお父さま達の馬車に放り込んだんだけど……その時に『お兄さまは別の馬車に乗って!でなきゃあたしハンナ姉さまの馬車に乗るもん!』と駄々こねたんだ……出発間際にね」

……エリーザぁ。

「アレクサンドルを緊張させまくるかシャルルとイリーナのおじゃま虫するかの二者択一だったんだよ」

「……なら、仕方ないか。アレクサンドルが落ち着いて移動できるにこした事ないから」

アレクサンドルからすれば婚約者の義兄が一緒に乗っていては……気まずいだろう。

「ねえ、私も『婚約者の弟』と一緒に乗ってるんですけど?」

イリーナがぷうっとふくれて言うと。

「えー、そこは兄貴(アルフ)の友人枠にしてよ」

クロードが文句をつけた……今その枠使うのか。




――――――――――――――――――




イリーナちゃんの、婚約者デビュー。

アルフが伯爵家から頼まれたって事で、私がシャルル様とイリーナちゃんの乗る馬車の御者になって……アルフが私の助手的な感じで横に乗ってる。

「……私、ここに乗ってていいの?」

「シャルル様とクロードが……エミリーとオレを並べて座らせたいんだって」

「え、でもそれなら私が手綱持ってなくても……」

「そこはイリーナの希望。だから観念して」

……なんだか丸め込まれた気がする。



シュミット伯爵領に、事故なく到着。

「ご一家のお帰りまで自由時間ですから」

と伯爵家の御者さん達に言われた私とアルフ。

……だっだはずなんだけど。

シュミット伯爵家の執事さんがいらっしゃって、私とアルフが呼ばれて。

「侍女さんに棒術講座かな」

「それだったらオレいらなくね?」

「それもそうよね」

「……そこ納得するのかよ!」

「まさか打たれ役やりたいとかじゃないよね?」

「やだよあれ痛いんだぞ」

くだらない事を言い合いながら(たぶん全部きこえてる執事さんの肩はふるふるしてた)。

連れてこられたのは衣装部屋。

「ハマー伯爵エドモンド様よりのご依頼です……婚礼後の祝宴にホイットニー様とジャクソン様を、と」

……え。

私もだけど、アルフもポカンとしちゃってる。

「祝宴には、薬剤師のテイラー様とエレナ様も急ぎいらっしゃいます。マーサ若奥様のお兄様達のお友達でいらっしゃるのでしょう?ホイットニー様とテイラー様は」

執事さんが言った……けど、けど!

「エレナさんはともかく……私、そんなお席に行った事ないから」

「ご心配にはおよびません、ガーデンパーティですから」


……そういう問題じゃないんです!

私、外国人の庶民ですから!




――――――――――――――――――




いやビックリした。

ガーデンパーティとはいえ婚礼後の祝宴に招待されるとは。

「……伯爵様も、お人が悪い。事前に言われてたら断ってるとこだ」

急きょ呼ばれたモーガン達と合流した。

「たぶん……イリーナのためだと思うんだけど」

エレナさんが言って……はっとした。

「シャルル様とハンナ様とエリーザ様はお小さい頃から、クロードはそれなりに経験ありだけど、イリーナはこれが最初。見知った顔をなるべくたくさん置いときたいんじゃないかしら……()()()()()()

合点がいった。

「兄と友と先輩2人を事後承諾で配置か……後でシャルル様によーく説明してもらおうな」

モーガンがなんとなくこわい事を言った気がするが、気にしないでおこう……。




――――――――――――――――――




マーサ様の婚礼は滞りなく進んだし、祝宴もたいした混乱はなかった。

ハマー伯爵家御一同様のテーブルの近くで飲み物にむせた人がいた位だった。


いち早く気づいたイリーナが動こうとしたから、オレはそれを止めた。

「もうじき伯爵家の奥様になるんだから、まず自分が動くんじゃなく他人を動かす習慣を身につけてくれ」

先輩風を吹かせて言った。

「……でも」

「上に立つ者がせせこましく動くんじゃないってオレも母さんに言われたんだよ、館長補佐にされちまう時に。それに今、徽章は着けてても薬持ってないだろ。この場はオレとエレナに任せて、戻ってくれ」

そう言って戻らせた。

そして……むせてた人は高齢男性で、シュミット伯爵家の縁者だそうで。

「……何者」

そりゃ誰何(すいか)もされるよな、ハマー伯爵家子息の婚約者にえらそうな物言いしたんだから。

「私はハマー伯爵夫人おかかえ同然のSクラス薬剤師テイラーの息子で、母と同じく薬剤師です」

思いっきりむせながらも、オレが着けている徽章は確認していたようで。

「…………青」

「はい」

クラス別の徽章の色。

上位クラスから順に青・赤・黄・白の4色だから……オレは青、エレナは赤を着けてる。

「これは母の師匠にあたる薬剤師が時の国王陛下にさしあげた事もあるせきどめと同じ物です。嘘みたいにおさまりますから楽になりますよ」

即効性のせきどめを飲ませた。

おもしろい位ピタっと止まるんだ、これ……むせた程度なら完全に止まるすぐれもの。

荷物に入れておいてよかった。


シュミット伯爵家から感謝されて面映ゆい……けども、薬剤師としての職務だと格好つけておいた。

一応今回のオレの立ち位置は「母の代理でハマー伯爵家についてきた薬剤師」、その役は果たせた……と思う。

ハマー伯爵エドモンド様からもお礼を言われた……イリーナに「人を使う事を覚えろ」と言った件だった。

「それに関しては……心情は先輩(クロード)が詳しいでしょうね」

とだけ申し上げておいた。




――――――――――――――――――




マーサの花嫁姿は、とても綺麗で。

9歳からしかかかわってきていない途中参加の母親だけど、感無量。

あと2回、この途中参加の母親の役目が決まっていて……だけど。


私の実子の婚礼っていつになるのかしら。

エリーザはまだ小さいからともかく、クロードに浮いた話のひとつもないのは……何故。




――――――――――――――――――




マーサの夫になったランドルフの兄上という方が、僕とエリーザの隣にやってきた。

テレンス・マクラウド次期シュミット伯爵。

「君が、お姉さんの()()になっていたというエリーザ嬢?」

言葉を選んでくださるテレンス様。

「ええと……()()()()()()見せびらかしていたのをそう呼んでいいのなら、たぶんそうです」

エリーザも、それなりに言葉を選んでる……選び方が少しおかしいけど。

「今日は()()()をご用意しておりませんからご安心ください」

当たり前だ、婚礼にヘビを持ち込む新婦妹なんていないよ普通!

「あはは、久々に寝台へ()()入れられるんじゃないかとドキドキしてたんだ」

「それはランドルフお義兄さまの服へ()()をお入れになったからでは?」

()()の名前を伏せると探りあいのような会話になるなあ、と感心してしまった。

「なんだ知ってたのか。一方的な被害者のイメージを植えつけたかったのになあ」

伯爵邸(シェルビーホール)へ初めておいでになってすぐにお話しくださいました」

「なんだ、そんなに早くもうばらしてたのか」

残念がるテレンス様。

「そういえば、どこぞの()()()()()()をエリーザ嬢の()()()が撃退したとか聞いたけど?」

……やっぱり、話は拡がっちゃったな。

「あら。あたしとクロード兄さまのお母さまをとても悪く言ったんですもの。4()()()()()()()()()していただいても足りませんわ」

「うちの執事2人に任せればよかったんでしょうが、その執事が2人とも()()()()()()を殺しかねない勢いの準備をしていたのがわかりましたもので。本当は僕だけで追い払おうと思っていたんです」

言い訳する僕。

「ハマー伯爵エドモンドの血をひく子供が幸せであれるなら、養子の僕1人が泥をかぶればいいと思っていたんですが……」

苦笑い。

「……その4組が何だったのか、訊いてもいい?」

「耳をお貸しくだされば」

ごにょごにょ。周囲に聞こえる大きさで話せる内容じゃない。

テレンス様、大笑い。

「お土産つきとは!」

「だってイリーナお義姉さまのおうちの事を間違えてるのにえらそうだったんだもの!」

「そこはエリーザ嬢の正義だったわけか」

「あたし、ネルソン・ガリーニの孫ですもの!」

……いやエリーザ、そこは胸を張るところじゃない。





イリーナさん婚約者デビューでした。


その婚約者……事後承諾で見知った顔を集めるとか後が怖そうな事をw



エリーザちゃんは、着実に着実に、お仲間というか理解者を増やしています。


もう単なるいたずら娘ではないのねw

(そんなわけないやろ)

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