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アルヴィノーラの森で  作者: ありかわつぐみ
第6章 18年
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1. 人の話はききましょうか(まともなもののみ)。



前回から更に2年が経ちました……。







「シャロン……どうしましょう、あの子まだあちこちでご迷惑をかけているみたい……」

母さまが心底困り果てた様相でうちへ来るなり言った。


悩みのもとは……ミハイル。

父さまが侍従候補として11歳から皇宮へ押し込んで……父さまの影がチラついて周囲が何も言えないのをいい事に、傍若無人な振る舞いばかりしていると。

何年か前には隣国の行商人に、それはそれはとても無礼な言葉を吐いていたとか。

母さまがたしなめても、父さまが「まあまあ、いいじゃないかそれ位」とミハイルを助けてしまうから、図に乗ってる。

あの子はもう母さまの言う事なんかききやしない。

私の言う事なんか、もっときかない。

うちのヘンリーが言っても、ちょっと耳を貸す程度。それも「姉の夫」だからじゃなくて「ヴァルジの家令マシューズの孫」だから。

あんな馬鹿もう知らない。

「もう16なんだから放っておけば?」

「でも親の責任だって言われたら私……」

「母親を親とも思ってないのは世間に知られてるわ、だからもういいんじゃない?私だってあいつに姉扱いされてないし」


世間的に母さまは「夫と息子に虐げられてる人」で、私は「皇帝一族と縁づけできなくなったから家臣の孫に下げ渡された娘」って見られてる……ヘンリー・バーンズと結婚したのは私の意思なんだけど、父さまが下げ渡したように見えてしまうのは、ひとえに父さまの日頃の行いのせいよね。


異国民は排除せよ。

男たるものウンダラカンダラ。

嗣子たるものウンダラカンダラ。

女たるものウンダラカンダラ。

話半分どころか()2()()()()で聞き流しておかないとこっちがもたないって。

バーンズ家に来てあの鬱陶しい説教聞かなくて済むようになって……胃の調子がよくなってごはんが進んで、実は少し太ったのよね。

自称、幸せ太り……と言いたいところだけど、来た当初は大変だったわ。

主家の娘が嫁に来るってんでてんやわんや。

お嬢さま呼びされてダメ出ししたらどう呼べばいいかわからないとか言われるし。


普通にシャロンでいいんだけど!


「おかーしゃま!」

2歳の息子のヴィンセントがぱたぱたと走ってきた。

「おばーしゃま!ヴィンス、ごあいさちゅ!」

このおしゃべり息子は、言葉を覚えはじめたばかり。

「じじしゃま、あっち!ばばしゃま、あっち!おとーしゃま、まだ!おじしゃま、おばしゃま、みーんなおべんきょ!」

「はいはい」

母さまに毎回うるさく家族全員の居場所と行動を教えてしまう。

「シャロン……大家族っていいわね」

「そうね」

息子の言葉が異様に早かったのは、彼から見て祖父母・両親・2人の叔父・3人の叔母と一緒に住んでいるからだと思ってる。


そして、息子(ヴィンス)はまだ知らない。

自分には会った事のない嫌われ者の祖父と鼻つまみ者の叔父がいる事を。




――――――――――――――――――




何度言っても聞きやしない人っているよね。


僕が皇宮の文官になったのは5年前。21歳の時。

そしたらおじいちゃんの勤務先のヴァルジ宰相のお嬢さまが押しかけて来られて。

「お嫁さんにしてください!」。

母さんが一番びっくりしてたかな。

「シャロンお嬢さま、冗談はおよしになってくださいな!」

「冗談ではありません!」

当時17歳。ミハイル様……いや、ミハイルが従僕見習いとして皇宮に放り込まれた頃。

彼女が言うには「父にとって自分はもう価値がない」。

皇帝陛下の親戚になるには子供を皇帝一族と結婚させなくてはならないが、自分(シャロン)に釣り合う年代の独身男性皇族がいない。

そうなれば父親は()()()()()()()()()()へ自分を嫁に出すはずで……どうせ嫁に行くなら全く知らない人しかいない所より、知り合いの家がいい。


まさかそんな理由だったとは思いもよらなかったけども。

宰相は「好きにしろ」と言っただけだった。

前から思ってたけど……あの人(宰相)って娘の事どうでもいいんだな。

シャロンが婚姻証明書に親の許認可がいらなくなる18歳になるのを待って結婚したけど……婚礼にも来なかったもんな、あの人(宰相)

ミハイルも来なかった……こっちはよびたくなかったから、来てくれなくてありがたかったけど。




世間的には、僕は宰相から娘を下げ渡されその報奨として文官に採用された……らしい。

違うと否定しても「まあまあ、そんなに躍起にならなくても」と言われる。


本当に違うんだよ!

ちゃんと試験受けて通ったの!




――――――――――――――――――




シャロンが半ば押しかけて嫁いだマシューズの娘婿の家には、よく行かせていただくのですけれど。

最初のうちは「お嬢さま」「シャロン様」って呼ばれて「ダメですーー!」ってシャロンがキレてました。

今ではヘンリー君は「シャロン」、他の人は「シャロンさん」「シャロンちゃん」「シャロンお姉さま」で落ちついたみたい。

慕ってくれるヘンリー君の弟妹からなら「お姉さま」OKみたいなのよね、シャロン。

ミハイルからはもう姉とは呼ばれなくなって久しいし。


そして一番かわいいのはヴィンセントよ!

あの子はかしこいわ!

私をお祖母さま、ヘンリー君の両親をじじさま・ばばさま。

ヘンリー君の弟妹はおじさま・おばさま。

まだ2歳なのにきちんと呼び分けできてるのよ偉いわー、()()が全部()()()になってるけど。

こんなにかしこい孫だけど。

アドルフ様は一度も会った事ないのよ。ミハイルもね。

会わせたくもありませんわ、かしこい子が穢れます。

娘/姉の婚礼に難癖つけて列席しないような父/弟など、かわいい孫/甥に会えないまま野垂れ死にすりゃいいのよ!




――――――――――――――――――




シャロンが家を出てから、ユージェニアがよく出かけるようになった。

仕事を終えて帰宅しても、帰っていない事が多い。

マシューズいわく、いつもシャロンの所に行っているのだとか。

まあいい。

食卓が静かでよい。





ヴァルジ夫人、だんだん過激になってきておりますねw


ミハイルは母親と姉からはもう見放された模様www

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