4. レジスタンス……?
変にしめつけると、歪みが生じますよね……
皇宮勤務の者が皇都に巣くう異国の蛮習・反体制組織に与しているとの通報があったという。
調査書類によると、騎兵隊所属の隊員数名と皇宮内の従僕・侍女数名らしいが、その特定はできていない。
嘆かわしい。
偉大なる帝国民は皇帝陛下のもと挙国一致で帝国のため働かねばならぬというのに、皇宮勤務の者が率先して反体制組織に加わるとは国家転覆の危機ではないか。
異国民などと迎合する必要はないのだ。
反体制組織は、確実に殲滅しておけ。
決して討ち漏らす事のないように。
かつて乳幼児に逃げおおせられたお前達には、あとがないのだぞ。
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近日中に反体制組織殲滅作戦が行われる、という話が皇宮内のそこここでなされている。
私やゴードンとタリアの耳に入れまいとしているつもりなのだろうが、もれておるぞ。
わが国は皇族が首長となってはいるが、独裁はしていない。
だから反体制組織などというものがある事すら知らなかった……が。
果たしてその組織は本当に反体制組織なのだろうか?
ヴァルジとその腹心どもが勝手にそう言っているだけではないのか?
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反体制組織に皇宮職員がいる、ですって?
とんでもない話を小耳に挟んでしまいました。
騎兵隊員と従僕・侍女だとか。
……私は違いますよ、単に身内の1人が出身地を明かせないだけですから。
そんな捕まったら即座に殺されてしまいそうな組織になど属してはおりません。
出身地を明かせない私の祖母をやたらと敬愛しまくるよろず屋さんの存在は知っていますし、そこの店長さんは知り合いですけど、それだけですよ?
と思っていましたら。
「パールさん!」
よろず屋さん店長の弟で騎兵隊員のエリオット・グレイさんに声をかけられました……グレイさんは、ガーネット皇女殿下ご誕生の際に母アンバーを送迎してくださった方です。
「殿下からお願いされていた品物ですけれど、少し遅れそうらしいです。詳しくはこちらに」
謎の文言と共に、一通の封書が手渡されました。
殿下からお願いされていた?どの殿下から何を?何の事でしょう?
思いっきり不審な顔をしておりましたら、封書の上からポンポンと手を叩かれました。
……これは、会話の内容は気にせず封書の中身を読めという事……?
親愛なるパール様。
我々は一旦店を閉め、国内外で活動する事にいたしました。
ですので、今後しばらく店には姿をお見せにならぬようお願い申し上げます。エリオットにも同じく店には近寄るなと申し渡してあります。
何者かが当店の事を訊きにうかがうかもしれませんが、その際には「突然閉店してしまって困っている、迷惑している」とでもごまかしてください。
またいつか、お会いできる日まで。
よろず屋チャールズ・グレイ
追伸。
この手紙は、読み終わったらかまどの火起こしにお使いください。
思惑がなんとなく伝わる内容。
そして読後は手元に残すな、焼けという意図にとれる追伸。
これは……反体制組織とやらに疑われているから、その身を隠すのだと理解させていただきました。
お手紙も焼くのは惜しいですが……指示とは少し違いましたが、皇嗣妃殿下の丸薬づくりのための炉にくべさせていただきました。
こちらのほうが人目につきにくかったからでございます。
万が一焼け残り部分が発生しても、この炉でしたら目になさるのは秘密を秘匿できる妃殿下のみですから。
「大事なお手紙だったのではないの?たとえば懸想文とか」
妃殿下はそうおっしゃいましたが。
「いえ、閉店のお知らせです。読んだら焼けと書かれておりましたのでその通りにしたまででございます」
「閉店通知を焼けとは、珍しいわね」
普通の閉店通知とは少々趣が違ったようでしたので……。
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兄貴の友人だった人の家を使って兄貴達がやっていたのは、政権に楯つくような事じゃなかったはず。
単に政権……いや宰相らが迫害する異国民の血筋の人を守れるよう情報を集め、可能なら保護し、希望するなら国外へ逃がそうという集まりだったはずだ。
それがなぜ「反体制組織」などと呼ばれ殲滅を命じられなくてはならない?
このまま宰相らの思惑どおり進んでしまったら……兄貴は家族と引き裂かれ獄中で無念の死を遂げた兄貴の友人に顔向けできないじゃないか。
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いかん。
いかんぞこれは。
ヴァルジいわくの反体制組織掃討作戦など行わせてはいけない。
わしの調べによると、だが。
奴らが反体制組織などと呼んでいる組織は、国家転覆を謀るような大それたものではなく、虐げられている人を保護するものだったはず。
そこをあれこれされてしまったら……今は何とか隠せているが、一度奴らに襲撃されて隠れているマルコ・カルロ・ピエトロの3兄弟の存在が露見してしまいかねないではないか。
……ヴァルジらがいまだに血眼で探しているのは4人姉弟だからある程度の情報攪乱にはなってるとは思うが。
だが念には念を……という事で。
猟師のブライアント・農家のディアス・食堂のガストンに警戒するよう言っておいた。
「しばらくの間、マルコ・カルロ・ピエトロが一堂に会する場面を作るな。子供の頃はそうでもなかったが、今では3人揃っていると3兄弟にしか見えないからな。それからマルコは街に出すな」
父親似のマルコ、母親似のピエトロ、そして両方に半々で似ているカルロ。
20歳・18歳・16歳になった今、冗談ぬきで長男マルコは若い頃の父親そのものの容姿だったりするのだ……父親を捕縛した連中に見つかったら、かなりまずい事になりかねない。
あの夫婦の遺児のうちの3人を守っている責は全うしよう。
反体制組織……反体制だと思っているのはヴァルジ一派のみの模様ですね。




