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アルヴィノーラの森で  作者: ありかわつぐみ
第4章 13年
28/81

5. 親バカとバカ親



文字は同じなのに前後いれかわっただけで大違いになりますね、

親バカとバカ親。






年4回の入国制限。

私達は帝国人民じゃない以上、制限を食らうのは致し方ないのかとは思うけれども。

たまらなく口惜しくてならない。

特に宰相ヴァルジ!

()()()()()()()()()()()()のみならず、私のかわいいm……あ、いや皇帝陛下のかわいいかわいいお孫さまに無体をはたらくバカ息子を早くしめあげろ!

なんなら代わりに男児のしつけに厳しい一族の女性陣を全員派遣してやr……いや、したいのはやまやまだがそれをやると身の破滅だな、うん。



それはそうと。

皇嗣妃殿下からこっそり受け取った症例報告をテイラーさんに預けていたが、それの検証の途中経過と私的見解報告を受け取っているのを渡さなければ。


途中経過は、薬剤師の組合からのもの。

私的見解報告は、テイラーさんの息子君からのもの。

彼は、過去にあれを一度飲んだそうだ。

その感想と自身の体感からの見解をしたためたものを私に持ってきた。

「一応僕こないだのBクラスの試験に合格したんで、自分より上級の薬剤師に自分の見解の報告書を出せるんです。だから『T.R.L.』先生にこれを渡してください」

「いいのかい?」

「母と組合には同じものを出してます。せっかくですので『T.R.L.』先生にも」

そう言って押しつけられたわけだけれども。

さっと一読した妃殿下は。

「なかなかのものだわこの子。男の子なんでしょ?珍しい」

「ええ。16歳のお子さんです。さっき橋を渡りきるまで彼のお父さんとご一緒させていただいてたんですが……」



ああ見えてうちの息子、オレに似て体力バカだけどかみさんに似てすごく頭いいんですよ。

顔もアレでホントによかった。

頭の中身も顔面もオレ似だったら悲劇でしかないでしょ?

オレ似だったら一生モテる気しませんからね……ホント見た目がオレに似なくてよかった。



なんとも返事に困る息子自慢されながら橋を渡ってきたというわけ。

「それは……そうですねとも違うでしょとも言えないわね……」


外見が奥さん似なのは彼にとってよほど大切な事なのか複数回言ったから特に……。




――――――――――――――――――




今、私の手元には3通の手紙がある。

1通は、サン・トリスタン王国薬剤師組合からの検証の途中経過。

1通は、あの強壮剤を飲んだという16歳の少年の報告書。

1通は……品物の中に紛れ込ませてあったテイラー夫人の手紙。


経過報告書は、一般市民への販売を禁止にするか否かの検討に入っている事を伝えるもの。公式書類。

少年の報告書は、味やのどごし等のレポートと薬効によるものと思われる自身の体調変化と、それに伴う自分なりの対処。公的書類。

夫人の手紙は私信で……まずは息子が報告書を押しつけたお詫びから始まってた。




お忙しいところ、息子がご迷惑なものをお渡しするよう強要したようで申し訳ありません。


私の知らぬ間に例の強壮剤を一度飲んだと言った際にはつい叱り飛ばしてしまいましたが、なんでも同い年の友人達から贈られたという断りきれない状況だったそうで致し方なかったのでしょう。

そのお陰で、と申しましょうか……かけだしながらも薬剤師視点での服用の感想が手に入りました。

彼は父親に似て身体がたいへん頑丈にできておりますので、その彼が「飲んだら内臓が激辛のものを山ほど食べた時みたいに活発になって、薬効がきれた途端いきなり通常に戻るから、疲れがぶり返したような感じがした」と言いましたので、疲労回復の用途での服用には向いていないと思われます。

依存性の有無については、愛用者への調査結果次第ですが、私はあると考えています。

もし依存症患者が発生していた場合、先の症例報告にありました連用使用者へ処方された薬は依存症治療に有用なものとなりうるでしょうか?

そのようにお考えいただけ、可能なら1包おゆずりいただけないでしょうか。




あとでお義父さまに訊いてみましょう、飲まされていた頃の体感を。




――――――――――――――――――




「確かに、言われてみればそんな感じでしたね。初めのうちは。飲んだ瞬間から空腹でもないのにお腹が鳴るような感覚。なぜ食後にこれを飲むのだろう?食前に飲んだらついうっかり食べすぎてもすぐにこなれそうなのにと思っていました」

タリアに訊かれ、答えていた。

「そのうち体力が落ちたのか食事がまともに摂れなくなりました。なのに飲まされるのは日に3回なのは続き、最終的には飲むと眠くて仕方ないようになって寝てばかりいたのにあいつらは私を無理に起こしてまで決まった時間に飲ませ続けた」

思い出して怒りをあらわにしてしまった。

「パールがこっそり薬包(あれ)を持って来てくれるようになって、寝たふりする時間が増えて、意を決して起き上がってあいつらを出迎えてやったら……あいつら腰をぬかしておった、こんなはずじゃないとつぶやきながらな」

いつかきっと処断してやるから首を洗って待っておれ。

「思い出したくないものを訊き出しましt……」

「いや、かまいませんよ。こういうのは覚えているうちに知識のある人に伝えておかなくてはならぬ事のはず……それはそうと、あれを飲んだとかいう優秀な少年と一度あれの感想を語り合ってみたいものです」

「私もその場に立ち会ってみたいですわ……というか彼と彼をベタ褒めするご両親も一緒に」

「どれ位お母上に似ているのか、見てみたいものですね」

「あらお義父さまそこですか?」

「そなたもそこが気になっているのではありませんか?」

「あらわかります?」




――――――――――――――――――




父さんと2人で皇宮から退出するため空いた荷箱をまとめていたら……出たよ、評判最悪のクソガキが。

「おい、そこの商人ども」

……オイコラてめえ今何つった?

商人、だけならいい。事実だからな。

だけど……商人()()だと?

俺達が悪徳商人なら言われても仕方ないんだろうけどな……まっとうな行商人つかまえて言うんじゃねえよこのクソガキが。

「何か、ご用ですか?ごらんのとおり荷はもうありませんよ?」

……父さんは、さすが大人と言うべきか。50代の余裕か。

「酒は持って来ていないのか?ブラなんとかいう酒だ」

「ああ、あれは今回もお持ちできませんでしたね。おそらく次回も無理でしょう」

陛下が持ってこなくていいとおっしゃったからな、持ってこないよ。

「父上がどうしても飲みたいと探し回っておいでなのだ。1本位持ってこい」

50代と30代の大人に向かって命令しやがったぞこいつ。

「いえ、無理ですね。持ってきたいのはやまやまですが」

陛下のご命令に逆らう気などないからなぁ。

「品がないのなら、ある所から高くでも買って持ってこい。いくらででも買ってやる」

そういう問題じゃない……てかこいつ、闇ルート売買をそそのかしてないか?

「そのお考えは、ご自身のものですか?」

父さん、静かに訊き返してる……さすがだな。

「父上がいつもおっしゃってる、どこからでもいいから高くても買ってこいいくらででも買ってやると」

敬語の使いどころ間違ってるぞ。

「それはこちらのお国で許されている行為かも知れませんが、私達の国では違法です。違法行為で仕入れを行うと処罰され、商業権を剥奪されます。今、あなたは私達に自国で法を犯してこいとおっしゃったのですが……お答えしますね、いたしかねます。できません。だから果実蒸留酒(ブランデー)は持ってこられません。持ってこられるようになるまで持ってきません。何度お願いされてもできないものはできません」

……父さん、怒ったなこりゃ。

でも宰相の息子だから完全にキレるわけにもいかず……。


何でも自分達の思いどおりになると思うなよ。

っつかこのクソガキ、親ともども滅びないかな?




テイラー夫妻の親バカっぷりは笑える範疇ですが、

ヴァルジのバカ親っぷりは……腹立ちますね。

親ともども締め上げたいですね。




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