2. 守護(される)天使
もう1人の天使ちゃんです。
……が、なんか不穏ですよ……?
ああ……また、ですね。
また今日も殿下の泣き声がきこえます……。
1歳ならともかく11歳にもなってりゃわかるってもんでしょうよ……。
4歳の女の子にいじわるして泣かせちゃいけないって事位は!
ミハイル・ヴァルジ11歳。
ガーネット皇孫皇女殿下にいじわるばっかり。
親の顔が見たいわっ……っていつでも見れたわ、宰相だもの。
お誕生から4年。
宰相から薦められる……というか押しつけられる乳母を全員断固として退けられ、皇嗣妃殿下はご自身で育児をなさっておられます。
私は皇嗣妃殿下専属からガーネット皇女殿下専属になりました。
妃殿下がご自身で育児をなさる理由はただ1つ。
「宰相は信用ならない」。
陛下に死亡クラスの副作用めあてで薬を盛り、お気に入りの隣国の行商人親子の入国を制限させた人ですから。
……私もあんなのは信用しておりません。
お嬢さんはちゃんとお育ちなのに、なぜ息子は11歳の分際であれほどクズでクソなのか。
息子に甘い、にもほどがあるってものです。
甘やかしている、というより……手のつけられないわがまま暴君な俺様クソガキを製造してる。
そんな風に育ててしまう輩を信用せよとは片腹痛うございます。
息子の教育を一からやり直してきたらどうだと後ろから頭に全力で蹴りをいれたい位ムカついております。
どなたかあのバカ親を蹴り倒していい許可を与えてくださいませんか?
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長年シルベスター陛下の侍従をつとめておりますが……陛下があんなにデレっデレなさるお方だったとは。
ゴードン殿下ご降誕の際も、エリノア殿下ご降誕の際も、その後も、目尻をあそこまで下げてニカニカ……いえ、にこにこなさる事はございませんでした。
ですのに皇孫皇女殿下だとあそこまでいわゆる「祖父馬鹿」になられるんですね……。
御前会議の際にいつになく笑顔でおられたので、何かございましたか?とお訊ねしましたら
「ガーネットが寝返りを打ったんだよ!」
ですよ!
赤ちゃんの寝返りなんて成長過程ですよ、とは申し上げられないレベルで大喜びなさって……。
ですから。
昨今行状のよろしくないヴァルジの息子など蛇蝎のごとく嫌っておいでです。
わたくしも、あのクソ生意気なクソガキは大嫌いでございます。
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何なのだあの礼儀のなっとらん小坊主は!
わし、一応皇孫皇女殿下の曾祖父だぞ?他人だけど。
なのになぜ10かそこらのクソ小坊主に「おい、そこのじじい」などと呼ばれねばならんのだ!
確かにわしはじじいだ。老人だ。
じじいと呼ばれても致し方ない年齢に達しておる。
だがな。
初対面のクソ生意気小坊主から面と向かってじじい呼ばわりされる筋合いはないぞ!しかも皇宮の中で!
……なに、毎日のようにガーネット皇女にいじわるして泣かせておる、だと?
シルベスター!
あのガキを国境の橋の真ん中から3度ほど蹴り落として来てもいいか?
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ヴァルジ親子って、ほんとあの親にしてこの子ね。
ちょっと私が目を離したすきにいたずらしてきてガーネットを泣かせる。
親に説明を求めたら「男の子ってものは、好きな子にいたずらしたくなる生き物なんですよアハハハ」だなんて……そんな言い訳ありますかっての!
兄さんが1回それやって、母さんと伯母さんだか母さんの従姉だかのうちの誰かにめっちゃくちゃ怒られて。
二度としませんごめんなさいって、母さんの身内全員の前で謝ったんだから。
あの親は叱責すらしないのかしら?
将来あれがどうなってもいいのかしらね?
いいんでしょうね。
私の一族の子じゃないからどうでもいいけど。
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アドルフ様は何も言いませんけれど……ミハイルが不始末ばかりしでかしているんじゃないかとヒヤヒヤいたしております。
11歳でなぜ従僕として出仕させる必要があったのか、謎でございます。
何よりも……悪さを私が叱っても、アドルフ様が「まあまあ、いいじゃないか」と許すものですから、私のいう事など全くきかなくなりました。
私でしたら、皇帝陛下や皇嗣殿下ご一家・継嗣殿下の御前に差し出せる
までみっちり躾てから出仕させますものを……。
ああ、シャロンでしたら侍女としていつでも出仕出来ましたのに。
今からでも遅くないでしょう、ミハイルとシャロンをいれかえたい……。
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ガーネット殿下には、ミハイルに慣れていただかないと。
幼なじみから夫婦になる、なんてまさに理想的ではないか。
シルベスター陛下とヒルダ様がそうだったわけなのだから、ガーネット殿下とミハイルもそうあれるよう今のうちからお側仕えに出しておかないと。
少々の行儀の悪さは皇宮で働くうちに何とかなるだろう。
皇女殿下が毎日泣いておられる?
イヤよイヤよも好きのうちと言うではないか。
そのうち慣れてこられるだろう。
いきなり過激派侍女パールさんの侍女らしからぬ発言でスタートいたしました。
果たして宰相が後ろから頭を蹴り飛ばされる日は来るのでしょうか。




