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アルヴィノーラの森で  作者: ありかわつぐみ
第1章 発端の年
1/80

1. 記憶のない少女

連載はじめました。


なるべく誤字脱字のないようにしたいと思いますので

よろしくお願いいたします。




亭主のアンソニーが仕事を終えて帰ってきた。

まあ、それはいつもの事なんだけども。

いつもと違うのは……今日は6〜7歳位の女の子をおぶってた事。

「どうしたんだいその子。アンタの事だから、さらって来たんじゃないって事だけはわかってるけどさ」

領主さま直々に頼まれて就いてる森番の頭領だからね、ウチの亭主。

「国境の橋が壊れてるって連絡があったから行ったんだ。そしたら壊れた橋のこっち側でこの子が座り込んでふるえてた」

「ケガはないのかい?」

「目立ったヤツはないけど、ウチに連れてきゃおまえが看てくれると思ってな」

ああ、私は国家公認薬剤師だからね……お医者じゃないけどお医者並みの診察はできる資格は持ってる。

「……にしてもアンタ、よく騒がれずに連れて来れたね」

「とーちゃん顔コワいもんな!」

息子のモーガンがちゃかす……おまえはさっさと夕飯終わらせな!片づきゃしないだろ!

「なーなー、ねえちゃんさー!ウチのかーちゃんのスープうまいから食えよ!何ならオレのおかわりの分ねえちゃんにやるよ」

モーガンが『ねえちゃん』と言うたび、女の子が顔を上げた。

「ねえちゃんもさー、はらいっぱい食ったら寝れるぞ」

4歳児のくせに、口だけは達者なモーガン……だからおまえはさっさと夕飯終らせな!

「まあモーガンの言う事も確かだな。この子の分も用意してくれ」

「もちろんさ」



――――――――――――――――――



女の子は相当空腹だったらしく、あっという間にパンと具だくさんスープをたいらげた。

そしてモーガンに請われるがまま遊び相手をしてくれている。

ただ……何も話さない。一言も、だ。

ケガらしいケガは全くなかったが、何も話してくれない……自分の名前すら。

「もしかしたら、何も覚えていないのかもしれないねえ」

カミさんのマリリンが言う。

「そんな事ってあるのか?」

「ああ、あるねえ。名前も素性も忘れちまう事もないとは言えないね」

あんな小さい子に何があったんだ……モーガンと2つ3つしか変わらんだろ。

「親は娘がいなくなってる事に気づいてないのかねぇ」

カミさん、しみじみという。

「モーガンや近所の子がいなくなったら、あたしゃ必死で探すけどねえ」

「探す事ができないだけかもしれないな」

「どういうこったい?」

「親はどこかで動けなくなって、あの子だけがココまでたどり着いたとか」

「じゃあ……」

「もちろん、全力であの子の親だかを探すよ。あとご領主さまにも届けなきゃな」

「届ける、って……ウチで預かるから連れて来たんじゃないのかい?」

「ウチで預かるから親が探しに来たらしらせて欲しいって届け出るんだよ」

その時扉をノックする音がした。

「お(かしら)ーー!マリリンさんいるー?」

若い森番の1人だ……が。

「お、をつけるな!単に『かしら』と呼べと……」

オレの風貌で「お(かしら)」と呼ばれると……まあ、なんだ、その……まっとうな職業に見えないからな。

「そんな事よりお(かしら)、お(かしら)んちに女の子の服なんかねえだろっつって、ばあちゃんがコレ持ってけって」

服!そうか……あの子の着替えの事をすっかり忘れてた。

「いいのか?」

「姉貴が子供の頃のヤツだからかなり古いけど、って。姉貴の赤ん坊にはまだデカいし」

「そうか、ありがt……って何だおまえら!」

部下達がこぞって、女の子用の子供服を持って来ていた。

「だって(かしら)んちにはモーガン坊の服しかねえでしょうが」

「モーガン坊のじゃ小さいでしょう」

「妹のだけど持ってっていいよって母ちゃんが」

妹が着るものに困るだろうがよ……


部下達には感謝し、ありがたく受け取る事にした……現役の「妹の服」以外(持って帰らせた)。



――――――――――――――――――



何だか急にお隣にある友人のマリリンの家の前がにぎやかになったので、窓を開けてみたら……旦那さんのアンソニーさんの部下さん達がいっぱい集まってた。

「何?」

息子のクロードが訊いてくる。

「モーガンのおうち、何かあったのかな?ちょっと行ってくるわね」

「母さん僕も行く!」

ああそうだわ。いくらお隣に行くのでも、子供を1人にしちゃいけないんだったわ。

まだ親1人子1人の生活には慣れないわね。


クロードと一緒に訪ねてみたら……部下さん達は皆さん女の子の服を持っていて、マリリンはアンソニーさんと一緒にその服を受け取っていて。

奥ではモーガン君と一緒に女の子がいて……って、女の子ぉ!?

マリリンあなたいつの間にそんな大きな女の子産んだの!

……ってそんなわけないわね。

「あの子どうしたの?」

「あら、アリアドネ。いいとこに来たわ」

「あなた産んだわけじゃないわよね?」

「あたりまえだろ!保護したんだよ、アンソニー達が。親が探しに来るまで預かるのさ」

「あらそう。で、この騒ぎは?」

「ウチに女の子の服なんかないだろうからって、みんな着替え用に持ってきてくれたんだよ」

「女の子の服は……そういえばウチにもないわね。で、いいとこに来たって何?」

そこでアンソニーさんが口を開く。

「あの子、全く話さないんで名前すらわからないんだ。何とかして聞き出せないかなと……」

「聞き出せ……って、私は専門家じゃないわよ」

「わかってる。でもオレ達ではわからん事をアリアドネさんはよく知ってるから、何かアイデアないかなと思って」

アンソニーさん、相当困ってる。

「私らで名前つけて呼んでもいいんだろうけどさ、なんか気がひけるわけ。本当の親に対して悪いような気がして」

なるほどね……

「じゃあ……そうね、思いつく限りの女の子の名前を呼びかけてみて、一番反応のよかった名前で呼ぶのはどう?」

「それいいかもしれないね」



――――――――――――――――――



名前捜索作戦開始。


「アリス」

「ヴィクトリア」

「スーザン」

「アニー」

「エラ」

「メリッサ」

「イングリッド」

「リンゼイ」

「エルザ」

「ミカエラ」

「ユージェニー」

「アナ」

「フィオナ」

「クレオパトラ」

「リリー」

「キャロライン」

「ミランダ」

「ジョージア」

「ローラ」

「エリザベス」

「フィリス」

「アンナ」

「カサンドラ」

「バーバラ」

「マーガレット」

「イザベラ」

「レオノーラ」

「ヒルダ」

「フィリパ」

「エマ」

「アルディス」

「マリー」

「ヴァレリー」

「パメラ」

「ビアンカ」

「ウィルへルミア」

「アンバー」

「リーサ」

「エステル」

「セオドーラ」

「ローズ」

「オリヴィア」

「サマンサ」

「タバサ」

「ジョセフィーヌ」

「クレア」

「ルイーズ」

「ハリエット」

「ドロシー」

「ベアトリクス」

「リディア」

「グラディス」

「リノア」

「キャサリン」

「メラニー」

「セレスティア」

「グレイス」

「フレデリカ」

「ナンシー」

「カレン」

「ヒラリー」

「クリスティーナ」

「シェリー」

「ジュリエット」

「ソフィア」

「パトリシア」

「ナタリー」

「アレクサンドラ」

「ジョイス」

「ヴィオレッタ」

「アメリア」

「サラ」

「エスメラルダ」

「ルーシー」

「ジェニファー」

「チェルシー」

「フラニー」

「オリゲルド」

「セリーナ」

「クララ」

「サフィニア」

「ユリアナ」

「ブリジット」

「アン」

「オリンピア」

「カーミラ」

「シャーロット」

「ジュディ」

「クリスティ」

「ジーナ」

「ダイアナ」

「ミルドレット」

「エミリー」

「レイチェル」

「アンジェリーナ」

「デイジー」

「カーラ」

「ヴィクトリア……は言ったね」

「言ったわね」

「クリスティーナ……も言ったね」

「言ったわ」

「何人位言った?」

「数える気が失せたわよ」

「なかなか反応ないね」

何だかもう疲れてきた。

その上もうほとんど思いつかない。在庫切れ。

「ヘレン」

マリリンの呼びかけに、女の子が少し顔をあげた!

今まで呼びかけた名前にはなかった反応!

「あなた、お名前ヘレンっていうの?」

……それでもちょっと反応が薄い気がするので

「じゃあ……エレナ?」

読みかたを変えてみたら……一呼吸おいて、パッと顔をあげた!

「エレナ?あなたエレナちゃんね?」

あげた顔を伏せない……って事は、エレナちゃんでほぼ間違いないわ、たぶん。

「マリリン、この子の名前……」

「エレナ、だね」



――――――――――――――――――



女の子改めエレナは、とりあえず保護児としてウチに住むようになった。

保護児だから、「アンソニー・テイラーの家にいるエレナ」という何とも残念な名前で住民登録されている。


早くエレナの親を見つけなきゃならんよな。





アンソニー「よくあれだけ女の子の名前が出てきましたねえ」

作者「あ、わかりますー?あれね、調べまくって3日かかってますねん」

ア「それをアリアドネさんとマリリンにしゃべらせたんですか」

作「全部アナタにしゃべってもろてもよかったんやで?」

ア「……ご遠慮申し上げてよろしいですか」


(注:「クリスティ」と「クリスティーナ」が入っていますが、別系統での検索結果を使用したので……似てる名に気づかなかったようになっています。気づかなかったのは他ならぬ作者たる私ですが。マリリン、アリアドネ、カンニンやでー)

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