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お風呂があれば生きていける  作者:


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19/19

ファッション

 12時の鐘が鳴り、ミラの行きつけの食堂に連れて行ってもらうことになった。

 裏通りの小さな店で、お客さんで賑わっている。テーブル席に座り、500ゼニーを先払いして日替わりのランチを注文した。


 軍手を外す私の正面で、ミラが両手を擦り合わせている。彼女は手袋をしていなかったので手が冷えてしまったみたいだ。

「これで手を温めて。お湯だよ」

 ミラの前に温泉魔法饅頭を浮かべる。

「わ、ありがとう、温まる〜」

 日本と違っておしぼりは出てこないので自分にも同じものを出して手を洗い、ミラの分と一緒に消した。


 手洗い用としても温泉魔法饅頭はよく使う。こっちの人達に日本人のような手洗い習慣がなさそうなことが気にはなるが、日本レベルの清潔さを求めても無理だ。

 それに体に病原体が入っても、宿に帰ってお風呂に入れば大丈夫だろう、たぶん。


 日替わりランチは、鶏肉とにんじん、玉葱のクリーム煮とパンだった。

 

「美味しかった。これ、この食堂を教えてくれたお礼。良かったら使って」

 食堂を出る前に、鞄経由でスキルのアイテムボックスから新品の軍手を出してミラに渡した。ちなみに鞄はニドゥ町の冒険者御用達店で買った革製の物だ。


「え。あ、ありがとう…。今度、森で使うね」

「…うん」

 なるほど。

 10代女子は町中で軍手をするくらいなら手が冷える方を選ぶらしい。

 どうやら私のファッションは残念な感じだったようだ。



 午後は手が寒いのを我慢しながら買い物をした。現地のガイドさん付きなので店を選ぶのに迷わなくていいから助かる。


 買ったのは、パン、チーズ、バター、ドライフルーツ、ナッツ、蜂蜜、ソーセージ、ベーコン、ハム。これらはこちら産の物でも十分美味しい。

 パンは、カンパーニュみたいな大きくて丸いのをスライスして食べるのが主流だ。生地はやや茶色くて固め。今日食堂で出てきたのもこのタイプ。フォカッチャみたいな薄いのもある。領都に行けばもっと種類があるのかもしれない。


 ゼニーと円の両替レートを考えると、温泉宿でしか手に入らない物以外はできるだけゼニーで買った方がいい。


 買った物はどんどん鞄に入れながらアイテムボックスに収納する。 

 道具屋で売られているアイテムバッグは高額だが、容量が小さい物なら持っている人はそこそこいるので驚かれることはない。

 

 私の買い物の後は、ミラが服を買うのに付き合うことになった。


「モモも買った方がいいって。ほら、これなんかどう? 似合うと思うよ。買いなよ」

 圧が強い。


 今日私が着ているのは、温泉宿最寄りのイアン村で手に入れたお下がりではなく、ニドゥ町の古着屋で買ったワンピースだ。

 外套を着ている時は気にならないが、確かに装飾が全く無くて縫製も丁寧とは言い難いし、売られている服やミラや店員さんが着ている服に比べると、なんというか部屋着っぽい。

 町の外ではいつも作務衣だし、喫茶室の制服も加わったから特に新しい服を買う予定は無かったんだけど、ミラの見立てでワンピースとスカートを一着ずつ買った。


 ファッションについては人の意見を素直に聞くと決めたのだ。


「この店は下着もお薦めよ」

 いや、下着はこっち産を着ける気はない。


 革製品の店で革の手袋は買った。

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