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【プロローグ】少女マーシャは死ぬ

マーシャは、幼くして両親を亡くし無頼の身となり、施設で育った12の内気な少女である。


マーシャは友を知らない。

学校には通わず、家庭教師から勉学を習っており、友人は無く、更に兄弟・姉妹も居らず、その孤独な身の上が彼女の内向的な性情に拍車をかけた。


ここはロシア極東、ウラジオストク。

産業の盛んな古くから栄える街である。

街の人々は、ある話題で持ち切りであった。


青年A「聞いたか?例のあれ、また1人亡くなったらしいな。」

青年B「ああ。まだ若い女の子なんだってな。可哀想に。」


婦人A「怖いわね。若い子どもばかり犠牲になってるんですって。」

婦人B「いやだわ。子どもから目を離せなくなってしまうもの。」


ウラジオストク連続怪死事件。

そう呼ばれるようになってからしばらく経つこの不可解な事件は、未だに市民の恐怖の対象となっていた。


当時の「ザ・モスクワ・タイムズ」から、この事件に関する記事を抜粋する。


2015年2月3日

「12歳少女、謎の死」

2日未明、ウラジオストク近郊にて、○○さん(12)が、自宅のベッドで、胸部がこじ開けられたように変形して死亡しているのが両親によって発見された。(略)


2015年2月8日

「ウラジオストクにてまたも少年怪死」

7日午後8時頃、ウラジオストク市内在住の○○さん(12)が、自宅ソファの上で、首が180°ねじ曲げられた状態で死亡しているのが、帰宅した父親によって発見された。(略)


これ以降、何ヶ月にも渡って何人もの若い命が怪死という形によって奪われてきている。

マーシャはそこまで世間のことを気にかける性分ではないが、ここまで多くの犠牲者が出ると、嫌でも耳に入ってくる。そして、被害者の多くと自分が同年代であることに気付いていないと、そして、それに関して全く恐怖を感じないと言えば、嘘になる。


しかしマーシャは、死を知らない。

正確には、自分の死が齎すものを知らない。

家族も友も、愛も憎悪も知らないマーシャは、死への恐怖が、人と少し違う。ただ、痛いのは嫌だなあ、と言った程度のものでしかない。

簡潔に言えば、マーシャはこの事件をあまり気にかけていなかった。


マーシャは、文具を買った帰りであった。

自室に戻り、荷物を適当な場所に置き、シャワーを浴び、時計を見ると、21時前をさしていた。

もう寝てもよい頃だ。

マーシャは寝床につく。


そろそろ夏至が近い。

日没後ほんの少ししか経っていないウラジオストクの空は、まだ僅かに赤みがかかっていた。


マーシャは、特に何かを思いながらでもなく、ごく普通に眠りについた。


そして微かな赤みさえ消え、ウラジオストクは闇の都市となった。




マーシャは翌日、下半身が焼失した状態で死亡しているのが発見された。

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