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チーム ブラック☆スリー

 現実へ戻り、ハナに電話を。


『はい』


 ワンコールで直ぐに繋がる。


「戻りました」

『それは知ってる。

 大里はどう?』

「言った通りの能力の様です」

『そう』

「まだひよっ子ですが、阿佐川が上手くフォローしてます」

『くれぐれも気をつけろ。

 そして、大事にしろ』

「わかってます」


 それだけの価値がある能力なのだから。

 だが、それ故、交渉が出来るのだ。


「大里の為にショニンから道具を買います。

 支払い、持ってくれますよね?」

『……問題無いだろう』

「ありがとうございます。では、作戦を続行します」

『ああ』


 ハナとの通話を切り、続けてアンキラへ電話。


『お電話ありがとうございます。

 カフェ・アンキラでございます』

「あ、執事長?

 黒武士です」

『少々お待ちを』


 通話が保留になり、オルゴールのメロディが流れる。


『お待たせ。

 何の用だい?』

「以前お邪魔した男の友人。

 彼が欲しがっていた道具一式を俺に送って下さい。

 なるべく早く」

『君に?』

「ええ。支払いは後日、姉が」

『……君ら姉弟は揃いも揃って人使いが荒い』

「忙しいんで、無駄話はまた。

 納品、お待ちしてます」


 相手の反応を待たずに電話を切る。


 ────────────────


 御楯頼知>二回目行くぞ

 阿佐川拓馬>おう

 大里優耶>おう!


 ────────────────


 さっき作ったばかりの三人のグループトークで二人へ呼びかけ再び異世界へ。


 ◆


 二度目からは計画通りに御識札の封印を解き二人を呼び寄せる。

 そして再び御識札を封印し、Kの案内に従い門を目指す。

 そのうちにショニンから荷物が届き、一式Kに引き渡す。流石はランクSの商売人。送られてきた服も鎧も軽くて丈夫。

 滑らかな曲線を持つそれは、鎧と言うよりは近未来的な強化スーツの様にも見える。

 Aが羨ましそうな顔を覗かせるほどの品。黒でまとめられたそれを身に着け格好は一端の調査員となったK。そう言えば値段聞いてなかったな。


「ていうかさ、何で二人共黒なんだよ」

「格好いいからな!」


 俺の苦言にドヤ顔のA。黒い騎士。


「パクんなよ!」

「いやいや、L、その理屈はおかしいよ?」


 手に入れたばかりの新装備を身にまといご満悦のK。黒い兵士。


「むしろ、チームカラーが黒だな」

「おお、良いなそれ。チーム……ブラック☆スリーだ」

「アホらし。とっとと行くぞ」


 変に盛り上がる二人に冷水を浴びせ先を促す。

 黒で一括りにされてたまるか。




 そうやって何度も異世界を走り抜けて、狩れそうな敵を見繕いKに狩らせる。その指導をするのはA。

 一日が過ぎ、そして、作戦が始まってから丸二日が経とうとしていた。



「やった! ランクがDに上がったよ!」


 溜池山王のビル内のフリースペースでパンを齧りながら大里が嬉しそうな声を上げる。


「おお、おめでと。

 Cもきっと直ぐだぜ」


 そう言ったAに嬉しそうな顔を返すK。


「そして、俺はランクAになる」


 俺の方を見ながら宣言するA。

 ランク上がっても特別恩恵なんて無いんだけどな。


 まあ、何かがモチベーションになるならそれで良い。

 未だに見えない砂漠世界。

 だが、二人の気持ちはまだ折れてないな。……まだ。


「今日は次で最後にしよう」


 二人に向け、そう提案する。


「そうだな」

「途中で帰るの?」


 あっさりと受け入れたAと、疑問を口にするK。


「ああ、帰る。

 続きはまた週末で」

「了解。それまでに片付いて欲しいような、そうでないような」

「え、明日は来ないの?」

「明日は学校だろうが」

「学校より、こっちの方が大事じゃないのか!?」


 そう大里が声を荒げる。


「K、気持ちは分かる。

 でも、いや、だからこそ俺達はいつもの日常生活を送らないといけないんだ。

 そうして、あの世界とある程度の距離を置く。

 それが出来ないと、その行き着く先は『猿』と同じだ。

 俺はそう思う」


 Aが落ち着いた声で、俺が言いたかったことを言ってくれた。


「お前、顔に似合わず良いこと言うよな。

 因みに俺は、学校をサボって異世界に居た事は一度も無い」


 自慢になるかわからないが、母との約束は破ってないのだ。

 まあ、危ういことは何度かあったが。


「それが、生き残るコツ?」


 その問いに俺とAは大きく頷く。



 ◆


 そして宣言通り、当たりの無かった異世界で鬱憤を晴らすように少し暴れ引き上げる。


 中間考査前の一週間。

 部活は活動停止。部室への出入りは生徒個人のIDカードが必要なので使えばすぐバレる。

 なので大人しく試験勉強を。

 週末に追い込みが出来なそうなのが痛い。

 だから、その分少しでも。


 村上は相変わらず登校しなかった。


 ◆


 金曜夜に三人集まり、土曜、日曜、そして今、月曜、体育の日の朝。いや、もう昼か。

 言われた様な砂漠の世界には行き当たらず。

 流石に口数が少なくなり、士気も落ちている。


「焼けた」


 俺の差し出す串刺し肉を無言で受け取る二人。

 始めこそ美味い美味いと喜んで食っていたKなのに。


「色気が……無い」


 Aが、ポツリと呟く。

 何の話だ?


「例えばさ、今いるのが男三人じゃなくて、一人女の子だったら、もっと楽しいはずだろ!?」


 そっすか。

 それを聞かされても溜息しか出ない。


「ピクニックに来てる訳じゃ無いんだよ」

「知ってるよ! わかってるよ! 自分でも脱力するような話をしてるのは。

 だって、お前が同じこと言ったら絶対殴ってるもん!」


 そう俺に向かい全力で断言するA。


「えっと、それは殴って来いとそう言う事か?」


 喧嘩売ってんだよな?

 分類上は女の子らしい牛の化物をけしかけてやろうか?


「じゃ、隊長。

 次の隊員は是非女の子で」


 ニヤリとするK。

 何で話に乗るんだよ。


「そんな知り合い居ない」

「夏実は?」

「アイツは関係ない」


 軽くその名を口にした大里を睨みつける。


「誰? 誰!?」


 食いつくA。


「それより、連れられて来たときにアナスタシヤってつぶやいてたよね?

 あれ、どういう事?」


 Kに対してとっておきのカウンター。


「え、あれは……」

「ひょっとして転校生のアナスタシヤ?」

「え、誰? 誰よ!?」


 アイツ、ロシアかどっかの工作員じゃなかったのか?


「……スマホに連絡あったんだ。

 向こうから。

 まさかハニトラだったとは……」


 苦虫を噛み潰した様な顔をするK。


「ほら、僕、金髪好きじゃん?

 大好きじゃん?」


 知らねーよ。

 何だよ。そのピンポイントなフェチは。


「金髪の転校生……俺のクラスにも来たぞ。そう言えば」


 そうAが思い出したように言う。


「何か、2日ぐらいで居なくなったんだけど」

「へー、こっちもだよ。珍しく無いのかな?」


 いやいや。

 どう考えても怪しいだろ?


「……そろそろ行こう」


 これ以上ダベっていても得るものは無さそうだ。

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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