表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/308

利用し利用され①

「はい、チーズ。

 あ、ちょっと待って」


 スマホを向けられ、キメ顔をしたまま放置されると言う高度な嫌がらせ。

 俺、なんか悪い事しただろうか。


「ごめんごめん。

 もう一回!

 はい、チーズ!」


 マキマキちゃんのスマホからシャッター音がする。

 画面を見て、小さく鼻で笑うマキマキちゃん。

 ……失礼だからな?


「オッケー。

 ちょっとまってねー」


 彼女が俺の隣に座り、スマホをテーブルの上に置く。

 スマホの画面の中で砂時計が回転し、プログラムの処理待ちである事を伝える。


「出た!」


 その画面に、『上野うえの侑斗ゆうと 似てるかも 62%』と言う文字が。


「あー!

 あー?」


 納得の後に、疑問形の声を上げるマキマキちゃん。


「誰々ー?」

「上野侑斗だって」


 わらわらと、寄って来るメイド達。

 ミキミキちゃんとアリスちゃん。


「ほー?」


 二人が目を細め俺を見る。


「あー!」

「似てる! 微っ妙に!」

「何て言うの? 上野侑斗のガラを悪くして陰キャにした感じ?」

「そうそう!」


 褒められてはいないのだろうな。

 マキマキちゃんが試したのは、写真から似ている有名人を教えてくれると言うアプリ。

 それによると俺は上野侑斗と言う、アラフォー俳優のそっくりさんらしい。

 昔はイケメン俳優の括りに入っていたらしいが。


 キメ顔をメイド三人に向ける。


「……言うほど似てないかな?」

「まあ、親戚ぐらい?」

「まず髪を切りましょうか。ご主人様」


 この言われようである。


「何か盛り上がってるね」


 執事服に身を包んだ男が現れる。

 カフェ・アンキラ、執事長金子ことショニンである。

 なんか、ここの共同オーナーになったらしい。


「これ、どう思います?」


 ミキミキちゃんが診断結果をショニンに見せる。

 画面には上野氏と俺の顔。


「あー! 確かに」

「似てます?」

「微妙じゃないですか?」

「これ、写真が悪いよ。

 最近のじゃない?」


 そう言いながらショニンは自分のスマホをいじる。

 そして、一枚の画像を表示する。

 そこにはマキマキちゃんのスマホより随分と若い上野氏の画像。


「ほら。似てるじゃん?」

「「「おー」」」


 三人同時に感嘆の声が上がる。


「こう見るとまるで親子だね。隠し子?」


 そう言って執事がニヤリとする。

 そんな事ある訳無いのだけれど。

 だが、その若い俳優の顔に見覚えがある気がした。


「これって、ボクサーブラック?」

「そう!」


 特撮ヒーロー、グラップレンジャー。

 俺が子供の頃、日曜朝にやっていた番組。

 レスラーレッド、カンフーブルー、ボクサーブラック、スモウイエロー、ムエタイピンク。

 そして、ヤワラゴールド、カラテシルバー。

 肉体を武器に地球を守る正義の格闘家達の物語。


 守れ! 地球!

 守れ! ルール!

 心はいつも金メダル!


 懐かしい。

 そうか、この人がこの役をやっていたのか。


「多分この後、顔いじったんじゃ無いかな」


 そう言いながら、ショニンは画像を何枚か並べる。

 その中に、ボクサーブラックも。


「あ、知ってる。これ」


 マキマキちゃんがボクサーブラックを指差す。


「へー。女の子が珍しいね」

「アンコが好きだったの。初恋の人だって!」


 特撮のヒーローが初恋の人。

 実に微笑ましい。


「それでボクシング始めたの?」

「え? どうだったかな? それは違うかも」

「さ、そろそろ開店の準備を始めてくれるかな。

 君はこっちへ」

「はい」


 ◆


 ショニンに連れられ、物置を改装したと言う怪しい小部屋へ。

 ソファセットと、小さなテーブル。


「ここで、メイドさんに手を出す訳ですか?」

「そうしたいのは山々なんだけど、誰も来たがらないんだよね」


 冗談のつもりだったのだが、ぬらりと躱される。


「で、何が欲しいの?」

「この前の籠手が片方壊れたので、出来れば同等の物を」

「高いよ?」

「……幾らですか?」


 ショニンが指を二本立てる。

 二……十万か?


「二百万円」

「高いな」


 売る気が無いのでは無いか?


「情報で手を打つよ」


 成る程。


「それは、アンタの裏に誰がいるか次第かな」


 勝手に情報を流してはレアーに文句を言われる。

 俺の言葉にショニンは肩を竦める。


「そう言えば、メールでの商談も嫌がってたね。

 ひょっとして、通信は全部G社が監視してるとか言っちゃうタイプ?」


 問われ今度は俺が肩を竦める。


 俺の通信は全部バレバレなんだよ。

 レアーは余程暇なのだろうな。


「情報の件は、少し考えます」


 命には変えられない。

 だが、せめてハナに相談してからにしよう。


「あ、あと飴玉とか無いですか?」

「飴? ……飴かあ。

 時間はかかるかもしれないけど用立てようか」

「楽しみにしておきます」


 こうして、得るものが無い商談が終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on 新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
https://ncode.syosetu.com/n3012fy/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ