試験休み①
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なつみかん>連絡ちょうだい
御楯頼知>何?
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家に帰り、飯を食い風呂に入る。
そうやって、メンタルを整えてからいざ返信。
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なつみかん>明日暇?
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夏実からの返信が早い。
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御楯頼知>学校
なつみかん>バカ?
なつみかん>休みでしょ?
なつみかん>追試?
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ちょっとした冗談のつもりだったのに。
怒涛の三連打。
そう、明日は平日だが試験休み。
そしてそのまま週末。
ハナに呼ばれ、明日の学校を気にせずに行けた理由がここにある。
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御楯頼知>休み
なつみかん>会える?
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え?
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御楯頼知>何で?
なつみかん>今日の続き
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まあそうだろうよ。
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御楯頼知>良いけど
なつみかん>家どこだっけ?
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なるほど。
やり手はこうやってさり気なく個人情報を手に入れるのだな。
などと、どうでも良い感想を抱く。
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御楯頼知>新百合の東京側
なつみかん>あれ?都民?
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ん?
見下される?
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御楯頼知>あれ?県民?
なつみかん>まさか市民?
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夏実が住んでいると思われる鶴川駅周辺は、東京都と神奈川県の境があり、なおかつ東京、町田市に包み込まれるように神奈川、川崎市の飛び地が存在する。
さらに、すこし南下すればそこは横浜市。
非常にややこしいエリアだ。
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御楯頼知>そっちだって市民だろ
なつみかん>区民
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区民を名乗っていいのは東京二十三区だけだと思う。
川崎市麻生区、もしくは横浜市青葉区の住人に区民を自称する資格は無いだろう。
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御楯頼知>あ、独立国だっけ?
なつみかん>それ禁句だからな(怒)
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軽口が過ぎた。
気をつけないとまた右ストレートが飛んでくる。
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なつみかん>で、会えるの?
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予定は無いのだけれど……。
返答を考える間に次のメッセージ。
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なつみかん>明後日でもその次でも良いけど
御楯頼知>明日
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取り敢えず、それだけ返答する。
まあ、タブレットを見せるだけだろうから。
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なつみかん>とりまファミレスで良い?
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うーん……。
知らぬ人達の前でして問題ないような平和な会話でないのだよな。
コイツの攻撃がどうだとか、こうすれば死ぬだとか。
まあ、ゲームの話と思われないことも無さそうだが。
ただタブレットの中のスケッチ自体は異世界のそれなりに貴重な情報。
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御楯頼知>他に無い?
御楯頼知>人目が無い所
御楯頼知>出来れば二人きりが良い
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どこかあるだろうか。
そんな所が。
図書館……は会話が憚られるし、公園はクッソ暑い。
うーん、あ、家?
いやいやいや、不味い不味い。
恋人でも無いのにどっちかの家で二人きりなど。
……ん?
俺は何気なく送った自分のメッセージを見返す。
しばらく返信がない。
要約すると、人目のない所で二人きり。
ああああああ!!
俺、何を送ってるんだ!?
ちょ、そんなとこ……それこそ、家か……ホテル……ぐらいしか……。
いや、不味い。
この流れで、そんな事を誘っているように思われたくない。
………………もし……もし、仮にそういう話になったらどうする?
それは、それで良いのでは?
……良いの?
軽く、生唾を飲み込む。
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なつみかん>マ?
御楯頼知>いや、変な意味でなく
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駄目だって!
否定する!
否定しなければ!
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なつみかん>知ってる
なつみかん>考えとく
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知ってるって、どう言う意味だ!?
そこでやり取りは終わりになる。
俺は明け方まで寝付けなかった。
現実だと東京・神奈川間の越境通学は出来ないのですが少子化対策の名目でその辺の規制が撤廃された世界の設定です。
あと、特定地域を卑下する意図はありません!
……今更ですが。