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最後の敵②

 アナスタシヤに召喚され、彼女の真横へ。


「ヨリチカ、自分に会った事は?」


 レヴィアタンを睨みながら短く問うアナスタシヤ。

 相手の正体を探っているのだろう。


「……無い。

 だが、キョーコの別人には会った」

「……アレは、ワタシか」


 こちらを憎悪のこもった目で睨むレヴィアタン。

 ガンと言う音と共に、大里を封じたオベリスクが崩壊。

 その中から現れる無表情の男。


「……操られているのか?」


 その顔には先程まで見られた感情と言った物が一切感じられず。


「理性と思考を殺し、主人マスターの為だけに戦う人形デス」


 そう説明したアナスタシヤ。

 それが、レヴィアタンであるアナスタシヤの力なのであれば……。


「俺も、ああなるのか?」

「ワタシが命じれば」


 やはりアナスタシヤと同じ能力が。

 召喚、そして、使役。


「でもやらないデス」

「やらない?」

「やったら、ヨリチカは後で怒るでしょウ?」


 そりゃ、良い気はしないだろうが。


「ヨリチカ、感情を持たない人形と、常に考えながら戦う人間。どっちが強いと思いマスか?」

「人形」

「同意見デス」

「あっちのレヴィアタンにはどんな攻撃も通じない」

「倒せナイデスね」

「厄介な相手だ」


 そう言いながらアナスタシヤは指で自分が定めた標的を示す。

 同時に俺も。

 互いにそれを確認し、目配せの後同時に地を蹴る。


 俺の向かう先には、剣と虚ろな目を携えた大里。

 洗脳を解く様な術は無い。

 唯一、可能性があるのは瀬織津比売の思々三千降(しおのみちふる)

 だが、それを成すには……魔力が足りない。


 走りながら刀を抜く。そして、間合いのギリギリ内で横薙ぎに。

 軽々と退がり避ける大里。


 亟禱きとう 封尖柱(ほうせんちゅう)


 屹立するオベリスク。

 だが、それは標的を捉えず。

 横に飛び避ける大里。


 亟禱きとう 封尖柱(ほうせんちゅう)


 避けたその先へ更に同じ術を。





 乱立するオベリスク。

 だが、その全てが大里を捉える事が出来ず。

 予め攻撃がわかるかの様に躱される。

 大里の能力……か?

 だが、その代償も決して小さく無いのだろう。

 顔面蒼白で、目頭からは血が流れ出る。

 それでも、大里は止まらない。

 限界は近い。

 こちらも、魔力の底をつきそうだが……。


 亟禱きとう 封尖柱(ほうせんちゅう)


 正面から迫る大里のその進路の先へ放つオベリスク。

 だが、それを躱し剣を振り下ろす大里。


 紺抂亀こんごうせきが振り下ろされるその剣を受け止め、砕け散る。


 鈍い、嫌な音がした。


 盾が砕けた音では無い。

 剣を振るった大里の腕は、その衝撃に耐えきれず。

 その前腕、関節では無い所で曲がる腕。

 白い骨がそこから飛び出す。


 一歩下がり、壊れた腕に構わず再び飛びかかってくる大里。


 亟禱きとう  三身綱(みつみつな)


 自らの行動を捨て、大里を拘束する。

 これで、アナスタシヤへ助力をする事が出来なくなった。


 なおも暴れ拘束から逃れようとする大里を抑えつけながら、レヴィアタンの相手をするアナスタシヤを横目に見守る。


 水の妖精ルサルカ、雪の妖精スネグーラチカと共に戦うアナスタシヤ。

 二体の妖精が牽制する隙を突き、狐白雪の刃と自らの拳、或いは脚を使った格闘術でレヴィアタンを攻めるアナスタシヤ。


 ……レヴィアタンがアナスタシヤだとして、同じ力を持つとしたら、何故あの女は単独で戦う? アナスタシヤが召喚したのは妖精。


 では、レヴィアタンは何を?

 ……まさか、他の魔人、既に倒した六体を呼び出したのはアイツか?


 だとしたら、やはりアイツは俺のノートの内容を知っている事になる……が、そんな事、あり得るだろうか。俺が誰かにあのノートを見せるなど。



 大里を拘束し、二人の戦いの行方を見守る。

 傍目に優勢なのはアナスタシヤ。

 両者共に同じ様な動きに見えるが、アナスタシヤの方が一段鋭い。

 だが、体に叩き込まれる攻撃をレヴィアタンの方はさして気にする様子が見られず。


 攻撃が効かぬ相手。

 どう倒す?

 二者の戦いを見つめながらその答えを探す。


 流れる様な連撃でレヴィアタンを翻弄するアナスタシヤと妖精達。

 だが、アナスタシヤが目を見開き、その動きを一瞬止める。

 直後、レヴィアタンから黒い霧が噴出。

 中より出でる青い目の蛇。

 その蛇の口より吐き出された炎。

 それは、主人を守ろうとした妖精二体を呆気なく消し去り、主人を火達磨にする。


「アナスタし……!」


 炎に包まれた彼女の名を呼んだその一瞬。

 焼ける様な激痛が背後から脇腹に走った。

 身を捩り、振り返る。

 無意識に術が消え、その隙を大里は逃さなかったのだ。

 表情一つ変えない大里の持つ剣の先は俺の血で濡れている。


 亟禱きとう 縛鎖連綿


 怒りと共に放った術。

 だが、その直後、肉体が破壊される鈍い音で我に返る。


 ……スマン。後で治す。……生きてたら。


 貫かれた脇腹に手を当てながら視線を転ずる。

 あっちは生きてるか?


 だが、まず視界に入ったのは人の姿へと戻ったレヴィアタン。

 怒りに顔を歪め、ゆっくりとこちらへと歩いて来る。

 その姿は、やはりアナスタシヤと瓜二つ。


 亟禱きとう 卑弥垂(いやしで)


 傷口から溢れる血を押さえながら術で自分の身を癒す。

 その間に、レヴィアタンは俺の目前にまで迫っていた。


「……オマエがワタシの物になれば、ワタシは自由なんダ」


 彼女が俺の方へ手を伸ばしながら言う。

 その肩越しに見える炎。

 その中で黒い消し炭と化す、人の体。


「オマエが!」


 怨嗟の篭った声を浴びせられたが、俺の視線は炎の中で真っ黒になったアナスタシヤから動かない。


 人が燃え上がる。

 その悪夢の様な光景が変わる。

 黒く焼け焦げた体を炎と共に脱ぎ捨て現れる女性。

 それは、さながらマトリョーシカの様に。


 アナスタシヤの中から現れたアナスタシヤ。

 一糸まとわぬ姿で微笑むその姿。神々しさすら感じるのは、血を流し過ぎた所為だろうか。


 レヴィアタンも何かを感じ取ったのか、それとも俺の視線に気付いたか。

 振り返り、こちらへとゆっくり進み来るアナスタシヤを目の当たりにしたレヴィアタン。

 彼女が、まるで絞り出す様に呟く。


「アナスタシア……」

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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