合同作戦完遂
「試験頑張って」
桜河さんの背に、そう投げかけその場を立ち去る。
――亟禱 飛渡足
飛ぶ先は、俺が埋めた御識札。
景色が切り替わる。
それと同時に膝から崩れ落ちた。
「大丈夫?
気を確かに」
そんな俺に真っ先に駆け寄り手を差し伸べたのは意外にもミカだった。
「成果は?」
「ちゃんと仕留めたデスか?」
お前ら、何で上から目線なんだよ。
と、心配して然るべき仲間達に見下ろされながらイラッとする。
「倒したよ。完全に」
「ヨシ。それでこそデス」
「これで少し休めるわ」
「原宿行くでス!」
「良いね。ランチ全然余裕で間に合う」
「わ、私も、ご一緒してあげても、よ、よろしくてよ?」
急にギャルモードに突入する三人。
「ライデンさん、お陰で終わりました」
「ごっつぁん」
「ボロボロなんで、稽古はまたの機会に」
「楽しみにしてるネ」
こうして、ベルゼブブ撃退作戦は完遂された。
◆
痛めつけられた体を術で治し、砂の上に寝転がる。
四人を先に戻し、クールダウンと言って一人残る。
クールダウン……。
ヤバかった。
あの一瞬。
桜河さんと目が合い、見つめ合ったあの一瞬。
あとコンマ一秒長かったら、俺の理性は完全崩壊しそのまま桜河さんの唇を奪って居ただろう。
そしてその後。
侮蔑の眼差しで睨まれ、走り去られていたんだ。
そうに違いない。
理性が勝った俺に乾杯。
……可愛かったなぁ。
だってさあ、知り合いを守る為に震えながら身を呈して盾になるとか出来る?
普通出来ない。
尊い。
尊くて眩しい。
それに引き換え、俺は……。
桜河さんが振られればワンチャンとか、浅ましいにも程がある。
だから、その前に。
そう。
そんな、空き巣狙いの様な真似をせずに。
想いを伝えよう。
「良し! 決めた。
帰ったら、告る!」
「誰に告るデスか?」
「うわぁ!」
突然のアナスタシヤの声。
そして、砂の上に突然現れる彼女の姿。
「遅いから死んでナイか見に来たデス」
「死んだらわかるって言ってなかったか?」
「わかるデス」
彼女曰く、部下の状態はわかるらしい。
誰が部下だよ。
「早く帰るデス」
「先に帰れって言ったろ」
「心配して引き返して来たのに随分な言い草デスね。
イツキにある事ない事吹き込みマスよ?」
「止めろ!」
むしろない事ばかり吹き込まれそうだ。
若干、決意に水を差された気分になりつつ立ち上がり門の方へと足を向ける。




