まちづくり①
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イツキ>トリック・オア・トリート!!
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久しぶりに、桜河さんからLINEが!!!!!!!
いや、俺から送れば返事は来るだろうけれど、受験生の邪魔をしては悪いし……などと尻込みしているうちに随分と間が空いてしまった。
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イツキ>お久しぶりです
イツキ>お元気ですか?
御楯頼知>お久しぶりです
御楯頼知>元気です。桜河さんは
御楯頼知>風邪とかひいてませんか?
イツキ>大丈夫です
イツキ>今日、インフルの予防接種を受けてきました
御楯頼知>感染ったら大変ですもんね
イツキ>そうなんです
イツキ>なので、ハロウィンも引きこもりです
御楯頼知>終わったらその分楽しめばいいですよ
イツキ>うー
御楯頼知>どうしました?
イツキ>よし
イツキ>御楯くんはお菓子をくれそうに無いので
イツキ>イタズラをすることにしました
御楯頼知>え?
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そして送られてくる自撮り画像。
あっかんべーをした桜川さんのアップにアプリで角と牙が付け足された物。
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御楯頼知>待受にします!!
イツキ>止めて!
イツキ>はずい!
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小悪魔スタイルの桜河さん。
悪くない。
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御楯頼知>毎日拝みます!
イツキ>それもはずい
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くそう。
このまま中央線に乗り換えて会いに行きたい。
だけど、本当に風邪でも感染しでもしたら大変だし……。
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御楯頼知>宝物にします!
イツキ>やめてー
御楯頼知>受験頑張ってください
イツキ>はい
御楯頼知>終わったらお菓子持って行きます
イツキ>わーい
イツキ>頑張る!
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いや、天使。
「何、ニヤニヤしてんデスか?」
「してないよ」
そんな俺の横からアナスタシヤがスマホを覗き込もうとする。
「いや、超ニヤニヤしてマシたよ?
気持ち悪いくらい」
「うるせ」
「イツキですか?」
「……知り合いだっけ?」
あれ? そう言えば、アリスの車内でも確かその名を……。
「トモダチデス」
「え? マジで? 何で?」
「秘密デス」
「え、マジで言ってんの?」
「嘘吐く必要無いデスよ?」
そりゃそうなんだけど……。
どこにも接点無さそうなのに。
「そうデスね。
全部、片付いたら教えても良いデスよ」
「全部って?」
「大里の事とか、イツキの受験とか」
どうして勿体ぶる必要があるのだろう。
イマイチ釈然としないまま小田急線に揺られシキシマシステムサービスへ向かう。
◆
「石連なる先
戻ること無い道の半ば
孤独を残す標と成る
唱、伍拾捌 現ノ呪 枝折」
転移地点へ御識札を埋める。
そして、魔方陣が現れ視界が変わる。
自称、お姫様のアナスタシヤに召喚された先は明るい青空の下。
「人がいるデスね」
「身を隠しても仕方ない、か」
二人が立っているのは広大な草原。
そして、森。その奥から煙が立ち上る。
「まずは、様子を見に行くか」
「デスね」
その場所へも御識札を埋め、アナスタシヤを伴い歩き出す。
◆
「何か来るデス。逃げマスか?」
歩き出して暫し。
後ろを歩くアナスタシヤからそう言われ振り返る。
「いや、もう遅いな」
見通しの良い平原の向こうから来るのは並んで歩く馬二頭。
「馬車か。初めて見たな」
その馬が引くのは御者が乗った荷車。
「赤い旗。商売人デスか?」
その荷車に赤い布が括り付けられている。
「かもな。
待ってみるか」
遠目には長閑な旅商人の様にも見える。
さり気なく情報を得るには最適ではないか。
まあ、警戒されていなければ、と言う前提ではあるが。
ゆっくりと進んでいた馬車が俺達の目の前で停まる。
「おや?」
御者の男が俺の顔を見て破顔する。
「以前にお会いしてますか?」
「一年程前に。
あの時はどうも」
「随分と立派な身なりになって」
「そっちこそ」
「また何か入り用ではないですかな?」
「そうだな……欲しいのは、情報かな」
「成る程。高いですよ?」
そう言って声を上げ笑うのは、以前会った事のある男、トオル。
爪刀と靴や外套を取引した商売人だった。




