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正義を掲げる①

 九月最後の週末。

 G Play特別法案の成立を受け、来月からG Playは全国的に暫くの休業となる。

 だから駆け込みで向こうへ行こうという輩で大盛況なのではないだろうか。

 小田急に揺られながらそんな事を考える。


「あの男の勝ち誇った顔を見るのはそれはそれでムカつくデスよね」

「別に来なくても良かったんだぞ」


 横に座るアナスタシヤと共に目指すはシキシマシステムサービス。

 連絡の取れぬ真壁に彼の会社の入館証を返し、ついでに買い物に付き合わされる予定。

 入館証を返すだけなら俺一人でも良いのだが、暇だからと付いてきたアナスタシヤのお供として。

 大里辺りを誘えば良いのに。

 そう思ったのだけれど、彼とは連絡が付かず。


「帰りにここ寄るデス!」


 そう言ってスマホの画面を見せるアナスタシヤ。

 そこに、フルーツが山盛りのパフェ。


「女子と行けよ」

「キョウコとは一緒に行ってマス!」


 だから、何でお前らそんなに仲良しなの?


「じゃ、キョウコと行けば良いだろ」

「今日、行きたいデス!」


 俺は桜河さんと行きたい。


 ◆


 シキシマシステムサービスの入る高層ビル。

 休日の為、受付は無人で入館ゲートの横に警備員が一人。


 静かに敬礼する彼の横でゲートへ入館証を翳す。


『ブー』と言う、ブザー音と共に赤いランプが点き、ゲートは閉じたまま。


「あれ?」


 接触不良かと思いもう一度翳すが、再びのブザー音。


「失礼します。

 どちらへ御用でしょうか?」

「シキシマシステムサービスです」


 問いかけて来た警備員へ、入館証を見せながら答える。


「シキシマシステムサービスは退去しました」

「え!?」

「もう、このビルにオフィスはありません」

「え、何処へ?」

「それは存じ上げません」


 道理で電話が繋がらない訳だ。無駄足だった。


「帰るか」


 振り返り、アナスタシヤへ声をかける。


「まあまあ。折角来たんだ。

 お茶でも飲んで行かないか?」


 いつの間に現れたのかゲートの向こうに立つ面長のオールバックの男。

 警備員の男が一歩下がり敬礼。


「どなた?」


 俺の問いかけにネックストラップの付いた入館証を放り投げ、返事の代わりにする男。

 そこに書かれた社名。『シキシマセキュリティサービス』。

 ……馬鹿にしているのか?


「お茶菓子は何デスか?」


 同じく入館証を受け取ったアナスタシヤが警戒する事なく、ゲートをすり抜けて行く。


「そんな上等な物は無いな。

 なにせ、まだ立ち上げて間もない会社なもんで」


 そう言って人を食った様な笑みを浮かべた後、男が背を向け歩き出す。

 結局俺も、新たな入館証でゲートをくぐりその背を追いかける。

 アナスタシヤと共に。


 ◆


 男が案内したのは地下三階。

 まさにシキシマシステムサービスのあったその場所。


「何の冗談ですか?」


 思わずそう言ってしまう。


「冗談だったらどんなに良いか」


 そう言いながら入館証をかざし、部屋のドアのロックを解除する男。

 中はシキシマシステムサービスの時と何一つ変わらず。


「あっち、座っててくれ」


 そう言われ、小さな会議室で待たされる。

 その会議室のホワイトボードには地図が貼られ、その周りに幾つかの書き込み。

 日付、地名。それと担当割の様な物などなど。


 利害調整:五島

 渉外:有珠

 巡回:転法輪


 ・人→職員?自衛官?

 ・金→当面節約→M資金?

 ・物→溜池山王の利用を要請


 部外者が見てよい物なのだろうか。


「吉祥寺の地図デスね」

「だな」

「この前行きマシたよ! ミンナで!」

「へー。何しに?」

「秘密デス!」


 そう言ってニヤリと笑うアナスタシヤ。

 どうせカフェ巡りとかだろ?


「待たせたな」


 男が紙コップを乗せたお盆を手に現れる。

 中にはコーヒー。


「俺は五島いつしましげる

 ここ、シキシマセキュリティサービスの責任者だ」

「シキシマセキュリティサービス?」

「そう。この前出来たばかりで名刺もまだ。

 どんな組織かは……まあ、想像つくよな?」

「シキシマシステムサービスの後継?」

「そう。

 だが、前より明確な目的がある」

「何ですか?」

「現実に現れた脅威の排除」

「それは……」


 ホワイトボードに目を向ける。

 そこに貼られた吉祥寺の地図、その上に貼られた三つの付箋。


有珠うすから聞いてるだろ?」

「ええ」

「G Playの向こうから来たお客さんの相手をする。

 当面はその為の組織だ」

「五島さんが作ったんですか?」


 俺の問いに五島は首を横に振る。


「有珠だよ」

「アリスが?」

「アイツが走り回って、そのまま消える予定だったシステムサービスを繋ぎとめた。

 こんなロートルまでこき使って」


 言葉とは裏腹に笑みをこぼす五島。


「とは言え、人、物、金、全てが足りてない。

 名刺すら刷れないような有様だ。

 このコーヒーは俺の自腹だぞ?」


 そう言って口をへの字にした後に紙コップに口をつける五島。

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