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夏実さんと。②
「痛って!」
駅から出て学校へ向かう途中。
突然、本当に突然、何の前触れも無く右の二の腕に激痛。
「……ごめん」
その原因は、疑う余地もなく隣を歩く夏実。
「え、何?」
何で突然殴られた?
しかも、グーで。
「何か、ムカついた」
口を尖らせながら夏実が言う。
「は? 意味わかんないんだけど?」
殴られる心当たりなど一切ないのだ。
「だから、謝ったじゃん」
「いやいやいや、おかしくね?
明らかに順番が。
いや、順番が正しければ殴って良い訳じゃ無いから」
「それぐらいわかってるよ」
じゃ、何で殴った?
釈然としない俺の横で不機嫌そうに口を尖らせる夏実。
いや、不満があるのはこっちだぞ?
なので俺は反撃に出る。
人差し指を一本立て、夏実の腰、ちょうど肋骨の下辺りへ狙いすました一撃。
「はぅん……コロス!」
大袈裟に、くの字に体を仰け反らせた夏実。
一歩距離を置き、反撃に備える。
「朝っぱらからイチャイチャしてんじゃねーっつーの。
バカ夫婦」
そんな俺達を村上のチャリが追い越して行く。
夏実さんには怒る権利があると思います。




