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シキシマシステムサービス①

 磯城島守とか言う、盛大に厨二を拗らせた様な組織が存在し、更にそこから黒の軍服に似た制服が届いたのは五月の三日。

 なぜか、アナスタシヤにも。

 そして、荷物と共に送られてきたものは『シキシマシステムサービス』と入ったIDカード。

 五月四日十五時にその『シキシマシステムサービス』へ訪問せよと書かれた書類。


 シキシマシステムサービスって何だよ。


 ネットで調べる。


『快適で安全な社会の構築の為に、私たちは日々邁進してまいります』


 そんなコピーが添えられたウェブサイト。

 トップページ一枚と会社概要のみの簡単なサイト。

 真壁から送られてきた書類に記載された住所と本社所在地が同じ。

 新宿にある元国営通信会社の高層ビル。JRの代々木の方が近いか。

 何でそんな所へ呼び出し?


「ペーパーカンパニーデスね。

 日本のシキシマグループ。

 有名デス。

 習いました」


 へー。

 バレバレなペーパーカンパニーって、大丈夫なのか?

 そんな疑問を抱きながら、俺と同じ様な書類を貰ったアナスタシヤと共にGWの中日を楽しむ乗客で混雑する小田急線で新宿へ向かう。


 休日の企業ビル。

 受付は無人で、出入口のゲートの脇にいかつい警備員が一人。


「あのー」

「本日、IDカードをお持ちの方以外の御入館は出来ません」


 俺よりふた回りは肩幅がありそうな警備員が威圧感のある笑みを浮かべながら応対する。


「IDカード……」


 鞄から送られて来たIDカードを取り出し提示する。

 それを一目見るなり、直立していた警備員が更に背筋を伸ばしながら敬礼。


「お疲れ様です。

 シキシマシステムサービスは地下三階になります。

 一番奥のエレベーターへどうぞ」

「あ、ありがとうございます」


 IDカードをゲートに近づけ通過。

 言われた通り一番奥のエレベーターへ。


「……全然迫力ナイ警備員デスね。

 平和な国は違いマス」


 エレベーターを待つ間にアナスタシヤが先程の警備員へ評価を下す。


「一般人だからな」


 とは言ったものの、彼女の意見に対して異論は無い。正直、俺でも勝てそうとか思ってしまった。

 でも多分、それは思い込み。


 到着したエレベーターに乗って地下三階へ。

 扉の先には真壁が待ち構えていた。

 ウチに来た時と違って、無精髭が生えておりネクタイもしていない。


「来ましたか」


 両手をポケットに入れたまま、無表情に言う。


「こっちへ」


 そう言って、顎で行き先を示し歩き出す。

 パイプが剥き出しの天井と薄暗い照明。

 華やかな高層ビルのオフィスと言う雰囲気からかけ離れているのは地下だからか、今日が休日だからか。

 廊下の突き当たりにある扉の前で真壁が立ち止まり、その横にあった電子キーに首から下げた『シキシマシステムサービス』のIDカードをかざす。

 ピッと言う電子音の後に、ゆっくりと重いサムターンが回る音。


「カードかざして入ってください」


 扉を開けながら俺たちにそう命ずる。


「あっちで座って待ってて下さい。

 いま、準備をします」


 そう言って小さな会議室を指差し、自身は部屋の中へと戻っていく。


 ◆


 ホワイトボードが置かれた小さな会議室で待つことしばし。

 現れた真壁は、並んで座る俺とアナスタシヤの前にペットボトルのお茶を置いて向かいに座る。


「公務員じゃなかったんですか?」


 それの蓋を開けながら疑問をぶつける。


「れっきとした国家公務員。民間企業へ出向中の立場です」


 テーブルの上に書類を置きながら答える真壁。


「休日なのに大変ですね」

「ええ、全く。

 働き方改革とか言い出したお陰で働かない連中ばかり。

 その割りを食うのが私達ですよ」


 そう言いながら書類を俺の方へ向ける。


「これが報告書のサンプル。

 どんな世界だったか。

 何が居たか。

 誰が居たか。

 入り口から門までの道のり。

 それを書いて、提出して下さい。

 アップ先は、このQRで」

「インターネットでやり取り?」


 真壁の言葉にアナスタシヤが訝しげな声を上げる。

 だが、真壁はアナスタシヤに取り合わない。


「我々としては、あの世界がどんな所なのか、どれだけの世界があるのか。

 まずはそう言った基礎的な情報を求めています」

「それだけで、五万」


 だが、まあその代わりに命を失う危険がある。


「そうですが、どうしますか?」

「どう、とは?」

「全額を彼女の支払いに回すか、それとも半分は自分のお小遣いにするか、と言う質問ですよ」

「ああ、そう言う事も出来るんだ」

「騙されたらダメデス!

 そうやって、ヨリチカを拘束し続けるつもりデス。

 甘い言葉で擦り寄る、スパイの手口デス!」


 お前が言うか?


「身柄を抑えられた間抜けが、必死ですね」


 真壁がアナスタシヤに対し、露骨に見下す様な視線を投げる。


「ここでお前を殺して逃亡しても良いデスよ?」


 その挑発にまんまと乗せられるアナスタシヤ。


「行き場所なんか無いだろう?

 マンホールの中に戻るつもりか?」

「……ウビユ!」


 金切り声で叫ぶアナスタシヤ。

 殺す。そう言う意味らしい。

 そしてテーブルの上のペットボトルを掴もうと手を伸ばしながら立ち上がる。


「止めろ」


 それを掴む寸前で俺が掠め取り、服を引っ張り座らせる。

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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