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日常へ戻る

 KBCから解放された29日から一日。

 翌日の放課後。

 帰りに大里君と二人、ファミレスへ。


「てかさ、いくら呼び出されても夜中の、ましてや改装工事中のこどもの国まで行くのは本当にどうかしてると思う」

「僕は別にそんな風には思わないけど?」


 俺の言葉にさも意外だと言う顔を見せる大里君。

 ……あれ? こいつ、ちょっと頭おかしいのか?


「それだけの魅力があの金色の髪に……」


 とアナスタシヤの魅力を延々と聞かされる羽目になる。

 なんだろう。こんなキャラだったのかな。


「と言うか、どうしてあの魅力が伝わらないのか不思議でならないんだけど。

 まあ、伝わらない方が良いんだけど」


 どっちだよ。

 魅力よりも、気味の悪さの方が先立つんだよ。

 ちょいちょい嘘を挟む得体の知れない元スパイ。

 そして、成り行き上、彼女の為にこれから数十回G Playに行くことになる。


「で、その改装工事中のこどもの国で何をしてたって話」

「……体力作り。うちの母親、トレーナー資格があるから」


 何のトレーナーだろうか。

 最近、その場の思いつきの嘘が増えて来た気がする。

 そのうちボロが出そう。

 しかし、まあ、真実を告げる訳にもいかないしなぁ……。

 などと思っていると案の定そこを突っ込まれる訳だ。


「何のトレーナー?」

「……元、警備員。

 簡単な護身術を教えてた」

「護身術? 何で?」

「アナスタシヤがG Playに興味があるって言ってたからかな。

 危険なんだろ?

 護身術くらい身につけないと、女の子をそんなところに行かせる訳にいかないって」

「本当?」

「大体そんな感じ」

「ふーん。

 御楯は、G Playやってるんだっけ?」

「……実は、何回か行った事はある」

「へー。

 実は僕も少し興味あるんだけど」

「へー。意外」

「どう?

 攻略法とか無いの?」

「無いよ。運。完全に」

「それは……自信無いんだよなぁ。

 でも攻略法を教えてくれる所もあるんだろ?」

「らしいね。

 多分、詐欺だよ」


 それほど詳しく調べて無いが、そう言う謳い文句で客を集めるG Play攻略室なる物がちらほら出来ているらしい。

 しかし、一度向こうに行った者ならばそんな物は無いとわかるはずだ。


「まあ、あまりオススメはしないよ。

 アナスタシヤも、もう興味はないんじゃないかな」

「そうなの?」

「そう」


 彼女は、G Playに興味があったのではなくG Playから得られる情報が欲しかったのであり、それすらもう用済みだろうから。

 ひょっとしたら、それを集め元の組織へ売り込もうなどと考えているかも知れないが。


「彼女の言ってた日本語学校の勉強もひと段落した見たいだから目一杯学生生活を楽しめば良いと思う。

 だから、まあ、あんなのだけど仲良くしてあげてくれ」

「もちろん、なんだけど、何さ、その言い方」

「いや、俺にはそれより重大な考え事があるの」

「ん?」

「……大里君が去年八人に告られ、三人と付き合ってたと聞いて是非教えを請いたい」

「いや、五人だけど」


 ……どっちが五人なの?


「とにかく、先輩!

 女性を遊びに誘うのはどこが良いですか!?」

「ホテル」

「そう言うんじゃない!

 清い! 爽やかな!」


 しれっと答えるな。バカ。

 それが出来るならこんな質問しないんだよ! バカ! 金髪バカ!


「デート?」

「……みたいなもの。付き合ってはない」

「うーん……改まってお出かけ?」

「そう……だね」

「なら、水族館とか。江ノ島まで行けば?

 まあ、行き帰りの電車が少し長いからそこを上手くやり過ごす必要はあるけど」

「水族館か。でも何で江ノ島?」

「小田急で一本だし」

「あー。

 相手、小田急、違う」

「あ、そう」

「映画とかは?」


 それが定番だろ?

 そうしようと思ってたのだ。


「悪く無いけど、映画って二時間だろ?

 その前後の時間つぶすの大変だよ?

 買い物とか? 地獄だよ?

 それに、映画の感想が合わないと変な空気になるよ?」

「ぬおおおお!!

 そうかぁ!!!」


 すげぇ。

 パイセンすげぇ!

 超有能。


「水族館なら、まあそれなりに時間が潰せるし無言で眺めていてもおかしくない。

 動物園でも良いけど、水族館の方が屋根があるから天気気にしなくて良いし、薄暗いから相手もきっとドキドキするよ」


 策士!

 軍師!

 超有能!


「それだ!」


 動物園は既に行った!

 ならば次は水族館!

 よし!

 全然おかしくない!


「因みに相手はどこの人?」

「吉祥寺」

「中央線か。

 んー、ちょっと遠いけど葛西臨海公園は?」

「ほう」

「公園もあるし、海も見える。

 観覧車もあるよ」

「キタコレ!!!」


 もう、そこしか無い!


「まあ、GWは混むだろうけど」

「おーう……」

「でも、そこに限らずどこも混むけど。

 そう言う時は家でゴロゴロイチャイチャが一番だよ」

「ハードル高ぇ!!」


 それは、無理だ!


「因みにどんな人? 金髪?」

「黒髪の女神」

「ならいいや」


 あん?

 お前、今、一瞬で興味無くしたな?

 まあ、興味持たれても困るけど。

 てか、大里君にとって金髪って何なのだろう。


 ◆


 ────────────────


 御楯頼知>2日休みなんですか


 ────────────────


 白々しい。

 自分でもどうかと思う。

 本当、どうかと思う。


 ────────────────


 イツキ>休みですよ?

 イツキ>ミタテくんはどんなGWを過ごす予定ですか?


 ────────────────


 予定!

 今のところ無し!


 ────────────────


 御楯頼知>まだ何とも

 イツキ>そうですか

 イツキ>楽しんでください

 イツキ>寝て過ごすのも楽しいですよね


 ────────────────


 あれ?

 なんか、気を使われてる!?


 ────────────────


 御楯頼知>そうですね


 ────────────────


 違う!

 違うんだ!!


 ────────────────


 イツキ>どこも混んでますものね


 ────────────────


 痛いくらいの気遣いの嵐。

 違う。

 ちゃんと誘うんだ!

 頑張れ! 俺!

 KBCに比べればこんなもの!

 ……いやぁ、KBCよりハードル高いぞ。

 そもそも春休みも桜河さんに誘われたんだし。

 いや、頑張る。送る!


 ────────────────


 御楯頼知>水


 ────────────────


 ぬぁぁぁぁ!

 痛恨の送信ミス!


 ────────────────


 イツキ>みず?

 イツキ>すい?

 イツキ>水星?


 ────────────────


 間髪置かず戻ってくる怒涛の三連打。

 何? 連想ゲーム?


 ────────────────


 イツキ>水素?

 イツキ>水辺?

 イツキ>水菓子?


 ────────────────


 謎の連想ゲームを始める桜河さんに戸惑う。

 そして、奇跡が。


 ────────────────


 イツキ>水族館?

 イツキ>水化粧?

 御楯頼知>それ!

 イツキ>結婚式?


 ────────────────


 違う!


 ────────────────


 御楯頼知>水族館

 イツキ>当たった!

 イツキ>やったー


 ────────────────


 可愛い。

 違う!

 こんなんでニヤけてる場合じゃない!


 ────────────────


 御楯頼知>水族館行きませんか?

 御楯頼知>葛西の


 ────────────────


 永遠に続く刹那。

 終わりの見えぬ沈黙。

 それを破壊する電子音。


 ────────────────


 イツキ>良いですよ


 ────────────────


 キタコレ!

 スマホを置いて両腕を上げてガッツポーズ!


 ────────────────


 御楯頼知>良いですか?

 イツキ>良いです

 御楯頼知>ありがとうこざいます

 イツキ>こちらこそ


 ────────────────


 ありがとう! 大里様!

 明日、アナスタシヤを隠し撮りして画像をプレゼントしよう。

 後頭部だけが写った写真を!

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script?guid=on 新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
https://ncode.syosetu.com/n3012fy/
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