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国際マナ訓練学校 開校

 点々と小さな草が生える荒野。

 そこに横一列に並ぶ十人。

 それと向き合う男が二人。

 似合ってない髭面のAと以前と変わらないヨーク。

 そして、少し離れた岩の上で姿を隠しそれを見つめる男が二人。

 俺とショニン。


「あの子、可愛いな。

 ウチで働いてくれないかな」


 十人の中に混じる一人を指差しながら言うショニン。


「あの子、アイドルじゃないか?」

「へー。そっちは疎いからな。

 でも、現役アイドルがこんな所に来るかね」

「休業宣言してたかも」

「良し。連絡先渡しておこう。

 他は……動きが素人じゃ無いね。

 こっちで見た顔も……いち、にい、さん……」


 メティス、最初のクラス。

 その訓練の様子を見学しながらその面子を見定めるショニン。


「そいつらは強いのか?」

「うーん……覚えてないけどランクCがせいぜいじゃなかったかな?

 ま、記憶に残らない程度って事さ」

「へー。

 向こうではそれなりだろうに」


 ハナの言葉通りならば、警察関係者か自衛隊関係者だろう。


「だからだろ?

 あっちで鍛えた経験がこっちでの限界を決める。無意識のうちに」

「そんなもんか」

「さて、ひよっ子の検分はこんなもんでいいや。

 次は君のだな」

「ああ」


 ショニンが岩の上に積まれた未開拓惑星の生き物の残骸へ目を向ける。


「ふーむ。

 ちょっと、見た事ない素材だな。

 防具だっけ?」

「そう。

 鎧と籠手が有れば良いかな」

「ちょっと、素材の特性も加味して検討させるよ。

 まあ、前回のものよりずっと良いものが作れると思う。

 急いでるかい?」

「いや。

 命を預けるんだ。良いものを作ってくれ」

「わかった」


 未開拓惑星で手に入れた物に加えて、今までの世界で手に入った物の殆どをショニンに渡す。

 それで防具を作ってもらう為に。

 余った素材は買い取ってもらい、加工費に回す。

 それでも足が出るならば現金で支払っても構わないと思っている。

 払える範囲でならばの話であるけれど。


「それと、これを預けたい」

「ん? 預ける?」

「そう。

 もしこの先、マキマキちゃんがこの世界へ足を踏み入れる様ならば、その時に渡して欲しいんだ。

 彼女の助けになる様に」

「マキちゃんで良いのかい?

 あの子じゃなくて」

「頼めるかな?」

「……良いよ。

 従業員の安全は雇用主の義務だからね」


 ヴェロスのゴーグル、ドローン。

 それと、真珠切とロキの指輪。


 それらをショニンに預ける。

 いずれ、アプルがこの世界に来た時に届く様に。

 これは、決まった未来の出来事なのだろうから。


 ◆


「どうだった? 俺の授業は」


 生徒全てを門から現実むこうへ送り返したA。

 慣れない教師役で疲労困憊と言うのがありありとわかる。

 その生徒は皆、年上だろう。


「良かったぞ」

「そうか!」


 ダメ出ししてコイツの心を折っても意味無いしな。


「これ、お前に預ける」

「ん?」

「どうするかも含めて。

 頑張れよ。先生」


 宇宙戦艦で拾ったイヤホンマイク、一ダースが入った箱をAの手に握らせ、俺は門へと向かう。


「は? 何だよ。これ?」


 その問いに俺は自分の耳をトントンに二回ほど指で叩く仕草をしながら門へと触れる。


 あれをスクールで活用するか否か。

 その判断は阿佐川に任せよう。

 彼がスクールを信じるかどうか。


 ◆


 現実に戻り、レアーへと顔を出す。

 ヘスティアの見学と、向こうでのショニンとの商談の機会を提供してくれたマイクに礼を言う為に。


「おかえりなさい。

 どうでしたか?

 スクールの様子は」

「ヨークが居て正解でしたね」


 相手は海千山千。

 全員が未経験という訳ではないだろう。

 それでも、あの世界では阿佐川の方が力は上だろうが、何せ若い。

 それだけで、たったそれだけの事で舐められかねない。

 だから、その後ろで威圧感を放つヨークの存在は大きい。

 そして、阿佐川もまたそんなヨークから学ぶ事も多いだろう。


 岩の上でその様子を眺め、俺が必要以上に心配する事はなさそうだとの結論に至る。

 だからこそ、イヤホンマイクを彼に預けたのだ。


「スムーズに動いていくと良いのですが。

 そうそう。これはハナからの贈り物です」

「ハナさんから?」


 手渡されたのはA4サイズの封筒。

 ほどほどの厚さがある。


「そう言えばハナさん、どうしたんですか?」


 最近、顔を見ていない気がする。


「彼女は一時帰国しています。

 ひょっとしたら、もう戻らないかも知れませんね」

「……何か、あったんですか?」

「探し物が見つかった様です」


 そう言ってマイクは笑みを浮かべた。

 彼女の探し物とは何なのだろう。


 自宅に帰ってから封筒の中身を確かめる。

 それは、大学への推薦状だった。

 俺が異世界研究の第一人者であるという事が書かれた。

 そしてその受け入れ先、有名無名問わず三十近い大学の募集要項。

 さらには、ヘスティアの求人票まで。


 それら全てに目を通し、再び封筒へと戻す。

 そして、俺の設定が書かれた大学ノートと共に紐で縛り紙ゴミとしてまとめて処分。

 万が一、帰ってこれない時の為に見られてはいけない物は片付けておかないと……。

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