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恐怖のテーマパーク①

 野外……か。


 左右に建造物が並ぶ空間。

 建物の外壁にはまるで、クリスマスのイルミネーションの様に電飾が飾られている。

 と言っても、明かりは灯らず、いたるところで断線し垂れ下がっているのだけれど。

 それを浮かび上がらせる街灯も、時折チカチカと明滅する。

 天井は屋根がありアーケードの様になっている。

 寂れた街、或いは廃墟……の商店街?


 ……ヴェロスの作った空間か、それとも機械人形の世界か。

 現実の様で居て、どこか現実離れした風景。

 仮にヴェロスの空間なら、下手に御識札は埋めない方が良いだろうか。

 と言うか、埋めた所で無駄になるんじゃないだろうか。


 朧兎を呼び出し周囲を警戒しながら、アーケードを抜けると正面に開けた広場と左右に伸びる道。

 木の枯れた植え込みを照らす様に薄暗い電灯が等間隔に並ぶ。

 広場の先、少し靄がかかった中に大きな建物があるように見える。いや、靄では無く瘴気だな。



 試作品に手に掛けながら歩みを進める。


 小さな駅があり、その先に洋風、西部開拓時代のアメリカを思わせるような町並みがあり。

 更に進んだ所で、この場所の正体に思い至る。


 メリーゴーラウンド、そして、回るコーヒーカップ。


 ……遊園地。


 もしこれらが動いていたら実姫が目を丸くして喜んでいただろう。

 しかし、静寂の暗がりの中、ひっそりと佇む遊具は恐怖に近い寂しさを感じさせた。


 その先の近未来的な一画を抜け、どうやら一周して最初のアーケードの先に戻った様だ。


 一周三十分ほどか。

 当然、門の位置は分からず。


 場合によっては建物の中まで細かく調べなければならないだろうか。


 とりあえずもう一回りしてみよう。

 今度はもう少し周りを観察して。


 そう思って歩き出した直後だった。


 ――ゴーン、ゴーン。


 空気を震わす様な鐘の音が響き、周囲のライトが一斉に明かりを灯す。

 その眩しさに思わず目を細めた。


『Welcome to $#%^~#&/……』


 大音量で響くアナウンス。

 後半はくぐもり聞き取れず。

 そして、軽快な、楽しげな音楽が流れ出すがその音楽はまるで壊れた機器で再生されているかのように途中でテンポが早くなったり、極端に遅くなったり。


「……気持ち悪」


 大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

 何かはわからないが始まった。

 瘴気が、じっとりと体にまとわりつく。


 実姫を遊ばせる様な気配で無くなったのは確かだ。

 だが、場合によっては手伝わせよう。

 一度、懐の紙片を確認し試作品を抜く。

 気持ち悪い音楽に紛れ風に乗って届くのは人の笑い声。その方向へと足を向ける。

 さて、何が出るのか。



 通りの脇で座り込み、或いは建物に寄りかかり酒瓶を呷る連中。

 頭にバンダナを巻き、髭を伸ばし、ボロボロの衣服を纏った真っ黒に日焼けした男達。戦利品だろうか。似つかわしくない貴金属を見せびらかし下品な笑い声を上げている。


 海賊。

 まあ、見たまんまの印象だな。

 その体から漏れる瘴気が、その存在が人でない事を物語っている。

 では、亡者かといえばそれも違うだろう。

 実姫の様な仮初めの存在では無かろうか。


 通りの真ん中を剣をぶら下げ歩く俺を薄ら笑いを浮かべ、時折嘲笑を浴びせかけて来る。


「よう、坊ちゃん。夜中にお散歩かぁ?」


 俺に向け投げつけられたであろうその声に、周囲が一斉に静まり返る。

 声の主は眼帯をした大男。

 長く伸びた髭の先に紐のようなものを編み込んでいる。


 ……黒髭、エドワード・ティーチ。


「ここを通りたければ、有り金全部置いてきな」


 安い。

 あまりにも台詞が安い!

 何だ? その三下みたいな台詞は。

 大海賊だろ? 違うのか?


 思わず溜息が漏れる。


「それと、命もなぁ!」


 その言葉と共に、黒髭が俺に向けた銃口が火を噴く。

 手にした試作品を一閃。

 刹那、その切っ先が鉛の銃弾を切り落とす。


 ……なんて芸当は無理だった。

 放たれた銃弾は、朧兎が俺に至る前に受け止める。

 そして、その銃弾が通り過ぎた虚空を切り裂く試作品。


「……丘に上がった豚が何か言ったか?」


 しくじりなどなかった事にして、涼しい顔で挑発。


「……やっちまえ!」

「「「「おおお!!」」」


 黒髭の号令に呼応する海賊達。

 サーベルを片手に周囲から俺目掛け飛びかかって来る。その隙間からそれより早く銃弾が。

 朧兎が銃弾を受け止める。


「伸びよ。満ちよ

 それは森の王の寵愛の如く

 穴を穿ち、餌と成せ

 唱、弐拾壱(にじゅういち) 壊ノ祓(かいのはらい) 骨千本槍」


 迫る海賊どもを纏めて串刺しに。

 白骨が突き刺さったその傷口から吹き出るのは血ではなく黒い瘴気。

 断末魔と、それを掻き消す怒号、銃声。

 それらを嘲笑うように一旦空へ。


「忘却に風は歌う

 待つ影

 一つ、二つ

 我が水の女神と共に

 唱、弐拾陸(にじゅうろく) 壊ノ祓(かいのはらい) 雨百景・零式(れいしき)


 広範囲に降り注ぐ氷雨。

 怯み、足を止めた奴を試作品で切り落としてく。


 亟禱きとう 鳳仙華(ほうせんか)


 背後に爆破を撒き散らしながら。


 気になるのは集団の奥で下品な笑いを浮かべながら足をテーブルに投げ出して余裕を見せつける黒髭。

 まあ良い。

 メインディッシュは最後。

 まずは雑魚をすべて蹴散らそう。


作者が映像化を諦めた瞬間w

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