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フーターズ

 現実に戻りやる事を思い出す。

 ショニンに払う紹介料を下ろさねば。


 そういう事で帰宅の前にコンビニに寄ろうとビルの1階から外へ。


「よう」


 サングラスにマスクの怪しい男に声を掛けられる。

 俺、かな?

 誰ともわからぬ相手に曖昧に会釈をする。


「あけおめ!」


 そうサングラスを外しながら言ったのは阿佐川だった。


「ああ、おめでとう」

「折角だから、メシでもくわね?」


 と言う阿佐川に連れられ赤坂見附方面へ。


「ここで良い?」

「ん、ああ」


 正直、何処でも良かったがAが選んだのはアメリカンな感じのハンバーガーショップ。


「来た事、ある?」

「無い」

「じゃ、ここにしようぜ」


 そう言いながら店内へと入って行くAに続く。

 中は、壁と言う壁から天井までオレンジ一色。

 どちらかと言うと酒を飲む為の店なのだろうと言うのはメニューを見てわかった。

 普通のハンバーガーセットもやや高い。


「いらっしゃいませ」


 鼻にかかった声のウエイトレスの姿を見て、メニューが高い理由が何となくわかった。

 壁と同じオレンジ色のホットパンツに、ピッチピチのタンクトップ。ざっくりと開いた胸からその谷間がはっきりと見える。


 それを見て、鼻の下を伸ばしながら笑みを噛み殺すA。


 BBQバーガーとチーズバーガーをそれぞれ頼む。


「……すげぇな」


 ウエイトレスが居なくなってから、Aが嬉しそうに感想を漏らす。


「何が?」


 俺の問いにAは自分の胸を両手で押して上げる仕草で答える。

 ハア、とわざとらしく溜息一つ返す。

 俺の式神の方が何倍も凄いんだがな。


「どう? 最近」

「ボチボチ。そっちは?」

「ランクAになったぜ!」


 やや大きめのボリュームで洋楽が流れる店内で、Aは小声で胸を張る。


「おめでとう。そう言や、オペレーション・ハルファスはどうなった?」

「無事、終了。

 いま、次の作戦の準備中だ」

「次?」


 そもそも、ハルファスは頓挫と言う話だったのでは無いか?

 ハナはどちらかに嘘を吐いている?


「次は、オペレーション・キマリス。

 ゆくゆくは、IDO公認のスクール立ち上げに繋がる作戦だ」


 キマリス。

 ゴエティア66番目の悪魔。

 人を兵士の姿へと変える能力があると言う。

 『悪魔の尖兵を作る作戦』……?

 レアー、いや、アメリカは何を企んで居る?


「それ、言って良かったのか?」

「ん、ああ」


 そう言いながらAが視線を逸らす。

 いや、ウエイトレスの後ろ姿を盗み見ただけか。


 しかし、どうにも怪しい。

 そんな情報を日雇いの期間工がホイホイと教えて良い訳は無いのだ。あるいは、そうする様に言い含められたか。例えば、ハナ辺りに。


「もし、お前がさ、そう言うスクールの教官になるとしたらまず何をする?」

「……場所の確保」

「場所?」

「安全に訓練が積める様な。

 簡単な敵が居るなら尚更良い」

「そんな事、出来るのか?」


 そう問うAに首を横に振る。


 行き先は指定出来ない。

 それがG Playなのだから。


 ……逆にそこをクリアにすれば……グッと生存率が上がるのでは無いか?

 突如、理不尽で荒唐無稽な世界に飛ばされるのでは無く、予め自分の選んだ舞台へ行く。

 ふと浮かんだそんな考えを遮る様に、ハンバーガーとポテトが載ったプレートをウエイトレスが運んで来る。

 やや背筋を伸ばし、顎を上げるA。

 上からタンクトップの中を覗こうとして居るのがバレバレだ。


 見ているこっちが恥ずかしい。

 だが、そう言う店なんだろうな。

 カウンターの向こうに立つ黒人店員はそんなAを見て、ピクリとも表情を変えない。


「お前の生徒は統計通りなら初回に三割は死ぬ訳だよ」


 ポテトにフォークを差しながらそうAに告げる。

 自分で言ってみてその状況の酷さがよく分かる。

 まあ、仮にそうなっても教育があるのでもう少しマシだとは思うが。


「……キチぃな。その半分でも」

「だろうな」

「だけどよォ、このままならその三割はずっと三割のままだぜ?」

「行かなきゃ良いんだよ」

「全然説得力ねぇよ」


 デカいハンバーガーにかぶりつきながら文句を言うA。

 ちょっとしたスリルと興奮。

 それを得る為に自分の命を掛け金にする。

 傍から見れば常軌を逸して居る。

 だけれど、その快楽は生き戻った奴にしかわからない。


 俺もそんな一人なのだろう。


 俺もAも、ウエイトレスの尻と胸を見に来た助平な客。そう見られて居る様に。


 ◆


 Aと別れ、その足でアンキラへ。

 これで、スタンプは残り48個!

 まあ、それが目的では無いのだけれど。


「では、紹介料」

「毎度!」

「あと、彫刻刀が欲しいんですけど、そんなのあります?」

「ああ、あるよ。三千円」


 高ぇな。


「じゃ、それも」

「はい、毎度」

「ついでにスタンプもサービスしてくれないすかね」

「それは出来ないなぁ。

 他のご主人様に不公平だからね」


 何の矜持なのだ?

 それは。

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