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ホテル・サキュバス③

「おお? ゼロの次は199になったぞ?」


 実姫が『13VFI99』の扉の前で首を傾げる。


「これは一じゃ無い。アイって読むんだ」

「一では無いか」

「まあ、見た目は殆ど一緒だけどな」

「ふむ……中はどうかの」


 扉を開け部屋の中へ入って行く実姫。


「中は変わらんのー」


 そして、嬉しそうにベッドの上で飛び跳ねる。


「本当、変わんねーな」


 溜息を吐きながらベッドに腰を下ろすと同時に一気に疲れが襲って来る……。


 ……実姫の跳ねた反動で下がりかけた瞼を開かせる。


「乗るなら子供の姿にしろって言っただろ」


 そう言いながらベッドから立ち上がり廊下へ……扉が閉まっている。

 開けっ放しにしたと思ったけれど。

 やっぱ疲れてるのかな。

 少し休んだ方が良いかも。

 ベッドもあるし。


「出ぬのか?」

「ん、ああ」


 実姫に促され廊下へ。

 ……変わった。『13VFI99』の部屋番号が『13DMJ55』へと。


「番号が変わっておるぞ?」

「ああ。もう一回入ろう」


 考えられる事はただ一つ。

 部屋に入り扉を閉める。

 そして、ベッドに腰を……急激に襲い来る眠気。

 それを振り払って立ち上がる。


 さて、どうなる?

 再び廊下へ。


 ……変わった。『13CMQ97』へと。

 つまり、このドアが転移装置となるにはあのベッドに腰を下ろす必要がある。

 ……それがわかったところで、なのだが。


「また変わったのう。これは何と読むのだ?」

「シーとキューだ」

「きゅう? 9か?」

「違う。読みが同じだけだ」

「一はアイで、キュウはきゅうか」


 そう言いながら口を尖らせる実姫。

 そして他の扉へと歩き出す。


「こっちはキュウの98。……キュウの99。……お!?

 9の次が12になったぞ?」


 は?


 彼女が首を傾げた扉には『13CMR00』。


「何で12なんだ?」

「これは12じゃろ? 1と2じゃ」


 そう言いながら『R』の文字を指差す。


「これは、アールって読むんだ」

「あーる?」


 12か。見えない事も無いかな……?


「難しいのう」


 そう言いながらその部屋へ。

 そしてベッドに横になる。


「頼知達はこんなふよふよの所で寝ておるのか」

「そこまでフヨフヨな所では無い」


 もっと固い。


「寝づらく無いのか?」


 ベッドの上をゴロゴロと転がる実姫。


「布団の方が良いか?」

「そうじゃのう……」


 そのベッドに腰を下ろす。

 ……イカンイカン。

 瞼が落ちそうになった。


「行くぞ」


 こんな狭いベッドで二人で寝ては駄目だ。


「うむ」


 廊下へ出て、再度部屋番号を確認。


 ……は?



「は、かのう?」

「は、かな?」


 部屋番号『13GID5は』。

 末尾、ひらがな?

 その隣は……『13GID5に』……『13GID5へ』……。


「この字は知っておるぞ!」

「だろうな」


 突然ひらがなが混じり出した。

 どうなってんだよ。これ。

 中、和室とかじゃ無いだろうな?

『13GID5と』の部屋を開ける。


 ……中は今までと変わらず。


「分かんね」


 ベッドに腰を下ろし呟く。

 あ、駄目駄目。

 すぐに腰を上げ、椅子に座りなおす。


「13はずっと変わらんのう」

「そうだな」


 ベッドでゴロゴロしながら実姫が言う。


「何で13なんじゃ?」

「13階だからだろう」

「13階? そんなに高いのか?」


 椅子の背もたれにより掛かりながらカーテンを開ける。

 相変わらず窓の外は真っ暗闇。

 いっそ、この窓ガラスをぶち破ってみるか?


 いや、破壊は正解ではない。

 今までそんな状況は無かった。


 なら、この部屋番号に脱出のヒントがある筈。

 何かの暗号?


 脱出……Exit、Escape……Breakもか。

 七桁の部屋番号……13から始まる……。

 13……13日の金曜日……13番目のアルファベットはM、もしくは1と3ならAC……。トランプならKキング

 いや、1ではなくIアイか?

 I3……いいい……アイアイアイ……アイサン……無いな。

 13……12の次の数。12……星座、だとすると13は蛇使い。干支は無い。

 12……12……12……R……なわけは無いか。

 そんな風に言っていた実姫に声を掛け部屋から出る。

 あのまま本当に寝てしまいそうだ。


 部屋から出るとまた変わっていた。


 向かいの部屋は『13BRK1く』。


 一体何部屋あるんだろうか。

 そもそもひらがなが混じったんだから記号が混じってもおかしくないか。


「これは、何じゃ?

 ケー、ケーか?」


 俺がぼけっと部屋番号を眺める横から実姫が口を挟む。


「ケー、1、く、だろ。

 最後のは文字で二つ分だ」

「わかりにくいのう」


 実姫が眉間に皺を寄せながら首を傾げる。


 まあ、わかりにくいかな。

 見ようによっては、1とくでKに見えないことも無い。

 多分、フォントが悪いのだろうが……。


 …………あれ?


「実姫、俺がベッドで寝そうになったら叩き起こせ!」


 叫びながら、目の前のドアを開ける。

 正解かどうかはわからないけれど、一つ試して見たい事が出来た!


 ◆


 何度かベッドで睡魔の餌食になりそうな所を手加減を知らない式神に助けられ、たどり着いた『13REA1く』の部屋。


 まあ、これで駄目なら大人くしベッドでふて寝しよう。巨乳を枕にして。


 そう思いながら、ドアノブに手を掛け扉を開く。


 他の部屋と変わらぬ室内。

 だか、そのベッドの脇に門が鎮座しているのを見た俺はドアノブから手を離し腰ダメにガッツポーズ。

 叫びたい程に嬉しかった。

 出口が見つかった事に。

 それよりも、自分の推理が当たったことに!


 ◆


 13。

 最初の二文字。それが罠なのでは無いか?

 これは一文字なのだ。つまり、B。

 そして脱出を表す単語、BREAK。

 最初がBならば、続く三文字はそのままで良い。

 そして、最後のK。部屋の扉にかかったプレートは残り二文字。

 それでKを作れば良い。『I』と『く』でKになる。


 それを探せば……。


 そう信じながら俺は『13REA1く』の部屋を探し、そして、その中にある門を見て自分の考えが正しかった事を知る。


「おお……」


 中を見て感嘆の声を漏らした実姫の頭を撫でる。


「へへへへへ! 凄いだろ!」

「やめんか!」


 頭をぐしゃぐしゃにされた実姫が心底迷惑そうに俺の手を振り払う。


「ハッハッハ! 真実はいつも一つ!」


 そしてその真実に俺はたどり着いた!


「やめろと言っておるじゃろ!」

「グフッ……おま……」


 頭をボサボサにされた助手の怒りの鉄拳が鳩尾に食い込む。


 イカンイカン。

 見た目は大人、頭脳は子供の式神に眠りの小五郎にされる所だった。


「もう少し、主人を丁寧に扱え……」


 椅子に座り、痛みが引くのを待つ。

 乱暴ではあっても、脱出のヒントをくれた実姫にチョコバーを一つ渡し。


 今回は偶然に近い発見で出口へとたどり着いたがこの先はどうだろう。

 いざという時の為に備えはあった方が良いのだけれど何か方法はあるだろうか……。



ホテル・サキュバス

一度ベッドに入れば二度と目覚める事のない淫靡な夢へと誘う

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