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ホテル・サキュバス②

「よく飽きないな……」


 部屋番号はONZを過ぎONYの半ばまで差しかかった。

 部屋の中を逐一見ることは諦め、扉を開けざっと中をチェックする程度になってきて、それすら意味があるのか疑問に思えてきた。


 相変わらずベッドの上で跳ね回る実姫に声をかけ、俺もそのベッドへ腰を下ろす。

 小休止。しかし、このままこれを続けていてもどうしようもないな……。


 背後で飛び跳ねる実姫。

 定期的な揺れが疲れた体と精神に……不味い。

 このまま座っていては眠ってしまう。


「行くぞ」


 重い腰を上げ、実姫に声をかける。


「おーう!」


 実姫が元気よくベッドから飛び降りる。

 そして、俺はドアレバーに手をかけ……あれ? ドア、閉めたっけ?

 一瞬頭に浮かんだ疑問。


 そして、廊下に出て眉を顰める事態となる。

 見える範囲の扉が全て閉まっていた。

 この部屋に入る前に確認した部屋は、全て開けっ放しにしていたはず……。


 なぜ……?


 斜向かいの部屋。

 ここに入る直前に俺が調べた部屋のドアの前に。

 そして、部屋番号を見て絶句。


『13VFL05』


 VFL……?

 さっきまでONYだった筈。

 急に……飛んだ。


「どうしたのだ? ボケッとして」

「ちょっと、出ろ」


 急ぎ実姫を部屋から出して、その部屋番号を確認。

 『13VFL04』。入った時は『13ONY64』だったのだ。


 再びドアを開け中を確認。


「ちょっとここで扉が閉まらない様に押さえてくれ」


 そのドアの側に実姫を立たせ慎重に中へ。

 先程まで居た部屋と全く同じ部屋。

 でも、違う。

 実姫がぴょんぴょんと飛び跳ねていたベッドにその痕跡が無く、シーツはピシッとしたまま。


 ……転移?


「実姫ドアを閉めてくれ」

「おう」


 パタンとドアが閉まる

 そして、椅子を動かしてテーブルの上に乗せる。


「一回出よう」

「何をしておるのだ?」

「確かめているんだ」


 廊下へ出て扉を閉める。

 そして、部屋番号を確認。『13VFL04』。変わって居ない。

 扉を開け、中を確認。

 テーブルの上に置かれた椅子。

 つまり、さっきの部屋。


 どうしてあの時だけ転移した?

 時間か?


「他の部屋も確かめよう」


 部屋番号を確認して、中へ。

 扉を閉め、再び外へ。

 だが、同じ様な部屋で何度繰り返ししても転移は起きず。


 部屋番号はFKへと変わった。


 相変わらず実姫がベッドをトランポリン代わりにする横で椅子に座り考える。


 何か、部屋の様子で変わった事はあっただろうか。

 必死に記憶を探るが思い当たる事は無い。


「次、行くぞ」

「おう」


 部屋から出て次の扉へ。


「さっきから何を真剣に見ているのだ?」


 扉の前で部屋番号を脳裏に刻み込む俺に実姫が問う。


「この部屋の番号だ」

「ほう?」


 見上げるが、ガキの身長では届かない。


オン


 姿を変え、再び扉へ掛かったプレートへ顔を近づける実姫。


「……何じゃ? これは」

「何って……」


 文字だろ。

 そう答えようと思い、英数字の文字列を実姫が理解出来ない理由に思い至る。

 知らないのだ。

 彼女はこれを初めて見るのだろう。


「この部屋の番号が書いてある」

「ほう?」

「最初が、いち、次がさん。二つで、じゅうさん」


 一文字ずつ指差しながら教える。


「じゅうさん。数か」

「そうだ」


 賢い生徒だな。


「その次がブイ、エフ、そしてケイ。

 これだけでは意味は無い」

「意味は無い?」

「記号みたいなものだ」

「ふむ?」

「で、この横がキュウ、サン」

「きゅうじゅうさんか」

「そうそう」


 飲み込みが早い。


「で、見ればわかると思うが全部違う番号になっている。

 あっちが、92。その向こうが91」


 俺が指差した扉を確認しに行く実姫。


「本当じゃ。

 これが2か?」

「そう」

「ほー。

 中は同じなのになんで全部番号が違うんじゃ?」

「ここの部屋を借りる人が自分の部屋を間違えない様にだろ」

「なるほどのう。御織札の様な物か」

「そうだな」

「ここの扉、全部に違う番号が有るのか!」


 実姫が嬉しそうに走り出す。

 扉も開けずにただ番号を確認する為だけに。


 どうせどの部屋も中は全部同じだろう。


 どうやって帰ろうか考えながら実姫を追いかける。

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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