表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/308

部長と新入部員④

 溜池山王に行く以外に都心へ来るのは久しぶりだな。

 若者で溢れる表参道の駅前でそんな事を考える。


 浮いてるだろうか。

 そこそこ小綺麗な格好はして来たつもりだ。

 俺より余程奇抜な服の連中は山程居る。

 しかし、そちらの方がより街に馴染んで見えるのはどうしてだろう。


「待った?」

「あ、いえ」


 ぼーっとして居た訳では無いが、声をかけられるまで気付かなかった。

 ニット帽にダッフルコート。

 普段はかけて居ないメガネ姿の部長。


「じゃ、50センチ離れて付いて来て」


 何だ?

 その細かい注文は。


「どこ行くんですか?」

「すぐそこ」


 そう言って部長は表参道を歩いて行く。

 その後ろを50センチ離れて付いて行く。


 地下鉄表参道駅の入り口が見えた辺りで路地へ入る。

 その先に女子の行列。

 その最後尾に部長が並ぶ。


 ……え?


「パンケーキ。好き?」

「嫌いでは無いですけど……」

「じゃ並んで」

「え……」


 部長の目当てと思われる店はビルの二階。

 そこから階段を下り、更に外まで列が伸びている。


「どれくらい待つんですか?」

「二時間くらい」


 まじか……。


「えっと……」


 どうしよう。

 寒空の下、そんなに待ってまでパンケーキを食べたく無いのだけれど。


 スマホが震える。


 ────────────────


 古川静>お願い。お一人様はつらたん


 ────────────────


 行列を成しているのは女子のグループやカップルばかり。


「パンケーキ、好きなんですか?」


 問いかけに頷く部長。

 俺は彼女の横で二時間待つ事を決める。

 長いなぁ……。


 ────────────────


 御楯頼知>待ちます

 古川静>ありがと


 ────────────────


 何でスマホで会話してんだろ。

 隣に居るのに。


 ────────────────


 古川静>レアーの話よね?

 御楯頼知>ハナさんにも聞きました

 御楯頼知>部室では失礼なカマかけしてすいません


 ────────────────


 昨日、車の中でハナにも確認した。

 部長はレアーの調査員だと隠す事なく言った


 ────────────────


 古川静>嫌いじゃない

 御楯頼知>は?

 古川静>謎めいたやりとり


 ────────────────


 そっすか。

 そういやSF研。

 いや、それはどちらかと言うとミステリーの領分か?


 ────────────────


 御楯頼知>部長も実験に参加してたんですよね?

 古川静>参加と言うか監視

 御楯頼知>詳しく聞いても良いですか?

 古川静>詳しくも何も

 古川静>私は見てただけ

 古川静>Msハナから聞いてない?

 御楯頼知>曰く

 御楯頼知>そういったスパイみたいなやり口は感心しない

 御楯頼知>聞きたいなら直接聞きなさい

 御楯頼知>と

 古川静>www

 古川静>三人の行う実験を気付かれないように観察しその様子を報告する

 古川静>それが私の役目


 ────────────────


 ふむ。

 あの三人、信用されてないのかな。


 ────────────────


 古川静>三人は同じ場所に転移し、目立った問題も起こさずに現実へと帰還した

 古川静>そんな実験が幾度となく繰り返された

 古川静>以上

 御楯頼知>部長は見てただけなんですか?

 古川静>観察。それが私の役目

 御楯頼知>いつもそんな事してるんですか?

 古川静>いつも、とは?

 御楯頼知>監視役の事です

 古川静>こういった実験は初めて

 古川静>当然、レアーから指令を受けたのも

 御楯頼知>なるほど

 御楯頼知>三人はこの事を知ってるんですか?

 古川静>知らない

 古川静>気づかれるようなヘマはしない

 御楯頼知>すいません。今更ですが、ランクいくつです?

 御楯頼知>IDOの

 古川静>B

 御楯頼知>有名人ですか?

 古川静>当ててみて


 ────────────────


 え?

 思わず部長の方へ目を向けるが、ニット帽はピクリともしない。


 ────────────────


 御楯頼知>会ったことあります?

 御楯頼知>向こうで

 古川静>ある


 ────────────────


 えぇ。

 全然記憶に無いぞ。


 ────────────────


 古川静>話したこともある


 ────────────────


 ええぇぇ。

 全っ然、記憶に無いぞ。


 ────────────────


 御楯頼知>すいません

 御楯頼知>わからないです

 御楯頼知>ヒントください

 古川静>地下鉄

 古川静>鉄骨渡り

 古川静>お姫様抱っこ


 ────────────────


「え!?」


 思わず声が出た。

 だが、部長は微動だにしない。


 ────────────────


 古川静>わかった?

 御楯頼知>クドー?

 古川静>ご明答


 ────────────────


 地下鉄の中で会ったガスマスクの兵士、インビジブル・ストーカー!

 待て。

 お姫様抱っこはしていない!


 ────────────────


 御楯頼知>有名人じゃないすか

 古川静>二人には秘密

 御楯頼知>ああ、了解です

 御楯頼知>ついでに聞いていいすか?

 御楯頼知>部長の武器、サイレンサーとかついてんすか?

 古川静>秘密

 御楯頼知>実弾ですか?

 古川静>秘密


 ────────────────


 能力は明かさないか。


 ────────────────


 古川静>今度は私から

 古川静>君の瞳は何か意味があるの?

 御楯頼知>秘密です

 古川静>どうやって空を飛ぶの?

 御楯頼知>飛んでるんじゃないです

 御楯頼知>走ってるんです

 古川静>どうやって?

 御楯頼知>根性

 古川静>そんなキャラ?

 御楯頼知>根性大事


 ────────────────


 そんなキャラでは無いか。


 ゆるゆると進み行く列の中でそんな会話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on 新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
https://ncode.syosetu.com/n3012fy/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ