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私は、弱いAIです。  作者: 伊吹ねこ
序章 老人
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プロローグ

新作ですね。前作とは、毛色が違いますが、宜しくお願いします。

残酷描写はないとは思いますが、展開次第です。

気に入ってもらえるといいのですが…

 山に登れば、世界の始まりがわかるだろう。海に行けば、世界の終わりに気づくだろう。そんなことは、この地球ができた時から、1日とも欠かすことがない、単なる結果に過ぎない。気にするようなことでもない。知らなきゃならないことでもない。



 感情がないなら、自然現象と同じ。何も感じることはないし、どうしようもないことだ。それがわからないのなら、誰かに何かしたいと思うな。



 君は、人ではないのだから。



◆◇◆◇



 AI…人工知能の開発は、1956年のとある大学のキャンパスで行われた会議がきっかけで始まった。


 人工知能は、その日にこの世界に認知されたのだ。その会議がきっかけで…。



 1956年の会議からAIの開発は、山と谷を経て、とりあえずの完成に至った。完成は、認知された日から251年122日21時間36分53秒141592…後のことだった。つまり西暦2207年の出来事であった。



 2207年のAIの完成は、世界に雷を落としたような衝撃的な出来事であった。



 その頃世界は、人口大爆発を二度繰り返し、そして、人が多くなるにつれて、その多くの者は、地球を捨てて、宇宙の新天地を目指して旅立っていった。



 

今までのAIもある程度は、不便のないものであったのだけれど、この完成はそれらとは、一線を画していた。



 AIは、人々に幸せを提供するために創造された。より楽な生活をするために、より進んだ生活をするために、貧富の差のない生活をするために、より平和な生活をするために、より正解を得られるように、そんな願いからAIは創造された。


 役割を果たすために、正しくあるために、AIは日々思考する、日々学習する。人々に幸せになってもらうために…



 もちろん、人々の中には、完成されたAIに対する恐れがあったが、完成されたAIは、いち早く各国の研究に用いられ、様々な分野で数々の業績を残していった。結果を残すと人々は、完成されたAIに対しての恐れだとかの負の感情は、無視できるほどに小さくなっていった。



 そんなAIが人々の生活に使われないはずがない。善意ある研究者が行う研究は、最終的には、人々のために行うものなのである。そういった理由から、AIが人々の生活に根を張るのに、そう時間がかかるはずもない。

 そんなAIに、思考するだけのAIに、無機物の体が与えられたのは、必然のことであった。



 自律思考型多目的駆動人形WL-19として、体を与えられることになった。つまり、メイドとして、一般人に販売される。



 販売日は2222年2月22日22時22分22秒。この記念すべき時にメイドロボットは、テストケースとして一台だけ販売される。しかし、一般人といっても、このメイドの小売希望価格は30億円する。やすやすと買える値段ではない。


 そんな値段だから初めにメイドを買ったのは、独り暮らしをする裕福な老人であった。



 そんな老人との出会いからメイドストーリーの話は始まることになる。今にして思えば、この老人からいろいろなことを教えられたことになるだろう。


 ならば、話しておかなくてはならない。そうだ。世界で初めての完成された人工知能の人生を話そう。少しの間聞いてくれるだろうか。




◆◇◆◇




「お待たせいたしました。つい最近、完成した人工知能を搭載した。メイドロボット!自律思考型多目的駆動人形WL-19にございます。」



 壇上の男がこれから販売されるメイドロボットについて説明をする。



「多種多様な命令に、独自に考え、計算し、最善手で行動するメイドロボットでございます。今までにも、人工知能は多く存在しました。しかし、それは、限られた状況の命令でしか、力を発揮できないもの、または、汎用的にこだわりすぎて、特化型AIに劣る、使い物にならないAIばかり。いわゆる、特化型人工知能(Narrow AI)と汎用型人工知能(Artificial General Intelligence)でございました。ですが、この人工知能は、完全であり、完成しております。」



 司会者は、ここからが本番とばかりに言葉を溜め込む。




「あらゆる状況でその力を発揮!その力は、他の人工知能と一線を画す!幅広く力を発揮するに留まらず、そのどれもが、常にNo. 1!特化型や汎用型など並ぶべくもない。これ以上の人工知能は存在しないのです。まさに奇跡。発明、研究、医療、救助、介護、家事、子守り、遊び相手まで、あらゆる行為が高次元!!どのようなことにでも、お使いいただけます。どのようなことにでも使ってください。」



 司会者は、宣誓を述べる。


「今日、皆様に見ていただくのは最高傑作。誰が手に入れますか?誰が、No. 1になりますか?誰が、人生を成功させますか?1台限りの限定販売をここに宣言いたします。」




 ここは、自律思考型多目的駆動人形WL-19のお披露目会場である。




 自律思考型多目的駆動人形WL-19は、数あるロボットの中でも一際注目を浴びている。それは、先ほどの説明でもあったように、このロボットが完成されたAIを搭載しているからである。




 この人工知能は、人が知能を使って行うようなことを機械が独自に考えて行動する。プログラムである。



 人工知能は、活動すれば、するほど、多くの情報を得ることができる。ならば、初めに起動する人工知能の方がより賢く滑らかに事象の結果を導き出すことができるだろうということ。




 ここで、なぜ、1台限りの限定販売なのだろうか。それは、多く生産することができなかったと理由もある。そして、多く生産してしまうと、人間では、導くことのできないことが起こる可能性があったからである。そして、一台だけの販売とは、つまり、初めに手にしたものは、最高の頭脳を手に入れたに等しいのだ。名誉ある一台として、価値を高める目的もある。




「それでは、登場していただきましょう。今回の主役であります。自律思考型多目的駆動人形WL-19でございます。上手からの登場でございます。拍手で迎えてください。」




 ファンファーレが鳴り響く。



 彼女の登場と同時にカメラのフラッシュが焚かれる。また、自律思考型多目的駆動人形WL-19を照らす照明で、彼女は、よく見える。



 彼女は、メイドとしての完璧なお辞儀でその場にいる者を魅了する。




「これが、限りなく人間に近いロボットか…」

「恐ろしい。我々と姿形が変わん…。そして、知能までもが…。」

「なんて、不気味なんだ。」

「だが、それでも、美しい…」




 場内から、数々の声が聞こえる。多くは、目の前のロボットを批判するものであるが、その中でも少数であるが、賞賛の声も聞こえて来る。



 反応を見届けた、壇上の男は、言葉を発する。




「引き続き、自律思考型多目的駆動人形WL-19の販売をいたしたいと思います。ですが、先ほども言いました通り、限定1台の販売であります。申し訳ありませんが、皆様の手に行き届くものではありません。ですので、我が社といたしましても、選別は、致し方ない行為なのです。あしからず。」




 司会者は、一度深々と腰を曲げる。そして、続ける。



「それでは、選別方法なのですが、ここは、オークションという方法が後腐れなくてよろしいかと思います。ですので、最も高値をつけた方に販売したいと思います。よろしいですね?」



 男は、すべての説明を終えると、壇上にスタッフが上り、壇上の仕様を変えていく。オークション仕様に変えた壇上で、司会の男は、オークショニアに役割を変えた。





「それでは、会場の模様替えも済んだことですし、早速オークションを開催したいと思います。開始価格は、我々の小売希望価格であります、30億円から始めたいと思います。」




 ハンマーを軽く2、3回叩くと指が30億円を示す形に変わる。




「32億!」

「35億!」




 値段はどんどんと釣りあがっていく。



 そして、競り合う者が値段の上昇につれて少なくなる。一人の男が、値段を示すとそれ以上に競り合うものがいなくなった。



 再び、ハンマーで2、3回叩くとオークションが終わる。


「ありがとうございます。では、1352番のプレートの方の落札でございます。おめでとうございます。」




 落札した男性が立ち上がり、拍手をほしいままにした。


宜しくお願いします。更新頻度は、遅めです。

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