あれやこれやで
もうすぐ終わります。
にゃあもは怒っていた。
エリザベートを乱暴に扱ったちんまいのにも、それを命じたデューイにも、エリザベートの前に立ち塞がったご主人から
あれやこれと理由をつけて武器を持たせなかったここにいるすべてに
怒っていた。
「大丈夫だ、にゃあも」
赤い赤い水がご主人から垂れていく
それは血だけれど、水のように川のように流れていく
にゃあもはポケットに
嫌な予感で髭がむずむずしたから気づかれないようにご主人でさえ気づかれないようにポケットそっと入った。
「なんだバカ猫が」
取り囲まれるご主人より小さい怖くもないやつらがご主人に触れようとしても、にゃあもは引っ掻いたし体がむくむくして
いつもより大きくなりながらご主人を守った。
エリザベートのお父さんとデューイのお父さんが話があると違う部屋に連れていかれて
そしたらデューイ達が押し入ってきて
エリザベートに訳の分からないことを言って害そうとして
ご主人が刺された。
「エリザベート、お前のせいだ」
デューイは相も変わらずいけすかないし、エリザベートもご主人に駆け寄ってなにかを話しかけている。
血の嫌な匂いがした。
「エリザベート、お前のせいで、俺は王になれない、と」
「デューイ皇子・・」
「お前が何かしたんだろう?!王になるのは弟だ、と父がご乱心なさったのだ。お前が何かしたに違いない」
「私はなにもしておりません。」
嫌なねちっこい声がする。
ご主人、ご主人
急いでご主人のためにまほうをつかわなきゃ
バカなやつらなんてどうでもいい
「皇子は公爵家のことをなにもご存じないのですね」
「なんだと?!」
「私、エリザベートとデューイ皇子は本来ならば婚約関係は結ばれないものです。」
「婚約は破棄されたはずだが」
周りがうるさい
エリザベートがデューイに詰め寄ったからかご主人の周りには人がいない
ご主人、ご主人今助けるからね
ご主人、
「元来公爵家は初代国王様のそのご兄弟であらせられる方が不正なく良き王の導き手あれ、と興したもの。王家無くして公爵家はあらず、公爵家無くして王家あらず、と法にも書いておられる」
「・・・それが?」
「公爵家に産まれたものは本来王家に嫁ぐことはあり得ず、と、婚約する時の書面にも書いたはずです」
「ならば変わらないじゃないか!今とも」
「・・・デューイ皇子は覚えてらっしゃらないようですからご説明させていただきますが、この契約は本来王家からのデューイ皇子からの提案であります」
「はっ、見え透いた嘘を」
「デューイ皇子に嫁ぐ場合、私は王家となり公爵家は忠臣の担い手を他の家に移す、この制約は公爵家にしか破棄できないものとし、今までの忠臣としての報いとして褒美をとらせるかたちでの公爵家の自治が認められるものとすると制約にかいてあるのをご存じですか?」
「はっ?」
「また、死別や、王家からの万が一の契約の破棄があった場合、完全な自治を認める、というものについては?またそれはデューイ皇子もそれを認めたため、デューイ皇子の持つべくものとなるものを賠償として認める。という一文をデューイ様自ら署名されたと思いますが」
「嘘をつけ!大体まだ八つの頃だろう!私は真実の愛に目覚め」
「デューイ様は真実の愛とやらに、覚えてる限りでは五つのころ、八つの頃に出会われているはずですが」
「・・なにを」
「五つの頃までは確か侯爵家のメリー様と真実の愛とやらに目覚め婚約者が変わられ、八つの時には私と、元々の婚約者のかたは確か生まれる前からベルーガ様だったと記憶しております。つまり真実の愛とやらは三度目ですね」
「ぷぷっ、」
ご主人、ご主人、
少し顔色が和らいだように見える
後方がなにやらざわざわうるさいけど
ご主人の汗をぺろぺろ舐めるとご主人は柔らかく笑って頭を撫でてくれた。
「ありがとうにゃあも」
「にゃあ」
「つまり、真実の愛とやらによく出会うデューイ様に諦めさせるために父はそのように誓約書を書かせた、また、国王様も何度も念を押したと記憶しております。」
「だからってなんで、私が王になれぬ」
「現国王陛下と我が忠臣たる父が皇子には不要と判断されたのでしょう」
ご主人ご主人
もう帰ろうよ、休まなきゃダメだよ
「にゃあんみゃあ、にゃあ」
「よしよし」
違うって、ご主人とエリザベートもう帰ろうよ、こんなうるさいところじゃダメだよ
休もうよ
「そこの護衛!猫を連れて外に出ろ!うるさくてかなわん!」
「シャー」
うるさい、馬鹿たち!
「これこれ、何をしておる」
「国王陛下(父上!)」
ゆったりと入ってきたお髭を蓄えたへいか、とやらはこちらにむかって心配そうに目を向けると少し笑った
後ろにいるエリザベートのお父さんはこちらを見るとまた怒ったように震えてるけど。
「父上、なぜ私が継承権を剥奪などと」
「デューイ、我が息子であったはずのデューイよ、昨日話した通り我は継承権剥奪と親子とは認めぬ、と説明したはずだが」
「なっ、なにを」
「桜とやらと添い遂げるのはそなたの自由だ。もう何処へたりとも行きなさい。我が国にはまだ公爵が必要だ」
なんかにゃあも寒い
へいかからなんか寒い何かが出てるような気がする。
「私よりも公爵をとると」
「そのように申したはずだが」
「な、なぜ」
「それが分からぬから今になっておる、誰かこやつを城の外へ。」
「やめろ!わたしは皇子だ!父うえ!」
なんかご主人くらいにでっかいのがいっぱい来てデューイを連れてっちゃった。