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バナナ

作者: やなぎ好

 スーパーの中は人がまばらにいるだけでだった。こうも雨の日が続いていると、外出するのも億劫になるのだろう。部屋の冷蔵庫に何も入ってなかった事に少しの焦りが生じ、特に何も考えず10分かけてここまで来た。靴下が雨でぐっしょり濡れている。帰りたくなってきた。


 適当にカートを押しながら、適当に商品を入れていく。あまり、カップ麺だの冷凍などに頼ってはいけないという気持ちはあったのだが、ここ最近はそんな余裕もなくなってきた。ある程度カートが埋まったところでレジに行く。たんまり物が入ったビニール袋両手に、不器用に傘を扱いながら、家に帰った。


 ただいま、と声には出すが誰もいない。もの悲しい1人暮らしの生活には、もう慣れてきたつもりだったが、それが悲しかった。最近わざとらしいため息も出ない。


 ビニール袋を片付け、冷蔵庫の中もある程度賑やかになったとき、キッチンの上にバナナが置いてあることに気付いた。というより、さっき自分で買ってきたこのバナナを、無意識で買ってきたことに気付いたのだ。我ながら首を傾げる。ふと、思い出したことがあった。そういえば、実家にはいつもバナナが置いてあったのだ。いつも食べていたわけじゃない、好きというわけでもない。なのに、なぜかそれはここにあった。なんとなしにレシートを見てみる。確かに自分でさっき買ったものだった。


 ホームシックにかかっているわけではない、親に特別会いたくなったわけでもない。なのに、慣れた悲しみとは違う感情で、鼻がつんときた。自分の周りの習慣や、環境に、無意識でも影響は受けるんだなと、そんなことを考え始めた頃には、さっきまでの雨はやみ、しかし夕陽は身を沈めた後であり、時計はもう夜を指していた。

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