擬音語はむずかしい
ずいぶんと御無沙汰になってしまいました。申し訳ない。
さて、今回はテーマは擬音語・擬態語、いわゆるオノマトペです。
正直に申しますと、『ぼくらの、「新世界」を創ろう』を書き始めた頃は擬音語を使うのを避けていました。
何故なら、擬音語を多用すると文章が子どもっぽい印象なるからです。
「キーン清んだ音を上げて2本の剣がぶつかった」とか、「勢いに任せてゴロゴロと坂を転がった」とか、性に合わないですし。
ただ、中盤くらいで考え方が少し変わったんです。
その頃、作中で説明的な文章が多くなり、修飾語まみれの長文が増えたように感じていました。
正直、読みずらい。
そこで、字数を減らして、直感的に読ませる文章にするための解決策として、擬音語を解禁することを決めました。
それで本題はここからです。
私が何を間違えたかというと、擬音語の表し方の性質を勘違いしていたのです。
擬音語=直感的表現ということは、感覚的に理解できる、より現実的な書き方をしなければいけないと思ってしまったんですね。
例えば、第41話で主人公のユウ君がヒロインのシェンズに頬を叩かれるシーン。
普通なら、「バシ」とか「パチン」なんていう擬音語が使われますよね。
私が選択した擬音語は「バツッ」でした。
「バシッ」ではなく「バツッ」
手の平と頬がぶつかり合う「B」の音と、膚が擦れあう「T」の音、合わせて「バツッ」です。
そして、馬鹿げた事に、この音に落ち着くまでに、私は何回も自分の頬をビンタしています。
あの時は、痛かったなあ。
実体験は大事ですが、ほどほどに。
イマジネーションを利用しましょう。
閑話休題
今にして思えば、急に「バツッ」という文字が出てきて、読む方は困ったのではないかと思います。
何を表現したかわからない、見慣れない表現が説明なしで出てきたわけですから。
読みやすくするための擬音語が、逆にわかりにくい表現になってしまっている。
ここが問題のなのです。
結局、擬音語というのは“お約束”の表現で、「カーン」「キーン」と来たら金属がぶつかった音、「ゴロゴロ」と来たら転がる音か、雷鳴、「ブラン、ブラン」と来たら揺れる音と相場が決まっているのです。
そして、皆それを知っている。
だから、考えなくても瞬間的に情景を理解できる。
私がやるべきだったのは現実の音を追求する事ではなかった。
読者の共通認識に働きかける適切な定番の表現を選ぶ事だったのです。
今回のやらかしたは、読者に伝わらない擬音語を作ってしまった事でした。
常套句・お約束は長い歴史の中で培われた優秀な表現です。
安っぽくならない程度に、じゃんじゃん使いましょう。
とか書きつつ、今書いている作品でも、人間に噛み付いた時の感触がわからず、自分の腕を噛んでみたりしています。
懲りませんね、この男。