僕はゴールの無い迷路に迷い込んだかもしれない
一言で言えば僕はありふれた中2で、中二病だった。
好きでもない不味いコーヒーを無理やり美味しそうに飲んでみたり、アニメから影響を受けて、右手にダークパワーが宿る事に憧れていたりと、とにかくただの中二病だった。
今日、僕は住んでいる人口8万人の街、日進市を飛び出し、中京圏のアニメ好きな人が集う大須に訪れていた。
大須は中古ゲームの店やアニメグッズのお店が集まっていて俺に至福の時を感じさせてくれる、言わば俺にとっての聖域だ。
いつもの僕なら太い通り沿いに並ぶお店に入って終わりなのだが、今日の僕は一味違う。
今日の僕は、まだ到達していない未知のお店を求めていた。
だから、いつもは入らないような怪しげな裏路地に入ってみる。
本当に面白いお店と言うのはこう言う目立たない場所にあるものなのだ。
裏路地に入ってしばらくしてから僕は違和感に気がついた。
お店が一軒も無いのだ。
大須は住宅街と商店街が混同してるから場所によってはお店が無くても不思議では無い。
しかし、ここは道路が石畳で、道路の幅はいつの間にか自転車がすれ違うのがやっとという狭さになっていて、しかも建築物は洋風のものばかりだ。
大須にこんな石畳で、欧米風の家が立ち並ぶ場所なんてあっただろうか?
もしかして道に迷った?
僕は冷静になってスマホの地図アプリで現在位置を見てみる。
地図アプリは僕のいる場所を「交わりの場所」と表示した。
住所は「愛ビギ名-3E3g」と文字化けして表示されない。
次の瞬間「アプリに問題が発生しました。もう一度アプリを再起動してください。」とメッセージが出てきて、強制的にアプリが閉じられた。
一体何がどうなっているんだ、現代社会においてスマホが全く役に立たないなんて。僕は思わず舌打ちをする。
さらに次の瞬間、電波が切れた。
こんな名古屋の街のど真ん中で電波が切れるなんておかしい。僕は携帯が壊れたんだと自分を納得させ仕方なく来た道を戻ることにした。