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玉響(たまゆら)の群像  作者: 唐橋遠海
第四章 戻れぬ橋
144/161

五十二 御守国御山・八雲 闇の現(うつつ)

「かくして、かくして!」

 澄んだ高い声が響いたと思う間もなく、何かがうしろから八雲(やくも)にぶつかってきた。見下ろせば、蓮水宮(れんすいぐう)でいちばん幼い五歳の若巫女(わかみこ)胡桃(くるみ)が膝のあたりにまとわりついている。

「胡桃さま」八雲は驚き、彼女の前にしゃがみ込んだ。「奥の院で何をなさっているんです」

 若巫女や若巫子(わかふし)の主たる生活の場は北の院であり、祭主(さいしゅ)に呼ばれるか特別な用でもないかぎり、普通は主殿の奥の院に来ることはない。

 長い廊下の端から端まで見渡したが、彼女を追ってくる人の姿はどこにもなかった。

「おひとりで来られたのですか」

 彼の問いかけに、胡桃はこくりとうなずいた。

「お世話役の小祭宜(しょうさいぎ)は?」

 少女がちょっと(ずる)そうな目になり、にんまり口角を上げる。

鶴見(つるみ)とかくれんぼなの」

 ああ、気の毒に――と八雲は心の中で思った。きっと鶴見祭宜は自分が隠れん坊の鬼に見立てられていることなど知りもせず、見失ってしまった若巫女を今ごろ必死に捜し回っているだろう。

「遊ぶのはいいけど、勝手に奥の院へいらしては駄目ですよ。いつもそう言われているでしょう」

「しぃらない」

 胡桃はとぼけて見せると、小走りに八雲の背後へ回り込み、法衣の背中にぎゅっとしがみついた。

「ここにかくして。ね?」

 可愛らしいお願いを聞いてやりたくはあるが、鶴見が見つけに来るまで衝立(ついたて)役を務めている暇はさすがにない。

「代わりに、()んぶしましょう」

 背に取りつかせたまま、うしろに回した手で体を支えてやって立ち上がると、彼女は楽しげな笑い声を上げた。五歳の子は背負うにはもう大きいが、重さは四貫半程度なので大したことはない。

「じゃあ、行きますよ」

 歩き出すと、胡桃が彼の肩に顎を載せながら訊いた。

「どこいくの」

「鶴見祭宜を捜しに行くんです。八雲と競争しましょう。先に見つけたほうが勝ちですからね」

 とたんに彼女は隠れる側から、隠れん坊の鬼へと変貌した。小さい子の遊び方というのは、決まりなどあってないようなものだ。

「たつなみの間にいって」

 鶴見の居場所に心当たりがあるらしく、自信ありげに注文をつける。

「どこでしたっけ」

「あっち」

 案内されるままに、八雲は奥の院を出て屋根つきの長い渡り廊下を通り、北の院に通じる大きな扉をくぐった。殿舎の入り口を守る立哨(りっしょう)宮士(ぐうし)に訝しげな視線を向けられた気がするが、それについては深く考えないでおこう。

 北の院は大きく三つの区画に分かれており、殿舎付きの奉職者が住む西側の長屋と、若巫女と若巫子の居室がある奥側には、八雲はこれまで足を踏み入れたことがなかった。入り口からすぐの〈御学所(ごがくしょ)〉と呼ばれる一角には何度か入った記憶があるが、そこにある部屋のどれかが胡桃が言う〈立浪の間〉だったかどうかは覚えていない。

「何をするお部屋なんです?」

 彼の問いに、少女はかなりあやふやな返答をした。

「お話を聞くところ」

「誰のお話?」

宗司(そうし)とか」

 要は教義などについて教わる部屋ということだろうか。

「どうしてそこに鶴見祭宜がいると思うんですか」

「だって」胡桃は、何を当たり前のことを訊くのかと言わんばかりに、少し尊大な調子で言った。「いるもの」

 ほんとかなと半信半疑で足を踏み入れた〈立浪の間〉は、三十畳ほどある板敷きの広い部屋だった。四方の障子戸はすべて締め切られており、中はがらんとしていて薄暗い。

「ほらね」

 背中の胡桃が得意げに言い、部屋の隅のほうで戸棚の中を覗き込んでいる人影を指さす。

「わたしが先に見つけたから、勝ち」

 その声を聞きつけて、鶴見祭宜が振り返った。

「胡桃さま」

 名を呼びながら駆け寄ってきた彼女は、今にも泣きそうな顔をしていた。これまで何度か遠目に見た印象ではもっと若いと思っていたが、頭髪にちらほら白髪が交じっており、五十代ぐらいに思える。

「どこに行って――」胡桃に問おうとしたところで初めて八雲に気づき、鶴見は愕然となった。「まさか、奥の院に」

「あなたと隠れん坊をしているおつもりだったようですよ」

 八雲は説明しながら腰を下げ、勝負に勝ってご満悦の少女を床に下ろした。

「まあ、なんてこと。侍従長のお手を煩わせてしまい、ほんとうに申し訳ありません」

 年長者にそうまで(かしこ)まられると、逆にこちらが恐縮する。

「いいんです。今日はそれほど立て込んでいないので」

 というのは嘘だ。夏の大祭礼を間近に控えており、その準備にてんてこ舞いしている。だが北の院までの散歩はいい小休みになったし、小さい子のしたことなので、別に迷惑をかけられたとも感じていない。

 大人ふたりを翻弄した当の本人はけろりとしており、また鶴見を置き去りにして(とこ)飾りの花を見に走って行ってしまった。

「もう、少しもじっとしていてくださらない」

 小声でこぼす鶴見の目には、それでも隠しきれない情愛がにじんでいる。担当になると毎日つききりで世話をするので、自ずと我が子を育てているような気持ちになるのかもしれない。

「奥の院で、失礼はなかったですか」

「いや、特に何も。おれがすぐ見つけましたからね。あ、そうだ――」

 八雲はにやりとして、彼女に先ほどのことを話した。

「胡桃さまはすごいんですよ。鶴見祭宜がここにいると、ぴたりと言い当てたんです」

「ええ、いつもそうなんですよ」

 驚かせようと思ったのに、鶴見はその気配すら見せなかった。

「いつも、なんですか?」

「親しい人の居場所は、大まかにですがわかるようです。といっても、距離が比較的近い場合に限りますけど」

 さらりと言っているが、それは大変なことではないだろうか。

「どうしてわかるんでしょう」

「訊ねても、はっきりしたことは……なにしろまだ幼いですから。でも人間が発する、その人特有の霊気を感じ取っているようだと、前に摩耶(まや)宗司がおっしゃっていました」

「へえ、すごいなあ」

「胡桃さまは、北の院に今いらっしゃる若いかたたちの中でも、特別に霊力が強いんです」

 おっと。この手の話は苦手だ。八雲は急に落ち着かない気分になった。

 天門神教(てんもんしんきょう)の奉職者には霊力、すなわち魂魄(こんぱく)の力が優れている者が多い。それは目に見えない存在である神を知覚し、つながるために不可欠な力だ。霊力の強い者ほど、より深く神とつながり、より大きな加護を得ることができると言われている。加護を得るというのは神力を借り受けることであり、それによって人知を超えた術の数々を行使することが可能になるのだ。

 八雲はかつて昇山(しょうざん)する際に、地元の堂司(どうし)から「絶望的なほど霊力がない」と評された。そういう者でも、修行によってある程度まで霊力を高めることはできるという。なるほど、長く厳しい修行を経て、たしかに自分にも微々たる霊力は目覚めたと言えるかもしれない。だが神とのつながりは依然として弱いままらしく、祭職に就いてからも八雲には〈尋聴(じんちょう)〉や〈(うらえ)〉など、うまくこなせない術のほうが多かった。むろん、神の意を(じか)に受ける〈神告(しんこく)〉など得たこともない。

 なんとか自信を持って行えるのは〈封霊(ふうれい)〉ぐらいだが、あれは呪符を書けて笛さえ吹ければ、奉職者になる前の修行者でもわりとこなせる術だ。じつは彼は笛を吹くのがかなりうまいほうだが、音に霊力をこめられなければ単に達者な演奏というだけだし、そんな特技など何の自慢にもならない。

 つくづく才能がない――そう自覚しているので、彼は霊力に関する話題にはあまりかかわらないようにしていた。劣等感を刺激されてへこむだけだ。

木蘭(もくらん)さまや蘇芳(すおう)さま、それに(くれない)さま――今の祭主さまなども、とても強い霊力をお持ちですが、胡桃さまはそれ以上だと思います」

 八雲の心中など知る由もなく、鶴見は花器の前にしゃがみ込んでいる胡桃のほうを見ながら誇らしげに話した。

「前にいらした青藍(せいらん)さまほどではありませんけれど、それに次ぐものと」

 意外な名が出たことにはっとして、八雲は鶴見を見つめた。

「青藍さま……は、霊力が強かった?」

「はい、それはもう。胡桃さまのように感じ取るだけでなく、あのかたには人の目には映らないものが見えておいででした」

 まじか、と口の中でつぶやき、八雲は青藍の顔を思い浮かべた。記憶の中の彼女は愛嬌たっぷりで、いつも呑気そうに笑っている。宮殿勤務になってからはたびたび言葉を交わしたが、そういう時にも鶴見が言うような霊妙さを感じたことはなかった。いや単に、自分が救いがたいほど鈍いだけかもしれないが。

「そんなふうには見えなかったなあ」

「世話役だった恵那(えな)祭宜も、よくそう言っていました。あまりに天真爛漫で日ごろ才華を感じさせないぶん、時折その片鱗に触れると身がすくむと」

 畏怖をおぼえるほどとなると、そうとうに凄かったのだろう。そんな逸材が若くして失われてしまったとは惜しいことだ。

 少ししんみりした気分になりながら、八雲はまた仕事に戻ることにした。

「じゃあ、おれはこれで」

「ほんとうに、ありがとうございました」

 頭を下げる鶴見に会釈を返して歩き出すと、甲高い声に呼び止められた。

「行っちゃ駄目!」

 胡桃が転びそうになりながら駆けてくる。

「もっと遊ぶの」

 彼女はそう言って、全力で八雲に飛びついた。あわてて受け止めたが、小さいくせに侮れない勢いで、足腰の弱い者だったら一緒に倒れ込むところだ。

「胡桃さま、侍従長はお忙しいのですよ」

 鶴見がたしなめたが、少女は聞く耳を持とうとしない。

「鬼ごっこね。八雲が鬼」

 決めつけるなり、身を翻して走り出そうとする。八雲は急いで彼女の肩を掴まえ、やんわりと引き戻した。そうされても別に暴れるでもなく、背中を預けたまま仰向(あおむ)いて笑い声を弾ませているところをみると、これはこれで楽しいらしい。

「そりゃ、わたしだって胡桃さまと遊んでいたいですけどね、そろそろ戻らないと祭主さまに叱られてしまいます」

 祭主と聞いたとたん、胡桃はぴたりと口を閉じた。その顔から笑みが消え、代わりにどこか不安そうな表情が浮かび上がる。思わずこちらが戸惑うほどの豹変ぶりだ。

 少女はのろのろと体を起こして八雲から離れると、鶴見に近づいていってしがみついた。妙に頼りなさげで、今は五歳よりももっと幼く見える。

「お部屋に帰りたい」

 むずかるように、少し舌足らずな口調で言った胡桃を、鶴見祭宜が腰を屈めて抱き上げた。高齢の女性にしては力がある。

「胡桃さまは近ごろ、紅さまがちょっと怖いみたいで」

 立ち去る前に鶴見が苦笑いしながら言った言葉が、なぜかそのあともずっと八雲の頭の片隅に引っかかっていた。


 御山(みやま)の二大祭礼のひとつである夏の大祭礼が四日後に迫っている。

 祭祓(まつり)は神恩に感謝し、神を慰撫(いぶ)し、世界の平安と豊穣を祈願する大切な祭儀だ。当日は夜明け前から催事や儀式が絶え間なく続き、深夜に神域の入り口の古い門を壊して火を放つ〈門柱(かどばしら)焚き〉の儀式を(もっ)て締めとする。それらの準備が追い込みに入る中、山内には早くも集まってきた信徒たちがひしめき合っていた。

 ふだんでも夏の大祭礼は混み合うが、祭主(さいしゅ)が代替わりしたばかりの今回はまた格別だ。

 神の代理人たる祭主(くれない)は祭祓の主役であり、〈暁の祈唱(きしょう)〉に始まる三度の祈唱典礼や、会衆の捧げ持つ蝋燭に火を灯して回る〈御灯(みあかし)の典〉など、ほぼすべての儀式に出席して重要な役割を担うことになっている。信徒たち――特に先月の即位式を見逃した多くの善男善女は、大祭堂で行われるそれらの儀式で新しい祭主の尊顔を間近に拝することができるものと期待を膨らませているはずだ。

 祭主になって初めて臨む祭祓なので、さすがの紅もかなり重圧を感じているだろう。八雲(やくも)はそう思っていたが、いよいよ本番目前となった今も彼女は日ごろと少しも変わらず、予定にはなかった舞を奉納するなどと言い出す余裕すら見せている。

 それとは対照的に、八雲は職責の重圧に押しつぶされかけていた。自分自身が表に出て何かするわけではないが、当日は紅の傍につききりで、式次第を滞らせることのないよう適切な場所へ次々と誘導したり、そこで()すべきことを示唆したりと、事細かに補佐することになっている。つまり彼は儀式の手順を、紅以上に完璧に覚え込んでいなければならないのだ。

 ほかの侍従たちや侍祭(じさい)を務める宗司(そうし)も必要に応じて手助けしてくれることになってはいるが、甘え心があると身につかないので、八雲はなるべく人を当てにしないよう自らを戒めていた。とはいえ、侍従次長の志賀(しが)祭宜(さいぎ)だけは別だ。彼とは浮くも沈むも一蓮托生の運命なので、助け合うのが当然だろう。

供物(くもつ)なんてものはさ」

 奥の院の廊下をせかせかと歩きながら、八雲は隣を行く志賀に向かってぼやいた。

「決まった数をきちんと捧げることが大事なわけで、その順番が多少前後したところで神が気になさるとは思えねえよなあ」

「伝統というのは、きっと変えてはならないものなのですよ」

 供物とは、祭祓の序盤に祭主が祭殿(さいでん)へ上がり、〈闢神(びゃくしん)〉〈闔神(ごうじん)〉の像に手ずから供える飲食物のことだ。三種類の酒に米や(あわ)などの穀類、種子、野菜類と果実、打鮑(うちあわび)や干し鯛といった海産物、昆布や若布(わかめ)などの海藻類、さらに塩や味噌なども含まれており、その総数は実に二百五十四種にものぼった。

 ヒノキの三方(さんぼう)に盛られた供物は、夜明けを合図に祭殿へと運び込まれる。それらを種類ごとに分けて、白布をかけた十台の卓の上に安置するのは宮殿勤務の小祭宜(しょうさいぎ)たちの仕事だ。儀式が始まると、八雲を筆頭に三人の侍従が代わる代わる三方を紅の元へと運び、彼女がそこから一品につきふたつずつ取って、献壇(けんだん)の上にずらりと並ぶ何十枚もの皿や折敷(おしき)などに移していく。供える順序は厳格に定められており、変更はいっさい許されないらしい。

 残りの食物は半刻ほどで下げられて御膳所(ごぜんしょ)へ運ばれ、そこで調理されて祭主の午餐(ごさん)となる。やがて刻限がくると紅は再び祭殿へ上がり、その食事を神と共に食するのだ。これを〈相餐(あいさん)の儀〉といい、終わるまで余人は決して祭殿内に立ち入ってはならないという。

 紅が神と差し向かいで食事をしているあいだ、八雲はというと祭殿の階段下で待機していて、彼女が下りてきたら次の儀式の場所へすぐ誘導する段取りになっていた。つまり彼自身には当日食事をする暇など、まったくないということなのだろう。

 それを思うと、今からげんなりしてしまう。

「供物の順番は覚えたつもりだったけど、本番が近づくにつれてちょっとずつ頭から抜け落ちてってる気がするんだ」

 八雲が不安を口にすると、志賀は苦笑をもらした。

「忘れても、わたしが覚えていますからだいじょうぶですよ」

 さらりと言った。自信があるらしい。

「ほんとか。頼りにするぞ」

「ええ。暗記物は昔から、わりと得意なんです」

 日ごろ小心な男がこうまできっぱり言い切るなら、当てにしてもよさそうだ。心配ごとがひとつでも減るのはありがたい。

「もうひとりの、葛葉(くずは)祭宜はどうかな。彼女もおれよりは頭が良さそうだけど」

「べつに何も言っていませんでしたが、いちおう本番前日に時間を作って三人でおさらいしましょうか」

 その時間を作るというのが、今は至難の業なのだが。

「まあ、そうだな……」

 曖昧に返しながらふと行く手に目を向けると、正面からやって来る人影が見えた。白い法衣に黒の(うすもの)を重ね、紺青の紐を左の胸元に垂らした細身の長身。空木(うつぎ)宗司(そうし)だ。

 彼はいつも大きな歩幅で、風を切るように颯爽と歩く。七十代も半ばを過ぎているとは思えない溌剌(はつらつ)とした老人で、どこか気高さを感じさせる顔立ちをしており、老いても張りのある声で語る言葉には説得力がある。

 八雲はこの威厳に満ちた宗司の前に出ると緊張してしまうのが常だが、その一方で漠然とした親しみも感じていた。それは自分も彼も武門の出であり、昇山(しょうざん)後の後期修行を衛士寮で開始したが、のちに祭宜寮に移ったという経緯がたまたま共通しているせいかもしれない。

 空木宗司は序列筆頭になった今でも衛士寮とのつながりが特に強く、衛士長千手(せんじゅ)景英(かげひで)の強力な後ろ盾となっている。八雲は離れてかなり経つ〝古巣〟にまだ愛着があり、わずかの期間ではあったがよき薫陶(くんとう)を受けた景英を恩師として崇敬しているので、それらとかかわりの深い彼に好意を抱くのも決して不自然ではないだろう。

 宗司が近づいたので、道を譲るために志賀と共に脇へよけると、空木はなぜか八雲の前で足を止めた。上目づかいにちらりと窺った顔には厳しい表情が浮かんでいる。何かへまをしただろうか。

「八雲侍従長」堅苦しく肩書きつきで呼び、空木はさらに一歩近づいて八雲の目を覗き込んだ。「祭主さまはどちらにおられるのだ」

 唐突な質問に面食らいながら、祭主さまなら――と八雲は急いで答えた。

「〈(おおとり)の間〉で舞の稽古をしておいでです。予定では昼八つごろまで」

「小半刻ほど早く切り上げて退出されたそうだ。そのあとどこへ行かれたのか、侍従たちに訊ねても誰も知らぬと言う」

 なんてこった。八雲は胃がきゅっと縮こまるのを感じながら、隣にいる志賀と顔を見合わせた。

 紅には若い娘らしく気まぐれなところがあって、こういう人をまごつかせるようなことをたまにする。思わぬ場所にふらりと現れたり、逆に姿を消したりするのもそう珍しくはなかった。彼女の身に万一のことがあっては困るので、寝所以外では常に侍従を最低でもふたり付けるよう計らっているが、それを巧みに()いて好きなところへ行ってしまうのだ。

「心当たりを捜してみます。見つかり次第、中の院へご連絡を差し上げますので」

 なんとか言いくるめて宗司を追い返したが、ぐずぐずしてはいられない。早く見つけ出して務めに戻るよう説得し、びっしり詰まっている本日の予定をこなしてもらわなければ。

 八雲は志賀と手分けして捜索することにした。

「祭主さまのお好きな蓮池のある中庭を見に行って、そこにおられなかったら殿舎の西側を手空きの侍従たちと見回ってくれ。おれは表口の立哨(りっしょう)と詰め所にいる内宮(ないぐう)衛士に当たってから、新しい衣装部屋のほうを見に行ってみる」

 志賀と別れたその足で宮士(ぐうし)たちに話を聞きに行ったが、この午後に紅の姿を見かけたという者はひとりもいなかった。こうなると厄介になってくるが、少なくとも彼女は奥の院の外へは出ていないはずだ。ほかの殿舎に続く出入り口には必ず立哨がいるので、霧か煙にでもならないかぎり、彼らの目をすり抜けることなどできはしない。

 八雲は目星を付けておいた衣装部屋と、ナツツバキの白い花が見ごろの奥庭をざっと見回り、最後に〈彩輪(さいりん)堂〉と名づけられた小規模な館へ足を向けた。それは百年ほど前に何かの催しに使用するため建てられたという二階建てで、内部は天井まで吹き抜けになっており、間仕切りのまったくない一階部分には階段状の桟敷(さじき)席、二階部分には高欄つきの回廊が巡らされている。上下四方から見下ろす広間には何の調度も置かれておらず、中央にヒノキ板張りの舞台が設えられているのみだ。かなり特殊な構造のため、近年はほとんど出番がなく、ずっと施錠されたままになっていた建物だった。

 その錠を久方ぶりに開き、大急ぎで隅々まで整備してからまだ幾日も経っていない。忘れられかけていた建物を再び利用することになったのは、紅からある要望が出たためだ。

 彼女が八雲に「天井の高い大きな部屋か、小さめの建物がひとつ欲しい」と言ってきたのは、十日ほど前だっただろうか。蓮水宮(れんすいぐう)の主殿である奥の院全体が、いわば祭主の持ち物のようなものなので、部屋ならどれでも好きに使ってもらってかまわない。八雲はそう言ったが、紅の要望にはさらに細かい条件がついていた。すなわち「出入り口が少なく」「人が容易(たやす)く近づけず」「窓がなく」「周囲が静かで、内部の音も外にもれにくい」部屋がいいのだと言う。そんな条件に当てはまる部屋は、殿舎内には存在しなかった。大きい地下室でもあれば好都合だが、あいにくそれもない。

 そこで八雲はほかの侍従たちと協議を重ね、古い絵図面なども参考にして検討した結果、紅が満足しそうな建物は〈彩輪堂〉しかないと結論づけた。主殿の北に位置する奥庭の、さらに奥まったところにぽつんと建っており、裏手は崖、左右は雑木林に囲まれている。出入り口は建物正面の表口と、西側の通用口の二か所のみ。全体的に非常に重厚な造りとなっており、通風口はあるが窓はない。

 幸いにも紅はそこをひと目で気に入り、雲居(くもい)天城(あまぎ)の二宗司に承認を得て、整備が終了した翌日からさっそく利用し始めた。

 しかし二階建ての館をひとつ丸ごと、いったい何をするために使っているのだろうか。

 紅はその用途を「修行のため」と説明しているが、具体的に彼女が中でどんなことをしているかは侍従長の八雲すらも把握できていなかった。なにしろ、本人以外の内部への立ち入りがいっさい許されないのだ。

 奉職者の修行に終わりはないと言うし、祭主位を継承こそしたもののまだ十六歳の紅が、能力をさらに高めようと努力するのはむろん悪いことではないだろう。だが祭主の修行の機会は、もともと日々の公務の中にしっかりと組み込まれている。それに加えて自主的にさらなる修行をするというのは、崇高を通り越して酔狂としか思えないし、有り(てい)に言えばどうにも嘘くさい。しかも人目を忍んで行うというところが、彼には何か不穏に感じられてならなかった。

 務めをずるけて昼寝を決め込んでるとか、そんなことだったら可愛いんだけどな――などと思いながら、八雲は閑静な佇まいの〈彩輪堂〉に近づいていった。そこへ至る道は背の高い御簾垣(みすがき)に挟まれた細い遊歩道のみで、いったん足を踏み入れると周囲の見通しはほとんど利かなくなる。いつ通っても、なんとなく落ち着かない気分にさせられる道だ。

 表口にたどり着くと、彼は青銅金具で装飾された厚い扉を前にしばし思案した。入ってはならないと厳命されているが、入らなければ祭主が中にいるかどうかもわからない。この扉をがんがん叩いたところで、内部までその音が伝わるとは思えなかった。

「まいったな……」

 途方に暮れてつぶやき、八雲は扉に片耳を押し当てた。人のいる気配でも感じ取れればと思ったが、そんなものが察知できるほど鋭敏なら苦労はない。

 扉を開けてみようか――やめておくか。内心の葛藤を眉間の皺に表しながら、彼はさらに考えた。

 この大扉を開けた内側には短い歩廊があり、その先にもう一枚内扉が立ちはだかっている。つまり大扉までなら、開いても内部の様子は見えないということだ。中で彼女が何をしているにせよ、直接見ることさえしなければ、さほど強く責められはしないかもしれない。

 よし、開けてみよう。歩廊に入って声をかければ、きっと中まで届くはずだ。気づいたら向こうから出てきてくれるだろう。

 取っ手に手をかけようとした瞬間、いきなり背後から何者かに絞め技をかけられた。長くたくましい腕が八雲の首にがっちりと巻き付き、前腕が喉に食い込んでいる。絞め落とそうとしているのかもしれないが、血脈ではなく気道に()まっているので、このままでは失神する前に(くび)り殺されそうだ。

 始めは恐怖を感じていたが、あまりの痛みと苦しさにだんだん腹が立ってきた。こんなところで、わけもわからず殺されてたまるか。

 八雲は右手で相手の腕、左の逆手で襟元を鷲掴みにすると、限界まで前傾して力を溜めてから勢いよく()()った。後頭部が敵の鼻面を直撃し、ぎゃっという声に続いて締めつけが少しゆるむ。その隙を逃さず、膝を曲げて腰を落としながら、暴漢の体を背負って一気に投げ落とした。さらに、すかさず組みついて腕を取り、容赦なく背中側にねじり上げる。

 その時点で、自分が膝の下に敷いているのは若巫子(わかふし)烏羽(からすば)だと気づいていた。あるいは、もう少し前から悟っていたかもしれない。だから投げる時に無意識に手加減をして、頭から落とすことはしなかったのだ。

 十六歳の烏羽は、体格だけ見ればもう大人と大差なく、痩せ型の八雲よりもはるかにがっしりしている。しかし腹ばいで地面に押さえつけられ、肩関節を極められた状態では、さすがに動くことができないようだった。

「おい、なんの真似だ。おれの上からさっさとどけ」

 鼻血を流しながら烏羽が荒々しく怒鳴ったが、八雲はまったく(ひる)まなかった。まだ頭がかっかしている。

「なんの真似とはこちらの台詞(せりふ)ですよ。どういう心算(つもり)でわたしを殺そうとなさったのか、それを聞くまではどきません」

「きさま、こんなことをしてただですむと――」

 若者が脅し文句を言い終わる前に、どこからともなく拍手が聞こえてきた。

「お見事、お見事」

 顔を上げると、烏羽と同い年の若巫子蘇芳(すおう)が少し離れたところに立って、両手を打ち合わせているのが見えた。

「八雲侍従長が衛士寮上がりだというのは、ほんとうだったんだね」

 持ち前の物憂い微笑を浮かべながら、彼は湖面を進む鳥のようにすうっと近づいてきた。

「烏羽、早く謝ったら」

 同期の友人の上に屈み込んで、静かに促す。

「でないと、もっと痛いことをされるかもしれないよ」

「人聞きの悪いことをおっしゃらないでください」

 八雲はぶつぶつ言いながら、烏羽の肩口に載せていた膝をはずした。ふたりの雰囲気から察するに、殺そうとしたというのは、どうも早合点だったようだ。だが悪意ある攻撃だったことには違いない。

 烏羽は少しよろけながら立ち上がると、土汚れた白い万事衣(まんじごろも)の袖で鼻を拭った。口中に溜まった血を地面に吐き捨て、凶悪そうな三白眼でじろりと八雲を睨み上げる。

「おれは謝りなどしないぞ。こいつはこそこそ嗅ぎ回って、開けてはならない扉を開けようとした。あれぐらいされて当然だ」

 なんという言い草だろう。八雲はむっとしながら烏羽を睨み返した。

「わたしに非があろうとも、罰を下す権限はあなたにはありませんよ。そもそも、おふたりともなぜ今時分にこんな場所にいらっしゃるんです。前々から言おうと思っていましたが、奥の院に入り浸るのはおやめください。前の祭主さまのころには、そんなことはなさらなかったでしょう。最近の規律の乱れは目に余ります」

 肩を(いか)らせて言い返そうとする烏羽を、蘇芳が片手でそっと制する。

「奥の院で遊んでいるわけじゃないよ。わたしは祭主さまからの頼まれものをお届けするために来たし、烏羽はお()もり中に人が立ち入らないよう見張りを命じられているんだ」

 祭主を出せば引き下がると思っているなら、おあいにくさまだ。

「今後、届けものや伝言がある時は、奥の院づきの小祭宜(しょうさいぎ)にでも託してください。〈彩輪堂〉に警備がほんとうに必要なら――その点は祭主さまに再確認しますが――宮士(ぐうし)主監の兼次(かねつぐ)どのにわたしから話して人を配置してもらいます」

 烏羽の色白な頬にさっと血が(のぼ)る。

「勝手に決めるな。祭主さまはおれに――」

「若巫子たるあなたがたの本分は修行だ」

 八雲は厳然と言い放ち、威圧するように前に出た。

「そして、居るべき場所は北の院です。おふたりともすぐに戻って、決められた課業に専念なさってください」

 殴りかかってくるかと思ったが、烏羽は憎々しげに顔をゆがめながらも黙って(きびす)を返した。手ひどく投げられて、多少は()りたのかもしれない。蘇芳は軽く肩をすくめて彼のあとを追い、通り過ぎざまに八雲に瓜ぐらいの大きさの布包みを押しつけていった。祭主に渡せというのだろう。

 ふたりの姿が遊歩道の先に消えていくのを見守っていると、背中のすぐうしろで何かが軋んだ。急いで振り返って見れば、表口の大扉が細く開いている。その隙間から、光の宿らない暗い(うろ)のような瞳が片方覗いていた。

 まともに目が合い、ぞっと総毛立つ。

 思わず後ずさった拍子に危うく転びかけ、どうにか体勢を立て直した時には、紅が扉の外へ出てきていた。やけに疲れた様子で、少し肌がくすんで見えるが、蠱惑的とも思える美貌は普段通りだ。さっきは、なぜあんなに不気味に見えたのだろう。

「ここへは来ないで」

 彼女はややかすれ気味の声で言い、柳眉をひそめて見せた。

「祭主さま、そうはまいりません」

 怪訝そうな顔を向けられ、つい気後れしそうになる。だが一度始めたからには、今日こそ言うべきことを言ってやるつもりだった。

「行き先を告げずに姿を消すようなことは、もうなさらないでください。祭主さまの居場所を誰も把握していないなどということは、たとえ一時でも決してあってはならないのです。〈彩輪堂〉に来るなら来る、いつ戻ると言っておいてさえくだされば、わたしもみだりにこの場所へ近づいたりはしません」

 紅は無言だ。腹を立てているにせよ反省しているにせよ、その冷ややかな眼差しからは腹の内がまったく窺い知れない。

「それから、北の院のかたがたにあれこれお申しつけになるのも、今後はなるべくお控えください。ご用があればわたしやほかの侍従たち、奥の院づきの小祭宜らが承ります」

 依然として反応はない。八雲は不安になり、(いや)な汗で手のひらがべとつくのを感じた。知らず知らず鼓動が速くなっている。

「おわかりいただけました――か」

 ようやく、紅の目に感情らしきものが浮かんだ。そこに表れているのは、意外にも不満ではなく好奇心のようだ。

「わたしにお説教をするなんて」

 あきれているような、おもしろがっているような、どっちつかずの口調で言う。

 そのまま遊歩道へ向かって歩き出した彼女が、八雲の前を通り過ぎた直後に口の中で低く何かつぶやいた。

〝聞いていたよりも手ごわいのね〟と、そう言ったように思える。

「祭主さま、いま――」

「あなた、わたしをただ捜しにきたの」

 八雲の言葉を遮って、紅が訊いた。

「それとも何か用があるの」

 問われてようやく、もともとの目的を思い出した。

「空木宗司がお会いになりたいそうです」

 紅は足を止めると、半身になって八雲を振り返った。

「このあと大祭堂で〈御灯(みあかし)の典〉の進退のおさらいをするから、少ししたら来るように伝えて」

「承りました」

 そこでふと気づいた。蘇芳に渡されたものをまだ持ったままだ。

「蘇芳さまからのお預かりものがあります」

 布包みを差し出したが、彼女は受け取ろうとしない。

「中に持って入って、舞台の上に置いてきて」

 思いがけないことを命じられ、にわかに胸がざわつきだした。

「入っても……よろしいのですか」

「駄目なら頼まないわ。それに、中の様子が気になっていたのではないの。一度見ておけば、わたしがここで悪さをしていないことがわかって安心するでしょう」

 すっかり心を読んだように言い、紅は八雲を残してさっさと歩き去った。〈彩輪堂〉の内部を詮索されることを警戒している様子はまったくない。とすると、見られて困る痕跡などは残していないということか。

 何か仕組まれたような、釈然としない気持ちになりつつも、八雲は閉じられていなかった大扉から中に入った。内扉も開かれており、外からの光が広間の入り口まで差し込んでいるが、見えるのは床の一部のみだ。大股で六歩ほどの短い歩廊を通り抜けると、その先には墨を流したような闇が広がっていた。どこか上のほうに数か所の通風口があり、そこからわずかに光も入ってきているはずだが、少なくとも下の階にはまったく届いていない。

 足元がかろうじて見える位置にしばらく留まり、少し目を慣らしてから慎重に前へ進んでいくと、やがて舞台の端のほうが見えてきた。その近くに長い脚つきの燭台がひとつだけ置かれており、燃えた蝋のにおいが漂っていたが、火はすでに消されている。

 だいぶ暗さに順応してきた目で周囲をじっくり窺ってみたが、怪しいと感じるようなものは何も見つけられなかった。

 この息詰まるような暗闇の中、いったい紅はどんなふうに過ごしていたのか。蝋燭ひとつの薄明かりだけが頼りでは、できることなど限られているだろう。

 中を見れば彼女の言う「修行」の実態が掴めるかと思ったが、見たことで余計に謎が深まった気がする。

 八雲は肩透かしを食った気分で、もやもやを引きずりながら舞台の中央へ行った。そこへ包みを置こうとして、中身はなんだろう――と、ふと思う。

 それは厚めの絹布にしっかりとくるまれていたが、表面を軽くなでてみるとわずかに凹凸(おうとつ)が感じられた。全体の三分の一ほどは丸い形をしており、残りの部分は綿か何かに覆われているようだ。

 その形と感触から連想したのは、おくるみに包まれた嬰児(えいじ)だった。動かない嬰児――死んで黒くなった赤ん坊。

 馬鹿な。あり得ねえ。

 急いで頭を振り、薄気味悪い考えを振り払う。だが、意識の中に一度現れた心象は簡単には消えない。

 胸がむかつくような不快さを感じながら、八雲は包みを舞台の上にそうっと置いた。そのまま目を離さずに後退しようとして、はっと足が止まる。

 今、少しだけ――ほんのちょっと、包みの一部が動かなかったか。

 ゆらゆら。

 ゆらゆらと身を揺すり。

 羽化直前の蛹虫(ようちゅう)のように、もどかしげにひくつき、のたうち。

 はらり……と布の端が(ほど)け、そこから干からびた手が覗いて弱々しく(くう)を掻く。

 飢えた子猫のような、か細く切ない泣き声。

 そうしてすっかりゆるんだ包みの中から、緩慢に、もぞもぞと、小さな死骸が這い出してくる――。

「いや」八雲は怖気(おぞけ)を振るいながらも、大声できっぱりと言った。「そんなものはいない」

 呪縛を断ち切るように背を向け、出口に向かって一目散に駆けた。ほんの数呼吸の距離だが、恐ろしいほどに遠く感じられる。

 ようやく闇から抜け出て陽の下に立ったあとも、なかなか動悸が静まらなかった。

 こわごわ振り返ってみたが、むろん何も追ってきてなどいない。舞台は深い影の中にあってまったく見えないが、あの包みは自分が置いた位置に今もそのままあるはずだ。

 彼は大きく息をつき、じっとり汗ばんだ顔を手でなでた。

 臆病風に吹かれて見た幻か――それとも霊的な何かだったのか。よくわからない。ともかく、かつてない奇怪な体験だったことはたしかだ。

 ただ直感的に、原因はこの場所にあると確信していた。自分の頭がおかしいわけではなく、あの包みが異様なのでもなく、この建物が、あの闇が、心を侵食して惑わせたのだと感じる。

 こんな場所で修行だなどと――。

 紅に対する不信感がますます強まったのを感じながら、今は触るのも(いや)な気がする大扉に歩み寄ってしっかりと閉ざした。そうして中の闇と隔てられてしまえば、先ほどのことは何もかも気のせいだったのだと思えなくもない。だが何であろうと、繰り返し体験するのは真っ平ごめんだった。

 たとえ首に縄つけて引っ張られても、おれはもう絶対にここへは来ねえぞ。

 そう固く心に誓って、八雲は小走りに主殿へと引き返した。

聳城国マップ https://13604.mitemin.net/i136505/

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