第一章
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皐月の3。外の世界でいう一学期が始まった。
「はあ…」
博麗霊夢はため息をつきながら、紫が外の世界から裏ルートで手にいれたセーラー服を着て、境内から飛んで、学園こと『幻想卿学園』へ向かった。
「ようっ」
後ろから声をかけられ振り向く。そこにはセーラー服を着た霧雨魔理沙が居た。
「一緒に行こうぜ」
霊夢は一瞬嫌な顔を見せたがすぐにもとに戻し魔理沙と人間の里へ向かった。
人間の里の入り口の門に着いた霊夢と魔理沙は門に取り付けられている時計をみた。時間は7時30分。そろそろ彼が来てもいい頃だ。そう思った瞬間。
「俺は居るぜ、脇巫女霊夢に盗人魔理沙」
ピクッと二人は反応し声が聞こえた右側の建物を見る。するとそこには学ランと呼ばれる男子専用の服を着た少年が壁に背中を預けて立っていた。
「あんたね…いつから神社出たのよ…」
「朝3時だけど?」
呆れた。今朝から顔を見ないと思ったがやはりそうだったか。
彼ーー金剛柾ーーは空間移動能力を持っている。だからその能力を使って今朝神社を抜け出して、外に出ていたのだ。
「まあ良いじゃないか、一緒に行こうぜ」
「ええ…でもその前に…」
そう言うと霊夢は柾とは反対方向の空を見上げた。
「ああ…ナルホド…」
柾は霊夢の意図を探ったらしく同じ方向を見る。
「朝からおかしいと思ってたんだ…やけに静かだなって…」
そう言われてみればそうだ。人間の里の大通り、沢山の人間でごった返しているはずだ。なのに、声どころか気配さえ感じられない。
すると上方から一斉に屋根瓦の雨が降ってきた。
「『二重結界・改』!」
柾はスペルカードを詠唱し屋根瓦を破壊した。
すると屋根にひとつの影を見つけた。その影は屋根から消え去った。
「追うぞっ!!」
柾は空間移動を始めた。しかしーー
「逃げ足が速いやつだ…」
逃げられた。しかし奴の特徴は掴んだ。あとはじっくり仕返しをしてやろう。すると魔理沙が口を開いた。
「意見具申、時間は大丈夫なのか?」
「「あ…(;^_^A」」
時計を見ると時間は7時45分。
すると柾が言った。
「大丈夫。俺の能力使えば」
そして霊夢と魔理沙は柾の手を掴んだ。
「じゃ、行くぞ」
霊夢たちはどこかに引っ張られる感覚を覚えながら学園に向かった。