プロローグ
「はあ…」
霊夢はため息をつきながら廊下を歩いていた。ここは幻想卿で言う寺子屋、外の世界では学校と呼ばれている。
これは人間の里から西方面にあり、突如現れたのだ。この寺子屋が現れたのは睦月の五(今でいう1月5日)のことだった。
何故このように霊夢たちが寺子屋(学校)を訪れているのか、時間はこれが現れたときに遡る。
◆
師走の三十一。この時の幻想卿はなにかしら賑やかだった。里の人間は楽しさに埋もれていた。
しかしーー幻想卿の遥か西、山の上にある神社は別の意味で賑やかになっていた。
『博麗神社』、そこは外の世界と幻想卿(中の世界)が入り組んでいる場所に建っている。
「え?なに?」
霊夢は紫に問いかけた。
紫はため息混じりにもう一度言った。
「はあ…だから博麗大結界が来年緩む可能性があるのよ」
結界の緩みーー幻想卿と外の世界のバランスを保つための結界に綻びがあるとそこからなにかが起こると言われている。
明日は睦月の一、つまりは正月だ。
新しい年に何かが起こるのはよくある伝説だが全てガセだ。
「え〜、元旦に何か起こんの?」
「日付は断定できないけど可能性はあるわ。だから監視端末を貸すからそれで結界を監視しておいてね」
「…仕方がないわね。わかったわ、あんたの言い分は」
「それでよろしい」
紫はニヤリと笑うと賽銭箱付近に隙間を開け、そこから現金(二千円)を入れて去った。
「ったく…めんどくさいったらありゃしない…」
霊夢はぶつぶつ文句を言いながら部屋に入った。
すると鳥居の柱に何かの影があった。