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第七話 とある兄貴の荷電粒子砲

「先ホドノ、オ知ラセハ、ゴ覧ニ、ナリマシタカ? ゴ覧ニ、ナッタヨウデシタラ、ワガ社ニ、協力シテ、イタダキタイ。ココニ、概当スル個体ガ、居ルコトハ、分カッテイル、ノデスヨ」

 ドアの方から無機質な合成音声が聞こえる。ドアを叩く音がいっそう強くなる。

 雄一郎は自分の居るアパートの二階の、外廊下に取り付けられた防犯カメラ越しに、彼らの姿を見た。尖った頭に三つのカメラが埋まっている、動物園に居れば確実に檻に入れられるであろう大きさの、甲殻類のようなフォルムの銀色のロボットだ。昆虫のような六本の手足にはハサミ状の鋭い爪が付いていた。

「ドウシタ、ノデスカ? モシモ、アト三十秒以内ニ、出テコナケレバ、抵抗ト見ナシ、中ニ入リマス」

 雄一郎の心臓が早鐘(はやがね)を打つ。不安と焦燥で手足が震え、体が動かない。

 すぐ隣でハナコは、そんな雄一郎を不安そうに見ている。

「ゆーいちろー……。ごめんね。わたしのせいで……」

「そんなこと、言わないでよ……!! 大丈夫。ハナコは……僕が守るから……!!」

 時計を見るとすでに二十秒が経過していた。

 しかし、ロボット相手ではハッタリも通用しないだろう。時間だって稼げはしない。強がってはみたものの、雄一郎にこの事態を打開する(すべ)はなく、神に祈るしかなかった。

「大丈夫……大丈夫……ハナコは守る……絶対に……」

 三十秒が経つまで残り、三秒、二秒、一秒。――そのときだった。突然の爆発音に、ボロアパートが揺れた。

「雄一郎!! ハナコ!! 助けに来たぞ!!」

 カメラの映像には、海賊風のコートに身を包んだ髭の濃い――おっちゃんの姿が。その横には激しく煙を出しながら、ぎこちなく動く甲殻類ロボットがいた。

「しぶといな。さすがあいつの作ったロボットだ」

 おっちゃんは背負っていた大きな筒状のものを甲殻類ロボットに向け、引き金を引く。大きな爆発音とともにロボットはガラクタになっていた。先ほどの爆発音の正体は、どうやらこれのようだった。

「雄一郎! ハナコ! どこだ!? 返事してくれ!」

「おっちゃーん!!」

「おっちゃんさーん!!」

 ドアを開け、おっちゃんに抱きつく雄一郎とハナコ。おっちゃんは笑顔で二人を抱きしめ返す。

「怖かったよぉ~!! おっちゃ~ん!!」

「ホントにもうダメかと思ったよぉ~!!」

「よしよし。二人とも。俺が来たからにはもう安心だ」

 ようやくハナコと雄一郎が落ち着いてくると、いろんな疑問が湧いてきた。

「おっちゃんさん。この背中のおっきな筒は一体……?」

「これか? これは俺が作った小型の荷電粒子砲だ。要するに……あー、……SFバズーカだ」

「それ、銃刀法とか大丈夫なの?」

「それが、ガスも火薬も使ってないし、金属の弾を撃ってないから法律的には大丈夫なんだよなぁ――まぁそんなことはさておき、すでに町中にこのゴツイロボットがいる。ここにいたらすぐにまた追っ手が来ちまう。ウチならGPSに見つからないように出来てるから、ひとまず逃げるぞ」

 おっちゃんを先頭に、ハナコの手をとって走る雄一郎。町の中を縦横(じゅうおう)無尽(むじん)に駆ける駆ける。

 しかし、気がついたら町中に甲殻類ロボットがいるこの状況。大通りを大手を振って歩くなんてことは出来ない。彼らは右往左往して行くしかなかった。

「……こっちだ……!」

 おっちゃんの合図とともに、分かれ道に入ろうとした。しかし雄一郎は走りながら手を滑らせてしまった。――ハナコがバランスを崩し、倒れる。二人の間は30メートルほど離れた。しかも運の悪いことに甲殻類ロボットに見つかってしまった。

「ハナコっ……!!」

 雄一郎が叫ぶ。ハナコの元へ走る。届け届けと手を伸ばす。

「ゆーいちろー……っ!!」

 甲殻類ロボットの鋭いツメがハナコのすぐそばまで迫る。

 ――鋭いツメは振り落とされた。

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