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第一話 ロボットロボ太

 夕暮れ、草木が生い茂る原っぱ、走ってくるのは小学生くらいの男の子。その後ろをSF映画に出てくるようなロボットが追いかけてくる。

 息を切らして、汗をたらして、半袖(はんそで)短パンの男の子は逃げる。その後ろを無機質な鋼の寸胴(ずんどう)が追いかける。

「ダメだ!! 逃げ切れない! 捕まっちゃう!!」

「マテマテー!」

 男の子は全力で足を動かし、走る。走る。その後ろをロボットも全力でタイヤを回し、走る。走る。

 けれどやっぱり幼い男の子、ロボットには簡単に追いつかれてしまったようで。

「うわぁ~もう無理~」

「フッフッフ。覚悟シナサイ! ――――陸朗オボッチャマ」

 そう言うとロボットはどこからかノートと教科書と問題集を取り出して、

「オボッチャマ。遊ブノハ、宿題ガ終ワッテカラッテ、ワタクシトノオ約束ヲ忘レタノデスカ?」

「むー! ロボ太のいけずー! 子供だってたまには宿題なんてほっぽり出して遊びたいの!」

 男の子は口をとんがらせた。

「デモオボッチャマ、私ガ生マレテカライツモコウヤッテワタクシニ追イカケラレテルジャナイデスカ」

「うっ……! わかったよ。行くよロボ太……」

 ロボットにおとなしく着いていく男の子。彼の名前は門出陸朗(かどでりくろう)。一緒に歩くロボットは、科学者である彼の父親が数ヶ月前に作ったロボット、通称ロボ太。ロボ太は不思議なことに、人間のような感情を持っていた。

「ロボ太おつかれー! 陸朗! 約束したなら守らなきゃダメじゃないか。陸朗が父ちゃんみたいなダメおやじにならないか、兄ちゃん心配でしょうがない」

 出迎えたのは陸朗の兄、新一(しんいち)だ。

 彼らの父親は家より研究所にいる時間のほうが長い。さらにそのせいで母親と離婚。そのため、基本的に家事は兄の新一がやっていた。

「まあいいや、今から晩御飯作るから。えーと多分お前の宿題が終わるころには出来てると思う」

「新一サン。ワタクシモ手伝イマスヨ」

 そんな二人を横目に宿題に取り掛かる陸朗。

「(まったく。父さんはなんであんなめんどくさいロボットを作ったんだ……)」

 ぶつくさ愚痴を垂らしながら手を動かしていた。




「――よし終わった!」

「お、ちょうどいいな。こっちも準備できたところだ。陸朗、はよ座れ、兄ちゃん特製チャーハンです!」

 新一はそういうと、おっきなお玉で陸朗のお皿にチャーハンを盛り付けた。

「またチャーハン?」

「いいじゃん。これ楽なんだよ。そんでロボ太はこっちな」

 ロボ太にコンセントのプラグをつなぐ。

「アリガトウゴザイマス。コレデ明日モ生キルチカラガ湧クッテモンデスヨ!」

「「「いただきまーす!」」」

 さっきまでぶつくさ言っていた陸朗も今はとってもいい気分。

「(ちょっと変だけど、これって幸せって言うんだろうな)」

「(それにいつのまにかロボ太もすっかり、何気ない日常の一部になっちゃったんだな)」

 ――しかし幸せな日々は、長くは続かなかった。





 ――「ロボ太っ! ロボ太っ! 死んじゃやだ!」

「陸朗! 落ち着け! ロボ太はロボットだ……だから…………その……死なない……よな」

「ソウ……デスヨ……オボッチャマ。ワ……タシハ、ロボ……ットデス……カラ」

「でも、ロボ太煙でてる……それに……なんだかすごく苦しそうだよ!」

「フフ……陸朗オボッチャマ。新一サン。……ワタクシハ、トテモ、――シアワセナロボットデシタヨ」

 最後にそう呟くと、二度とロボ太が動くことは無かった。

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