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量産型勇者

 ここはとある食事店。普段から賑やかなこの場所ですが、今日はひと際賑やかでした。その理由はただ一つ、今回ここにやって来た客にありました。


「おーい!店長!」


 世界各地を巡り、様々な財宝を集めたり、そこに潜み人間や自然を脅かしているという魔物を退治し続けているという『勇者』が、この店にやって来たのです。当然店長も大喜びで、他の店員さんと一緒にメニューを尋ねました。


「えーと……これってスパゲッティだよな」


「へい、ペペロンチーノスパゲッティにございます、はい」


「じゃ、これを5人前な!」


 なんと、一気に一人で5人前も食べようとしているのです!


 当然驚く店長たちでしたが、勇者の体つきを見れば、それだけの量が必要となる理由もわかりました。体全体が引き締まった筋肉に包まれ、そして程よく色づいた肌が、腹や腕など大胆に露出している格好。そして、それに加えて女性を魅了する野性的な整った顔つき。それが、この『勇者』でした。

 まさに野性的、ワイルドといった外見の彼は、その食べ方も豪快でした。届けられたスパゲッティを、あっという間に平らげ始めてしまったのです。


 とは言え、これだけ豪快に食べてもらうと、店長も店員もうれしい気分になりました。露出している上半身の肌にスパゲッティのタレがついてしまうのも気にしないという所はあまりにも豪快、野性的すぎるかもしれないですが……。


 ところが、驚いたのはその直後でした。


「おーい、店長ー!」


 ……なんと、目の前でご飯を食べている『勇者』と、全く同じ姿かたち、露出の多い上半身に引き締まった筋肉、そして甘いマスクと言うもう一人の男性がやって来たのです!一体どういうことなのかと唖然とする店長の前で、二人の『勇者』は嬉しそうに会話を始めました。


「ふ、双子だったんですかい?」


「「ま、そう言う感じかなー?」」


 同じ腹から生まれ、同じ時間を一緒に過ごし、そして同じ『勇者』になった二人。新たな彼もまた、ペペロンチーノ5人前を注文し、先にやって来た『勇者』と一緒に食べ始めました。


 ですが、これだけでは終わりませんでした。


「おーい、店長-!」


 三人目の『勇者』――全く同じ姿かたちをした彼が、再びやって来たのです!


========================================


 それから10分後……


「ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」ごちそうさまでしたー!」……


 気づいた時には、店の中には何十人もの『勇者』でぎゅうづめになってしまいました。


 全員とも大胆な露出をした上半身に程よく焼けた肌、引き締まった筋肉、そして甘いマスクと言う外見。そして、全員とも大量のペペロンチーノをぺろりと平らげる豪快さを併せ持つ、全く同一の存在だったのです。


「こ、これはいったい……」


 唖然としていた店長は、ようやく大量のワイルドな『勇者』から理由を聞く事が出来ました。


 彼らは『同じ腹』から生まれた、と言うのはまさにその言葉通りでした。ただし、それは人間だとは一言も言っていませんでした。そう、彼らは人間でないものから、次々に誕生……いえ、『生産』され、勇者として生きる運命を課せられた存在たちなのです。


「ま、要は『量産型勇者』って感じかな」「だよなー」「うんうん」


「なるほど……」


 でも、店長はそれを聞いても特別扱いすることはしませんでした。例え生まれも育ちも違っても、同じ顔が無数に並んでいたとしても、彼らはこの店を喜ばせた「お客」であることには変わりありません。代金をしっかりと頂きさえすれば、彼らも大事な『人間』なのです。


「……サンキュ」「そう言ってくれると、うれしいよ」


 それを聞いて、量産型の勇者たちも、ワイルドさをひそめてうれしそうな声をあげました。



 そして、彼らを見送ろうと扉を開けて、店長たちが見たものは……


「よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」よう!」……


 ……どうやら、今日はこれからこの店は一日中、ワイルドな『勇者』の大群に埋め尽くされそうです。 

お題:ワイルドな勇者 必須要素:ペペロンチーノ

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