分身探偵・丸斗蛍 ブランチは語る
「ニャハハハ!皆見るニャ!」
私たちの丸斗探偵局に、ブランチ先輩がやって来た。一見するとただの黒猫に見えるかもしれないけど、その正体はこの私、丸斗探偵局の局長をやっている丸斗蛍の先輩にあたる偉大な探偵だ。
今は町の動物たちの親分をやっている傍ら、人間の言葉を話せるという特技を生かして動物と人間の間の仲を取り持つ大変な仕事をやっているはずなんだけど、結構暇なようでこうやって訪れることもしばしば。
「なんですか、これ?」
そんな先輩が口にくわえていたのは、今日の新聞である。
何でも、どこかの猫カフェの様子が紹介されていたらしく、久しぶりに探偵局の中でごろごろしたくなったらしい。それならいつもの『ネコ屋敷』でゴロゴロすればいいんじゃないか、って私は思ったんだけど……
「ここでするニャ!やっぱり蛍たちと一緒の方が落ち着くニャ」
「ありがとうございます、ブランチ先輩」
そして、ブランチ先輩は私に、持ってきた新聞を床に敷いてほしいと頼んできた。この上でゴロゴロしたいというのだ。
「珍しいですね、いつもソファーで寝転がっている先輩が……」
「ふふーん、たまにはこういうのも良いかニャーって思ったニャ」
ブランチ先輩は相変わらずのマイペース。真面目な私としては、こういう態度はとっても羨ましい。確かに探偵には真面目な態度も重要かもしれないけど、こうやって柔軟な考えを持っている人が、様々な問題の解決の糸口を意外なところから発見するという事だってあるからだ。
そして、床に敷いた今日の新聞の上でブランチ先輩はゴロゴロし始めた。
今、探偵局は私と先輩の二人だけ。他の皆は今日のお昼ご飯を買いに外に行っている。
「何だか、私が新人の頃を思い出しますね……」
「あのころは蛍も小さかったニャー……」
……でも、さすがにブランチ先輩より小さいという事は無かったと思うけどね。
そんなやり取りをしていた時、突然ブランチ先輩の顔が変わった。
「蛍……今、凄い事がひらめいたんだニャ」
……私の尊敬する先輩の一人であるブランチ先輩の言葉となれば、聞かないわけには行かない。一体何なのか、その黒い顔をじっと見つめた私に向かって、ブランチ先輩はこんな言葉を告げた。
「こういう時にぴったりの言葉だニャ。
猫が、『ねこ』ろんだ。 ニャんちゃって♪」
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「「……あのー、局長……」」「何があったんすか……?」『大丈夫ですかワン……?』
私の部下のヴィオ、スペード、コウちゃん、そしてちー君こと千尋君が帰って来た時、三人の顔が唖然としていたのは、たぶんその時の私とブランチ先輩の様子のせいだったに違いない。
「……おかえり……」
部屋の中はエアコンのお陰で最適な温度に保たれているはずなのに、どうして『丸斗探偵局局長』である私が、コートを羽織って非常に落ち込んでいる様子だったのか。
「……わ、訳は後で説明するニャ……」
……多分この後、ブランチ先輩を待っているのは、彼よりもさらに上に位置する、先代の丸斗探偵局の局長さんからのお仕置きに違いない。と言うか、さっき私の方から呼んだ。
あまりにもとっさの出来事だったけど、後悔はしていない。
だって、わざわざ私のところに来た目的が、あんな凄まじい寒いギャグを言うためだったなんて……。
マイペースなのも、考えものなのかもしれない。バランスって難しいな、と言うのが、私が得た最大の教訓だった。
お題:猫のギャグ
必須要素:新聞




