8月31日の阿修羅様
「さあ、いよいよ夏休みだぞー!」
いよいよ待ちに待った夏休み、ひろあき君はついにこの時がやってきたとワクワク気分でした。学校に行かずに思いっきり朝寝坊も出来ますし、プールやゲーセン、山や海と色々な所に行きたい放題です。ところが、浮かれているひろあき君に水を差すようにお母さんが注意しました。
「ひろあき、ちゃんと宿題しなきゃだめよ」
「げ……」
そうですが、学校の先生からたくさんの宿題がひろあき君たち生徒に渡されていたのです。
ですがひろあき君はそれから目を反らしてお母さんに言いました。
「大丈夫だよ、ちゃんとやるからー」
「本当?」
本当だよ、とひろあき君は言いました。でもそれは怒ると怖いお母さんからの言い逃れ、本当はサボる気満々だったのです。
それから少し経ち、8月になっても、机の上に山積みになった宿題にひろあき君は一切手を付けず、友達や家族と遊び放題でした。
「ひろあき、宿題は?」
「大丈夫だよ、ちゃんとやるから」
前もそう言ったのに、今回もまたやらないのだろう、とお母さんから耳の痛い一言が飛んできてしまいました。どうせこの後怒られて無理やり宿題をやらされるにきまっているだろう、そう思ったひろあき君は、急いで身支度を整え、予定より早く家を飛び出して友達の家に遊びに行きました。
「いってきまーす!」
「……全くもう……!」
そしてまた少し経ち、夏休みも少しづつ終わりに近づいてきました。
相変わらずひろあき君の机の上には宿題が山積み。一切手を付けていません。ところが、お母さんは何故か一切注意をしませんでした。言ってもいう事を聞かないひろあき君に呆れてしまったのでしょうか。ですが肝心のひろあき君の方は逆にお母さんから何も言われないのを良い事に、ますます宿題を無視するようになっていました。
「いいさ、どうせ最後にやれば……」
そして夏休み最後の日。
「……どうしよう……」
ひろあき君の目の前には、山積みになって一切手を付けていない宿題の山がありました。とても1日で片づけられる量でもありませんし、下手すれば9月になっても全部出しきれないでしょう。こうなったらお母さんに手伝ってもらうしかない、そう考えたひろあき君は、恐る恐るお母さんの元に近づき、言いました。
「あ、あのさ……お母さん……その、俺の……」
そして、宿題を少しやって欲しいと言った途端、振り向いたお母さんの様子にひろあき君は仰天としました。今までも何度も怒ると怖いお母さんだったのですが、今回はあまりにも凄まじすぎました。頭からは長い角が生え、顔もすさまじい形相に変貌し、そして背中からは何本も腕が現れていたのです!
「ひ、お、お母さんが……よ、妖怪に……!」
『妖怪ではないぞ、ひろあき』
「!?」
突然聞えたお母さんと全く違う低く恐ろしい声に、ひろあき君は縮こまりました。
『私の名前は阿修羅だ。悪い奴にお仕置きをするために、ここにやってきた神様なのだ』
「え、か、神様……!?」
お前は宿題をサボり、迷惑をかけた。ここでお仕置きをしておかなければならない、と阿修羅はお母さんの姿を借り、ひろあき君に告げました。勿論ひろあき君は涙を流して謝りはじめました。ごめんなさい、もう宿題をサボってお母さんに迷惑かけません、どうか許して、と。
ところが、阿修羅はひろあき君を一切許しませんでした。
『お前が迷惑をかけたのはお母さんではない。お前自身だ。お前は自分に迷惑をかけたのだ』
「え……!?」
『お前は罰を受けなければならない!』
その途端、ひろあき君の周りに巨大なノートが何冊も現れました。そしてノートの中から、なんと大量の国語の文章や数字が表れ、ひろあき君の体を包み込み始めたのです!次々に注ぎ込まれる大量の情報に、ひろあき君はパンク寸前になってしまいました。
「た、助けてー!!!」
『駄目だ、お前はこのまま……』
「い、いやだーーーー!!もうしないから助けてーーー!!!」
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「いやだー……はっ!」
気づいた時、ひろあき君はベッドの中にいました。日付はまだ夏休みよりずっと前、そう、今までの事はすべて夢だったのです。
「……阿修羅か……」
でも、ひろあき君は夢の内容をしっかり覚えていました。
そして、机の方を向き、このままサボるつもりだった宿題に急いで取り組み始めました。あのような凄まじい怖さのお母さん――いえ、阿修羅の罰なんて受けたくないですからね……。
お題:阿修羅夏休み




