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不器用なバラたち

「……ふーん」


 テレビから流れるワイドショー番組で、随分懐かしいドラマの映像が流れてきた。見た記憶は全然ないけれど、名作として名高い、サブキャラを演じた人が有名になった、様々な話を聞く。まぁそんな余計なことは、今の私にはあまり関係ない。

 私が気になったのは、その登場人物などが持つ恋愛感だ。テレビの中のその人はとにかく不器用、必死に恋を求め続けていたという。その中でのこの有名な台詞だ。

 案外、私もいつかそういう感じの言葉を言う日が来るかもしれない。いや、きっと来るだろうと信じていた。


「……ふう」


 テレビの話題が変わった辺りで、私はベランダを見渡した。

 そこには、ずっと私が育ててきた白いバラが可憐な花を見せびらかしていた。種を植え、芽を育て、茎を愛でた結果が、この美しい光景である。


 何で育てているか、それは一重に私の恋のためだ。とはいえ、私には恋をする相手がまだいない。いつかそういう人が現れたときのため、白いバラを育てているのである。自分の気持ちを伝える手紙代わりとして。

 

 ふと思い立った私はベランダに向かい、そっとバラを手のひらに取ろうとした。これは大事な『手紙』、それを自分の手の上に置かないわけには行かないだろう。

 だけど、それはどうやら早すぎたかもしれない。


「……いたっ……!」


 綺麗なバラには何とやら、私の指先には純白の可憐な恋文になるはずのものからの痛い拒否反応が走ってしまった。赤い血をとめるために指を一舐めして、私は仕方なく部屋に戻っていった。


「……はぁ……」


 これでもう何年目になるだろうか。

 いったいいつになったら、私はテレビの登場人物――不器用だけど不器用なりに頑張れる恋に巡り合えるのだろうか。


 いや、もしかしたら私は既に恋に巡り合えているのかもしれない。自分が気づいていないだけで。その相手が、人間でなかったとしても――。


「……いやいやいや!」


 ――流石にそれはロマンチストすぎる、とあわてて私は頭の中で先ほどの考えを否定した。そして、改めてバラと接するため、たっぷりと水を注いだじょうろを持ってもう一度リビングへ向かうことを決めた。


 立ち上がった私の視界に、風に揺れる白いバラが見えた。先ほどの無礼を詫びつつ、私を応援しているかのように、静かに優しく揺れていた……。

お題:純白の痛み

※一部内容を改変しています。

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