言い訳テレポーテーション
「ねえ、昨日貴方何してたの?」
やっぱり彼女は怒ってる。昨日デートの約束したのにこの場所へ来なかった理由だ。一応は理由があって来る事は出来なかった、とは言ったけれど、明確な理由を言っていないので彼女はおかんむりになってしまっている。
「聞いてるの?私を置いてけぼりにするなんて…」
「い、いや、そ、それがさ…」
そして、僕はいつものように言い訳をせざるを得なかった。
「は?フランス?」
「そ、そう…フランスの知り合いから急な用事が入ってさ…」
「え、そんなところにも知り合いが?」
前はアメリカ、その前はロシア……僕は度々こうやって会話を誤魔化し続けてきた。確かに突然この町から世界規模に話が移れば、怒る以前に唖然としてしまうだろう。その間に頭に色々な事を考えておけば、何とか自分のペースに相手を誘い込む事が出来る。この言い訳方法を、僕はこれまでも度々駆使してきた。
「へぇ…新しい株の話題ねぇ…」
「悪いね、ちょっとそれで知り合いから早く買わないと大変だって…」
「で、その話題とかの方が私よりも大事って訳?」
そんな事は無いよ、と言いながら、僕はもう1つ、この『言い訳』を補強するための品物を用意してきた。今回話に取り上げた、『フランス』で売っていたお土産だ。本当はどこで買ったか覚えていないけど、確かにフランスの品物なのは間違いない。これでしっかりと誤魔化せるだろう、そう読んだわけである。
「そう、これがその知り合いから君のために贈られたお土産さ。
大事なデートを邪魔して、申し訳ない、って」
ふーん、と彼女は言ってくれた。
これで何とか、僕の得意かつ愛する言い訳を駆使することが出来た…そう思った矢先だった。
「…じゃ、私その『知り合い』とやらに恋の対象を変えちゃおうかしら」
まずい。相当まずい。顔は笑っているけれど、彼女が相当怒っているのは僕でも分かるほどだった。せっかく頭の中で考え、上手くストーリーを作り上げたつもりの僕の努力は、完全に無駄に終わってしまったという事である。
こうなったら、全てを伝えるしかない。
「あの……」
「いいわよ!私もうあんたなんかとは……」
「今すぐ会わせてあげる。その『知り合い』にね」
何のことよ、と唖然とする彼女の手をぎゅっと握り、僕は頭の中心に意識を集中し始めた。その途端、僕たちの体はこの町を離れ――。
「……え、え、え…こ、ここは……」
「フランスのパリさ。『知り合い』――つまり、僕がテレポートした場所だよ」
――そう、これが言い訳をした一番の要因だった。
隠していたテレポーテーションの能力でフランスを訪れた際、うっかり彼女とのデートを忘れた事を思い出して大慌てするという醜態、そして僕の力を隠すために……。
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そして、それから数日が経った。
「勘弁してよ…ちょっと僕は…」
「何よ、私のデートをほったらかした罰よ!次はえーと…」
彼女の手元には世界地図があった。あちこちの都市に「×」の印が書かれている所が、僕のテレポーテーション能力を利用してこの数日の間訪れまくった場所と言う訳である。
「さ、次はニューヨークの自由の女神の所へ出発!」
「りょ、りょうかーい……」
どうやら僕は、ずっと愛していた『言い訳』と失恋してしまったのかもしれない…。
お題:僕が愛した言い訳 必須要素:フランス




