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6550万年前の夕方

「おはよう……」


 今日も彼が起きた時、既に太陽は空に沈みかけていた。


「また寝坊かよー」「全く、いつもこれだぜ」


 周りにいる仲間たちが、彼をからかった。それを見て、彼は悪い悪いと平謝りだった。

 彼らの生活はその日暮らし、起きては食べ物を食べ、少し遊び、そして寝て、そしてまた起きては同じことの繰り返し。生まれてからずっと、同じような日々を過ごしていたわけである。


 ただ、最近そのような日々が、少しだけ難しくなってきた。


 普段は自分たちがたくさん食べても生えてくるはずの美味しい食べ物が、日を追うごとに少なくなっているのである。


「こうやってのんびり寝てられるのもさー」


「悪かったって……明日は早起きするから」


「そうだぜ、明日は早めに起きて、別の場所に移動するんだ」


 きっと別の場所に移動すれば、もっと美味しいご飯が手に入るだろう。彼らはそのように信じ続けていた。

 ただ、それとは別に、彼らには気になることがいくつもあった。

 

「なんか、寒くないか?」


 寝坊した彼が起きたのも、大きなくしゃみが原因だった。


 ここ最近、明らかに周りが寒くなっていたのだ。もしかしたら、食べ物が少なくなっていたのも、この寒さが原因なのかもしれない。前はそらから白いものまで降って来た。雨が固まったような不思議なものだった。

 だが、それ以上の異変を彼らは知っていた。


「……と言うかさ……」

「ああ、なんか変だよな」


 空の色が、不気味に赤く染まっていたのだ。


 普段からこの時間になると、空は綺麗な赤色に染まる。そして、それを合図に彼らは寝床に戻り、そしてぐっすり眠るという生活を過ごしていた。しかし、ここ最近は空の色がいつもより赤く、まるで血の色に染まったかのようなものである。あまりにもきれいすぎて、むしろどす黒く汚い色のように彼らは感じてしまっていた。

 いったい、この場所にこれから何が起こるのだろうか。


「……俺たち、どうなるんだろうな」


 そのような未来の心配までしてしまいそうなほど、空は異様な赤みを帯び続けていた。


 やがて、それを覆い隠すかのように、漆黒の雲が空を覆い始めていた。以前も彼らは似たような光景を見たことがある。綺麗だった川が、雨が降った後に茶色で覆われ、見るからに『汚い』色になっていたのだ。

 もしかしたら、空にそのような汚くする雨が降ったのではないだろうか。そんなことを、彼らは考えていた。


「……まぁ、たぶんよくなるさ」

「そうそう、別の場所に移動すれば、美味しいご飯をたらふく食べられるしな」


 そうだよな、と仲間たちに彼は返した。


 あの時も、汚い色はすぐに消え去り、川の色は綺麗な青に戻った。きっとこのどす黒い雲も、不気味なほど赤い空も、時が経てば元通りに戻るだろう。

 

 これからどうしようか、彼が仲間たちに尋ねたときだった。


「……?」


 鼻先に、妙に冷たい感触を覚えた彼がそこに焦点を当てたとき、そこにはあの冷たい『雨』の塊が映っていた。やがてそれは二つ、三つ、そしてたくさんの数になり、そらから降って来た。

 

「……いっぱい降って来たな」

「どうする?ここで寝るか?」

「うーさむ……俺、寒いの苦手……」


 動けばきっと体は温まるだろう。ここで立ち止まるよりは、今のうちに美味しいご飯が食べられる場所を探す方が先決かもしれない。そう考え、彼らはこの場所から立ち去ることにした。


「もう居眠りなんてしないだろうな」

「大丈夫だって、もうすっかり眠気は取れたぜ」


 互いに笑いながら、彼らは未来に希望をもって、歩き始めた。


 彼らの残した大きな足跡の先にあったのは、どす黒く汚れた、夕焼けの空だった。まるで、彼らを導くかのように、いつまでも夕方の空は輝き続けていた……。 

お題:汚い夕方

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