借金夫と高給妻の結婚記念日(ト書き注意)
ふふ、おはよう♪
「あ、おはよう……なんか今日は凄い機嫌がいいな」
決まってるでしょ、あなた。今日は何の日か覚えていないの?
「何の日って……あ、そうか!今日は僕と君の……」
そう、今日は私とあなたの結婚記念日じゃないの。もう、大事な日を忘れちゃ困るわよ。
「へへ、ごめんごめん……」
ねえ、私とあなたが出会った日の事、覚えてる?
「ああ、覚えてるとも。あんなに酷かった出会いは無いね……特に君の方かな、そう考えちゃうのは?」
本当よ、あの時の私は、大企業に務めていたOLだったんだもの。それなのに、突然貴方が押しかけてきて、大変だったんだから。
「突然って、仕方ないだろう。あれだけたくさん借金をしたのは君だったんだろ?」
そ、そうだけど……。
正直、あの時は私も随分贅沢をしてきた気がするわね。たっぷりのお給料を貰って、それをたんまりと使って好きなものを買ったり、思いっきりおしゃれをしたり。
「高給取り、って奴だな……。今の生活からは信じられないけどな」
本当よ、あんなに湯水のようにお金を貰って、使って……高給取りって、こういう事を言うのかしらね、悪い意味で。
「まぁ、今だからそう言う風に笑えるんじゃないか?あの時の僕は、その気になれば……」
わーわー、それ以上は言わないでよ、『元』借金取りさん。
「う……それを言われてしまうと、僕も何も言い返せない……」
お金を湯水のように使って、貯金もしないものだから、ついサラ金に手を出しちゃったのよね、私。それでいつの間にか、会社のたくさんの給料も全部借金に回ってきて……。
「それで、君から金を取り返すように僕へ指令が下ったわけだ」
毎日のように押しかけてきて、本当に……ね、辛かったのよ、私。
「悪かったって……僕も仕事だったんだから。
でも、君が大量の借金と、会社での給料が問題になってクビになった時……」
あなたも、サラ金の会社をクビにされたのよね。期限内に私からお金を取り返すことが出来なかったから、って。
まさかあなたも借金を背負ってたなんて、思わなかったわよ……。
「ま、同じ穴のムジナさん同士だったって訳さ。それでどうもいられず、君に助けを求めて……」
私も大変だったのよ?クレジットカードも使えなくて、お金もわずかしかなくて、しかも狭い部屋で二人一緒に突然暮しだすなんて……。
「本当に苦労したよな……互いに出来る限りのことをやって、それでも結局上手く行かなくて。
だけどさ、ようやくこうやって、田舎に落ち着くことが出来たよな。互いの過去を、すべて捨てる形で」
そうよね。私たちが元・高給取りと元・借金取りの夫婦だって、誰も知らないんだもの。
「でも、それでいいんだ。
結局は僕たちは、お金を操ろうと思ったら逆に操られていた、情けない夫婦だ。だけどその分、今はしっかりと貯蓄をしたり、丁寧にお金を管理することが出来るようになっている」
反省をして、そこから始まった、って訳か……。
結婚式も、結局私たち夫婦の婚姻届けだけで終わっちゃったし。
「何もかもが、思い出の中に消えた。でも、こうやって僕たちには愛が残った。
それが、今日の一番の『収入』なのかもね」
……うん!
それじゃ、今日もたっぷりと農作業をしてきますか!
「分かった、僕も後で行くよ。
今日もたっぷり、お金の有難味を分かり合おうか」
そうね……うん、そうよね!
お題:思い出の高給取り




