表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/39

暴力沙汰は高くつく

【注意】

一部暴力的な表現が含まれています。ご注意ください。

「ただいまー」


 今日も私の彼氏が帰ってきた。いつも通りの呑気で明るい声を聞いて安心する私だけど、今日だけはそうはいかない。ちょっとこっちにおいでよ、と言うと、どうしたのかと彼氏がこちらに寄ってきた。

 そして、彼氏がこっちに近づいてきたところを見た私は、行動に出た。


「うりゃぁぁぁぁぁっ!!」


「ぎゃあああああ!!」


 一気に相手にスープレックスを決めた私、結果は勿論一発KOだ。


 これで自分が何をしたか分かっただろう、と言った私だけれど、彼氏は逆に私に怒ってきた。一体なぜ突然こんなことをするのか、いきなり暴力を振るうなんて、と。でも、私の方はそれ以上に怒っていた。昔鍛えたスープレックスの技を再び披露するほどに。


「思い出しなさい!昨日私になんて言ったか!」

「そんなこと……愛してるって言ったぜ!?それが悪いのかよ!!」


 あー、やっぱり。彼氏は全然覚えていないみたいだ。


 私が指差したのは、家の中で飼っている一頭のカメ。今は何とか体調が戻り、甲羅から顔を出してのんびり歩いているけれど、先程までは本当に命を落とすかもしれない状況だった。その原因は、ずばり昨日の彼氏にあった。


「貴方、全然覚えていないかもしれない……か、泥酔していたからね」

「で、泥酔……」


 その単語を聞いて、彼氏の方も次第に冷静さを取り戻し始めた。


 昨日、家の中でたっぷりお酒を飲んだ私と彼氏。勿論二人とも成人なので、たっぷり思う存分飲んだのだが、その時に彼氏がふと立ち上がった。一体何をするのか、と動いた私の目の前で――。


「さっきの痛み、覚えているでしょ?」

「お、おう……凄い痛いんだが、それがなんだよ……」


「あのカメもね、昨日同じくらいの事をされたのよ!あなたに投げつけれられて!」


 おいでおいで、と亀を誘い、うりゃあっ、と勢いよく壁に投げつける、酔っぱらって何度も投げつけた彼を見て、酔いが一気にさめた私は何とか止めようとした。でも、暴走する彼を止めることは不可能だったのだ。だから、もう一度会うこの時を使って、大事なカメが味わった痛みを味あわせた、と言う事である。


「……そ、そうか……」


 私の言葉を聞いて、彼氏もようやく納得し、そして私にごめん、と謝罪した。亀の甲羅についたかすり傷が、昨日の大暴れを表す証拠であることを、彼氏も理解したのである。

 すまない、と凹む彼だけれど、これ以上私は彼氏を責めない事にした。幸いカメの方の命に別条はなく、骨が折れたりすることも無く、平穏に毎日が過ごせるようになっている。


「これからは気を付けるよ、あまりお酒は……」

「うん、そうしてね……ってどうしたの?」


 そう言った私は、彼氏が後ろの方を指さしている事に気が付いた。振り向いた私の顔は、あっという間に青白くなった。


「……」


 だってそうだろう、私の先程の大暴れのせいで、家の中の様々なものが破損してしまっていたからだ。机に至っては大きなヒビが入ってしまっている。


「……」

「……ま、やっぱり暴力は良くないって言う事かもしれないな」


 二人揃ってしょげる私と彼氏を見ながら、カメは呑気に歩き続けていた。

お題:おいでよ「うりゃぁ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ