最後の予報
その日も彼は、ごく普通にスマートフォンを操りながら、行きつけのサイトを見続けていた。どんな新着情報が舞い込んだか、どんな新しい記事が出たかを確かめるためだ。
今日も面白い記事が多く、彼は腹を抱えて笑っていた。ところが、ちょうど記事が山場に差し掛かった時だった。
「……ん?」
突然、何も操っていないのに別のサイトの画面が飛び出してきた。そこには、早くこのURLにアクセスするように、と言う最速の文章が書かれていた。だが、今の彼にとってはその文面はうっとおしいものだったため、すぐに元の行きつけのサイトに画面を移し、のんびりと読みふけり始めた。
だが、少し経つとまた同じ文面のサイトが、目の前に現れた。
「……なんだ、またかよ」
当然、苛立った彼はすぐにそのサイトを閉じて元の文章を読み始めたのだが、それからと言うもの、数十秒置きに、同じURLにアクセスを催促する画面がしつこく出続けた。一体何がどうなってるんだ、と思いながら、次第に彼はいら立ちを強めていった。こんなに何度も連絡するなんて、ネットリテラシーがなっていない、もしかしたら詐欺サイトではないかとまで思い込み始めたのである。
「もうやめ、やめだ……」
とうとう行きつけのサイトへの興味も失ってしまった彼は、そのままスマートフォンを投げ捨てベッドの上に大の字になった。
だが、次第に彼は、あのURLはいったい何だろうか、と言う興味でいっぱいになり始めた。あそこに書き記してあるURL、もしかしたらウイルス入りの場所かもしれないが、それでもやはり中身は気になってしまった。一度沸き立った知識欲は衰えることを知らず、結局彼は再びスマートフォンを手に持ち、画面を開いた履歴のページを見ながら先程の催促ページを調べた。
と、その時だった。つけっぱなしのテレビが、突然速報を伝えた。
世界の2つの大国が友好条例を破棄し、実質的に対立、そして戦争をする準備があると互いに伝え合ったというのである。これからの世界は大変な事になる、というアナウンサーの言葉に同意しながらも何気なく先程のページを見た彼の顔から、次第に血の気が冷め始めた。
「……い、いや……た、確かにな……」
ずっと昔、彼はとあるサイトに会員登録をしたことがあった。今の今までずっと忘れていたが、そのサイトに無料登録をしておけば、ある出来事が起こることが確定した時、覚悟を決めて有意義な人生を過ごせるように、と言う連絡がいきわたるようにしてあるという。あの時、冗談のつもりで入会していたのを、ようやく彼は思い出した。
テレビはずっと、例の大国同士が対立関係に入った事を伝え続けていた。もしこの2つの国が戦争を始めたとしたら、彼の住むこの場所はおろか、世界中を巻き込む恐ろしい事態になるのは間違いない。いや、それは既に確定してしまった事を、スマートフォンの画面に映るそのサイトは知らせていた。
「は、はは……」
自分の『死』が決まった事、そこから逃れることは不可能である事を彼が受け入れるまでには、長い時間が必要だった。世界戦争によって、全ての文明や人類が地球から消え失せると言う、『人類滅亡予報』から最悪のシナリオが確定したのを伝える連絡が来た事に対して……。
お題:突然のサイト




