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彼氏ミッション・彼女を守れるか?

「おーい、彼氏くーん!」


 その日、俺の元にやって来たのは嬉しそうな顔をした大事な彼女だった。


 高認の試験で無事高得点を取った俺は、叔父さん叔母さんからの許可を得て彼女と一緒にちょっとした旅行に出かけることになったのである。色々な高校に行けなかった分、頑張って勉強を一人でし続けた甲斐はあったという訳だ。当然その準備もしっかりと整え、彼女の元に向かうことが出来た。


「じゃ、そろそろ行こうか」

「おう!」


 俺たちは、この大きな駅から特急列車に乗り、山間の小さな観光地で一泊することにしていた。ちょっと渋い感じだけれど、今の時期で俺たちが泊まれるところと言ったらそれくらいしかなかったからだ。



「うわー、凄いねー」

「景色が凄い速さで通り過ぎるな……」


 俺も彼女も、特急列車に乗ったのは初めて。やっぱり俺たちが毎日乗るぎゅうづめの普通列車とは比較にならないほどだ。それに、車内もすっきりしている。特別料金を支払っただけの価値はあるのかもしれない、と思った。


 そして、数十分で俺たちは目的の駅にたどり着いた。ただ、俺たちは妙な事に気がついた。


「……あれ?」

「おかしいな……」


 周りを見ても、駅員さん以外誰一人として人がいないのだ。どういうことなのかと尋ねようとしても、駅員さんはそのまま列車に乗ってしまい、俺たちは駅に取り残される格好になってしまった。

 不安が募って来たけれど、すぐに俺たちは自分たちの泊まるホテルを見つけ、慌ててそこに駆け込むことにした。幸い、中には従業員の人がいて俺たちを部屋に案内してくれたけれど、ごゆっくりどうぞ、と言った途端、辺りには静けさのみが漂い始めた。


「……ねえ、これって……」


 もしかしたら、何か変な事に巻き込まれたのではないか。もしそうだとしたら、選んだ俺の責任だ。申し訳ない、とつい俺は謝ってしまった。


「……謝らなくても大丈夫だよ……って……ねえ」

「……どうした……?」


 彼女が言葉を遮った理由は、すぐにわかった。何かが俺たちの元に近づいているのだ。それも一つだけではない、何かをずるずると引きずるような凄まじい音が、いくつもこちらに向かっているのである。

 もしかしたら、これは怪物なのではないか。この町の人たちはきっとあの大きな音の主に食べられてしまって、今頃誰一人として残っていないのかもしれない。そんな事を言い始め、彼女は涙を流し始めてしまった。そして俺も同じような事を考え始めてしまい、背中や足が恐怖の鳥肌で覆われはじめた。


「……いやああ、近づいてくる!!た、助けてええ!!」


「……くっ!」


 俺は覚悟を決めて、扉の前に立ちはだかった。

 大事な彼女を守るためなら、身を投げ出しても良い覚悟で、ずるずると音が近づくドアの前で仁王立ちになった。


 そして、ドアが開いた。


 そこで俺たちが見たのは――


「「……え!?」」


 巨大な漬物石を引きずりながらやって来たたくさんの人と――


「お、おじいちゃん!?」


 彼女が『おじいちゃん』と呼ぶ、老人だった。


==========================


「え……じゃ、じゃあ……!」

「すまんのぉ、ずっと秘密にしとったんじゃ」

「ごめんなさい……」


 二人が俺に謝ったのも無理はないだろう。俺はずっと彼女を普通の「彼女」だとばかり思っていたが、その正体が日本を代表する大金持ちのお孫さんだなんて思いもしなかったからだ。

 そんな彼女が、凄い悪い言い方をすれば高校も卒業できずに家庭の事情で中退してしまった俺と付き合って良いのか、いっそこの旅行を狙って化けの皮を剥ぎ、野蛮な正体を暴いて見せようではないか。そう意気込んだおじいさんだが、どうやら逆に俺はおじいさんの方をやっつけてしまったようだ。


「ここまで勇気ある青年だとは思わなかった。許してほしい」



 そして、おじいさんは言った。

 

 二人の仲を認める、と。


 俺と彼女、二人の笑顔が報われるのは、それから数日後のことだった。 

お題:暴かれた旅行 必須要素:高認

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