信号の色の門を潜れば転生できますが何か?
「ここは……」
気づいた時、俺の目の前には一人の天使のような服を着た青年と、それぞれ色の違う3つの門があった。
「ようこそ、『あの世』へ」
「へ……あの世?」
「ええ、貴方は今から10分前、交通事故で現世から姿を消したのですよ」
ギリシャ風味の薄着の青年は、爽やかげな口調であっさりと俺の身に起きた大変な事を告げた。
確かに、俺の最後の記憶には、歩行者信号が青だったのに突っ込んできた一台の自動車の姿があった。だからこうやってあの世に来た、と考えれば納得は行くだろう。普通はそのまま元の世界に帰りたい、死んだなんて信じられない、となるかもしれないが、何故か俺は目の前の青年の言葉を素直に受け取っていた。
「そうか……俺は死んだのか」
「ええ、残念ですが」
そんなやり取りを続ける中、俺はようやくある事が疑問に浮かんだ。
青年の後ろに並んでいるのは、まるで信号機を思わせるような派手な色に包まれた3つの門だった。止まれを意味する赤色、注意の黄色、そして進めの表示の青だ。最後の青色の門は、正確には「緑色」かもしれないが。
これらはいったい何なのか、俺はいったい何をすればよいのか、その疑問を、俺は目の前の青年に尋ねた。
「ちょうどこれから説明しようと思っていたのですが……
今からあなたには、これら3つの門のどれか一つを選んでいただきます」
今回、不慮の事故で死んでしまったと言う俺に対し、青年の上司が気を利かせてくれたというのだ。扉の向こうには、それぞれ別の死後の運命が待っており、潜った時点で俺にとっての新たな物語が始まるらしい。
「それで……どんな運命が待っているんだ?」
その言葉を聞いた青年は、それぞれの門に進みながら俺に案内をしてくれた
ただ、その内容はどれも俺にとっては少々引いてしまうようなものばかりだった。
青い色は『進め』の色。そこを潜れば俺は現世に戻り、生まれかわることが出来るが、その後成長した後は自動車を乗り回す乱暴なドライバーに生まれかわり、信号無視もお構いなしの危険運転の常連になってしまうという。
「そして、最悪の場合……」
「いや、もういい……なんでそんなのを用意したんだ……?」
それを聞いた青年はごめんなさいと謝った。あいにくこういう『死後』の世界しか上司の元には残っていなかったという。
「それで、赤色は何だ?」
確か赤色は『止まれ』の色、もっとましな感じになるだろう、と思ったのだが、残念ながらこちらも少々曰くつきの一生を過ごす羽目になってしまいそうなものだった。
「え、山火事!?」
そう、赤い炎に巻かれ、両親を失ってしまい、たった一人で過ごすことになるシカに生まれかわるというのだ。確かに大自然は好きだけど、いくらなんでもそこまで過酷なものまでは望んでいない。
「そうですか……そうなると、残されたのは……」
『黄色』、信号標識では注意を促す色である。
もう一度上司に尋ねてみると言うのはどうか、と聞いた俺だが、それだと100年以上時間がかかると言われ、迷わず残った『黄色』の門を選択することにした。その先に見えていたのは、眩い光だった……。
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「おはようございますー」
「あ、おはよう」「今日も頑張れよー」
こうして、俺は『天使』として新たな人生を歩む事になった。
少々露出が多いギリシャ風の薄着に、さわやかな顔。人々に注意を促す『天使』と言うのは、どうやら皆同じ姿形をしているらしい。あの青年が、今の俺の上司の一人だ。声も何もかも今の俺と一緒だけど。
ともかく、これはこれで良いのかもしれない。個性を失った代わりに、満足な第二の人生を俺は歩む事が出来るようになったのだから。
お題:黄色い門




