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神様の玩具  作者: じゅん
9/20

人助け

 「ふぅ・・・」


私はベットの上に横になり、一息つく。

木製のベットには敷布団は無く、布を一枚敷いただけの粗末な作りだ。すごく固い。


 ここは宿屋 「アリ・エール」

どこか、家庭用洗濯洗剤のような名前の宿屋の2階に私たちはいる。


 大広場の出来事のあと、私はまっすぐ宿屋に向った。

宿屋の亭主や周りのおっさん(酔っ払い)と多少のイザコザもあったが、部屋は無事借りられて、引き取ったばかりの女の子をベットに寝かし倒し、今に至る。


 夕日が窓から入ってきて私の足元を照らす。


「これから・・・どうしよ・・・」


ベットに横になったとたん、今までの疲れからか急速に体から力が抜けていくのを感じた。

私はシミだらけの知らない天井を見上げて、その日は眠りについた。




---------------------------------------------------------------------------




 翌朝。

パンの焼ける匂いと共に私は目覚めた。

いい香りだ・・・。モゾモゾとベットから起き上がる。

グゥゥ~っと、ものほしそうに鳴く、私のお腹。


のそのそと毛布を被り、洗面台へ。

洗面台に水が溜まった桶が一つ。

上下水道が発達していないみたいで、水道とかないようです。

・・・ああ。お風呂に入りたい。

桶に溜まった水で顔と頭を洗う。

寝癖もひどいわ。


 余った水で何とか身体も洗えないか。試してみるがちょっと足らない。


「足りないや。水貰わなくちゃ・・・。」


グゥゥゥ~。

2度目の合図がきっかけとなり、ひとまず水浴びは諦め、1階の食堂に向おうと部屋を出ようとする。


「・・・あれ?」


隣のベットで寝ていたはずの女の子がいない。

周りを見回してみるが、少女が隠れるような場所はない。

ガチャッ・・・。

扉が開き、うんしょ、うんしょ、と大量の大きなパンが歩いてくる。その姿はとても不気味だ・・・。


「・・・なぁにしているの?」


少し呆れたような顔をして歩くパンから体の一部を奪い取る。

奪い取った後からは人間の顔が見えた。


「あ。おはよございます。・・・お食事をお持ち致しました。」


うんしょ、うんしょ、ヨチヨチ歩きをしながら、部屋の端にある丸テーブルに大量のパンを、ドサッと置く。


「お腹空いていると思い、宿のおじ様にお話をしましたら頂けました。」


よくもまぁ…パンだけ大量に…。昨日の嫌がらせかよ。


「ありがと。ところで怪我は平気なの?」


さっき取ったパンを食べ終えたので丸テーブルにあるパンをもう一つ頂く。


「あ、はい。特に大きな怪我もなく。助けて頂いたのはご主人様ですよね。有り難う御座いました。」

「気にしなくていいよ。」


もぐもぐ、とパンを頬張りながら答える。


 少女の首に巻いてある首輪と私の指に填められてある指輪のせいだろうか。

寝ている間に、あの少女、【クローディア】がどんな人生を歩んできたか見せられた。

たぶん、アレは夢ではないのだろう。

証拠は何もないが確信だけがあった。


「ところでクローディア。私の事は、【マリナ】でいいよ。ご主人様とか恥ずかしいし。」


3つ目のパンに突入する。

思ったよりとお腹が減っていたようだ。


「いえ、呼び捨てにする事は出来ません。でしたら【マリナ様】と御呼びさせて頂きます。」

「うん。じゃあ、それで。ところで一緒に、パンどお?」


ずい、と手に持った4つ目のパンをクローディアに渡す。


「え、頂いても宜しいので・・・しょうか。」

「うん。一緒に食べよ。」



 私たち二人は、いっぱい話した。

最初は、ぎこちなかったクローディアも少しずつ柔らかくなって行き、歳相応の笑顔まで見せてくれた。


 私の事は、主人として認識しているそうで、首輪の魔法のパワーで強制的に刷り込みをしているそうです。


 このまま、村に戻っても構わないと話すが、クローディアは首を横に振り事情を話す。

奴隷は国家の財産になる為、解放する場合は、相応の税金を国に納めなくてはいけない。

[譲渡]や[貸出]を行う場合も国家に対し、税金の支払いが発生する。

クローディアが村に返した場合、国家としては[譲渡]とみなし、村へ多額の税金が課せられるそうだ。

いくらになるか聞いてみた。

本人も詳しくは分からないが、「とにかくたくさん」 らしい。

もちろん、クローディアの生い立ちを見ているので、村に支払い能力があるとは思えなし。

そんなので戻ってきたら間違いなく疎まれるだろう。

私の手持ちのお金で払えるなら払ってあげたいが、この先を何が起こるか分からないしなぁ~。

 

 この世界に来て一人で心細かったし、この子となら一緒にいてもいいかもしれない。

今は無理だけど、お金を溜めて開放してあげよう。

うん、それがいい。



「ところで、ところで、クローディア。どうしてあの時、他の子供に追われていたの?」


もぐもぐ、とパンを頬張りるクローディアに話しかける。


「・・・アルトが食べる物をもってきてほしい。って言っていたので、」

「アルト?」


あなたの知っている人物の名前、言われても私はわからんよ。


「はい。あたし達のリーダーでした。」


ああ、2年前にクローディアを助けた青年の事か。


「でした。・・・と言う事は。今は、リーダー代わったの?」

「はい。アルト、病気になっていて。食べ物も自分じゃ取れない程、弱ってて。他の子たちは誰もアルトの事を助けてあげなくて。このままじゃ、アルト死んじゃうし・・・」


さっきまでの笑顔が、段々と曇っていく。


「なら、ひとまず。アルト君?だっけ。に会って病院に連れて行こうか?」


まぁ。乗りかかった船だし、病院くらいそんなに高くないでしょ。


「えええ!そ、そんな、マリナ様にそこまでして頂くわけには!」

「いいからいいから。ひとまず、ご飯食べたらそのアルト君のところに案内してよ。これ命令よ。」

「はい・・・。分かりました。」



---------------------------------------------------------------




 午後、町の北側に案内された。

町なみはヨーロッパ風だが、町の中央部とは違い、身なりの汚いおっさんや子供がウロウロしており建物は今にも壊れ落ちそうな半壊状態。いかにも貧民街って感じだ。

何人かが、こっちを見て指を挿したりしてくる。

こっちみんなジジイ。

しばらく裏道を歩くと、突き当たりに半壊している扉が見えてきた。


「ここです。」


クローディアはドアを開け、私はその後に続く。

家に入るとすぐ階段が見えてきてそのまま2階へ。

ギィギィ、と階段を上がる足音だけが部屋に響く。


「アルトいる?あたしだよ。」


2階に上がり声を掛けながら周りを見回す。


「・・・あぁ。奥だ。」


半壊している棚が死角になっている場所から声がした。

余計なトラブルを防ぐ為、クローディアだけ先に行ってもらい事情をアルト君に説明していもらう。



「・・・マリナ様どうぞ。」


アルト君の了承を得たようなので私は二人の元に向う。

そこには、色を失い所々髪の毛が抜け落ちて、息をするのもやっとの状態の青年が壁を背に横たわっていた。

外傷はないようだが全身に力が入らないようで、ぐったりとしている。

医療の知識がない私が見ても、酷い状況だった。


「ハァハァ 挨拶ないのかよ ハァハァ」


空元気で喋るアルト。


「ごめん。立てる?」

「あぁ。病院までなら何とかなると思う。ハァハァ」


立ち上がろうとするが足腰に力が入らないのか、すぐに倒れこむ。


「クローディア。少し手を貸して、私、右の方持つから。」


病気が移るのは嫌だが、そんな事構ってられない。


「は、はい!」


クローディアは慌ててアルトの左に割り肩を貸す


「・・・悪い。クロ。」



 病院は町の中央付近にある。

浮浪者同然(現に浮浪者だが)の子供二人を連れて病院にいったが、いつもどおり、受付と一悶着。

現金をチラつかせ、そのまま診察室へ。

診察自体はすぐに終わり、そのままアルト君は入院する事になった。

2、3日もすれば退院出来るようである。

問題は、医療費。

・・・私の考えは甘かった。全くの計算外。

前にいた所では、保険書という物があって何割か国が負担していたけど、この世界にはそんなものなんてない。

そんなわけだから、請求金額も高い、高い。

小金貨2枚が吹っ飛んでいった。

横たわるベットで泣きながら「有り難う。有り難う!」とアルト君からめちゃくちゃ感謝された。

「よかったね。よかったね。」とクローディアも泣きながらアルト君の手を握っている。

清算を終えた私は、とても複雑な気持ちになりながらもその場を後にした。


 私は、残り少なくなった所持金を見て、今後続くであろう先の見えない生活に不安を覚えながら帰路につきました。


「・・・勢いで動くもんじゃないね・・・はぁ。」


カラスが「カァー」と鳴き、飛び立っていくのを見て、私をよりいっそう鬱な気持ちになった。


早速、所持金がなくなります。


一般的な日本人なマリナ嬢は、困ってる人いれば、手助けするし。出来る事ならやって当たり前と思っています。


皆さんもそうでしょ?


・・・問題は、少し頭が悪く。思ったらすぐ行動に移してしまう所。少し頭を冷やして考えましょう。作者にも言えることですが・・・。

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