奴隷市場にて
マリナとクローディアが出会っていた時間。
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ここは奴隷市場。
会員制の大型ステージ。
小規模なスタジアムのような建物
その会場内では、1人の金髪の少女と司会者がステージ上に立ち競りが行われている。
「・・・大金貨1枚」
黒い髪の青年が札を上げるとさっきまでざわついていた会場が静まり返る。
「他いませんでしょうか!?」
ステージ上の司会者が周りを見渡し他の客の状況を確認する。
「・・・いませんね。タクヤ様!落札です!ステージへどうぞ!」
パチパチと拍手と共に[タクヤ]と呼ばれた青年が観客席からステージにあがり、その後にショートカットの女性とポニーテイルの女性二人が続く。
二人の美しい女性の首には銀色に光る首輪がついていた。
司会者も会場もその美しい二人の女性に目を奪われる。
「・・・ご主人様がお待ちしております。早々に引渡しをお願いします。」
ショートカット女性が司会者へ話しかける。
司会者は我に帰り、手続きを行っていく。
「たしかに大金貨1枚、受け取りました。お買い上げ有り難う御座います。」
再度、会場が大きな拍手に包まれる。
ショートカットの女性が少女をステージから連れ出す。
それに続くように、タクヤはステージ上から会場内の席に戻り、新たに始まった競りに参加した。
「卓也様。先ほどの奴隷、多く払い過ぎではないでしょうか?」
ポニーテイルの女性がタクヤに話しかける。
「マリー。やきもちか?いいんだよ。アレはこの値段で。」
「と、申しますと?」
「いろいろとね。」
「理由になっていません。」
「・・・しつこいねぇ。本当に嫉妬してるんじゃない?まぁいいや。アレ。加護持ちだぜ?」
すこし、驚いた表情をしたあと、マリーと呼ばれた女性は呆れる様な表情をする。
「なる・・・ほど。ご主人様には色々、驚かせて頂きましたが、見ただけでお分かりになるのですか?」
「まぁね。ちなみに【加護】は【慈愛】。珍しいね。大金貨1枚なら安いもんだよー」
【加護】とは誰にでもあるわけではなく、特殊な環境化の中の一部の人間だけに現れる特殊能力である。
別名【神様の贈り物】と呼ばれるソレは自然界や万物、ありとあらゆる物への干渉が可能。
たとえば【火】の加護がある場合は火に対して何らかのアクションを行うことが出来きる。
長い詠唱を必要な魔法とは違い、手足を動かすが如く、ノーリスク・1アクションで効果を発揮できる利点がある。
しかし、その為には【加護】の所持だけでは足らず、特訓とセンスが必要になる。
センスがない者は貴重な【加護】を持っていようが、発動すらしない。
通常、このような会員制の奴隷市場では購買が行われる前に神官による【加護】のチェックが行われる。その費用は出品者持ちで、けして安い物ではない。
今回は出展者の都合で神官による【加護】のチェックをしなかったのであろう。
タクヤは手に持っている札を高らかに上げる。
「金貨5枚」
おおー、と会場はまた沸く
「・・・話ながらもキチンと見てらっしゃるんですね。絶妙なタイミングかと。」
「じゃあ。また、前行こうか」
ゆっくりと立ち上がりタクヤはステージへ進む
「御意」
その後ろに大きなポニーテールを揺らしマリーは続く。
「ふぁ~。次、落としたら家帰ろうな~眠くなってきたよ。」
「了解致しました。馬車を用意させておきます。」
ステージ上に上がり、手続きを行っていく。
タクヤは新たに買った奴隷を見定める。
「・・・へー。」
「タクヤ様、何か申されましたか?」
司会者は尋ねる
「いいや。じゃあ。マリー、僕は席に戻るから後は宜しくね。あと今落とした彼女は明後日までに、それなりに使えるようにしておいてね。あ、これ命令だから。」
そういうと黒い髪に黒い服のタクヤと言う青年は黒いマントを翻しステージを後にした。