教会:民家
城門側で、大勢の怒号が聞こえて、瞬間、天高く火柱が伸びていた。
外にいた蟻達が裏路地から広場の道へと出て行く。
出窓から顔を出し近くに蟻達の出入りがない事を確認。
計画より少し早くなったが私達は家を出て、急ぎ教会の報告へ方へ向う。
大広間の方では大勢の怒号と金属音が響く。
誰かが蟻達と戦っているんだろうか。
路地裏にいた蟻が全て広場に向っているのでかなり、強い人達が戦っているに違いない。
クローディアの誘導の元、裏路地をクネクネ曲がり進む。
大通りに出たが、やはり大勢の蟻がいた。物陰に隠れて反対側の道へ移動する。
移動途中、大勢の死体をみた。
顔までは確認できなかったが、さっきまで生きていた人だろう。
中には顔見知りの人もいたのかもしれない。
感覚が麻痺していく。
教会が見えてきた。
遠目から路地の物陰に隠れながら教会の様子を確認する。
教会周辺には蟻が数十匹いる状態でまるで近寄れない。
教会の中には、人間がいた。
二階の窓から男性が顔を出して弓矢を撃ったり、大きな石を落としたりしていた。
「あ・・・。こりゃーまずい。」
「まずいですね。」
教会には近寄れない。
このまま、ここにいても見つかるだけなので、そっと路地に戻り、路地裏の家の扉確認する。
3件目で鍵が掛かっていない家を発見。
扉を開けて中に入り鍵を閉める。
慎重に家の中を確認して回る。
1F、異常なし。
2F、異常なし。
3Fへの階段発見。
2Fの天井からギィ、と言う軋み音が聞こえる。
誰かいる・・・。
いつでも逃げられるように、クローディアには1Fの玄関扉にいてもらう。
私はそのまま3Fへ。
音を出来るだけ立てないようにゆっくりと上がり、3Fの状況を確認。
かすかに声が聞こえる。
人の声なので蟻ではないようだ。
「・・・だれかいます・・・?今からそっち行きますけど平気ですか?」
階段のところから部屋に向って私は先人に声を掛けた。
「・・・だ、大丈夫です。」
返事が返ってきた。
ふ~、と安心して3Fの部屋に向う。
中に入ると部屋のすみでは若い女性が小さな女の子を抱きしめる様に縮こまっていた。
「二人だけですか?」
改めて、部屋に入りまわりを確認してするが、部屋には木製のベットと小さな棚が一つづつ置いてあるだけでほかに隠れる場所などない。
「は、はい。私とこの子だけです。」
母親だろうか、女性は立ち上がり答える。
縮こまっていた少女もゆっくりと立ち上がり女性の後ろに隠れながらこちらを確認してくる。
女性の服を翌見ると大きな赤い滲みが所々に付着していた。
「私はルルといいます。この子はルナ。そ、その街は・・・ど、どんな状態でした・・・か?」
「・・・酷いもんです。街中、怪物だらけで・・・あ、私、マリナっていいます。もう一人、いるんで呼んできます。」
クローディアを呼び入れて、4人で現在の状況の整理を行った。
この家はルルさん達の家である事。
旦那は仕事場から帰ってこない。
ルルさんが「ああ。。トーマス。」とか途中泣き始めて大変だった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
新しく分かった事もあった。
蟻達は頭が悪いようで、【扉を開ける】という考えが思いつかない様で、ルルさん達以外も何人も家に隠れている可能性があるそうです。
そして、私達は教会を目指しているが、蟻達が周りを取り囲んでいる為、ココに逃げ込んだ事を説明。
「ココに残るにしろ、教会行くにしろ。早めに決断しないといけませんね。あの怪物達だってずっとウロウロしている保障はありません。」
クローディアがパンを齧りながら論ずる。
いあ。そのパン何処から持ってきた。
「たしかに・・・あのツメなら家の扉くらい簡単に壊しちゃうだろうしなぁ。ルルさん何か、いい方法ありませんか?」
「いえ。なにも・・・すみま―――」
バリバリィと1階で扉が壊れる音と蟻の奇声が聞こえた。
「ひっ!――」
ルルさんが悲鳴を上げそうになった瞬間、クローディアが慌てて口を押さこむが、重みに耐え切れなかったルルさんが態勢を崩し、床に倒れる。
ドタ。
「ば、ばか!」
倒れた音に反応し、蟻は奇声を上げて階段をゆっくりと上ってくる。
この部屋には窓などない為、逃げ場はない。
観念して私は、カバンに入れておいたポケットナイフを取り出し、ルルさんとルナの前に立ち両手でナイフを構える。
「く、」
ギィギィと少しずつ音が大きくなる。
横ではクローディアがフライパンと木製のお鍋の蓋を盾代わりにし構える。
緊張が走る。
心臓の音しか聞こえなくなった時に、蟻は姿を現した。
私たちの姿を見るや、再度大きな奇声を上げる。
蟻の奇声と同時に体が自然と動いていた。
ナイフをそのまま、首のつなぎ目を沿う様にして走らせる。
まるで私の身体でないようだ。
そう・・・子供の頃、大人に手足を操られていたその感じに似ている。
一閃、ナイフで首を落とし、蟻は奇声と共に床に倒れた。
私はそこで操り糸が切れたかのように床に尻餅をつく。
「え?え?え!」
後ろにいる女性陣も唖然としている。
元来、この蟻はDクラスに分類されるモンスターだ。
熟練の兵士でさえ、数人でやっと一匹倒せるような生き物である。
そんな化け物を相手に、女性しかも一般人がそうやすやすと倒せるものじゃない。
「あ、あなた何者・・・? いえ、今はいいわ。有り難う助かったわ。」
ルルさんが近寄ってきて手を差し伸べてくれた。
「あ、あははははは。何でしょうね。」
正直、腰が抜けていて立てない。
そんな様子を察したクローディアがそっと肩を貸してくれた。
「マリナ様・・・。」
「ご、ごめん。後で話すよ。・・・ひ、ひとまず、ここは安全じゃないからすぐに移動しよう。」
「でしたら、二階の窓から屋根伝い外に出れます。きてください。」
ルルさんに私たちは案内されて、ルル家を後にした。
ほんと―――なんなの・・・いったい。