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星々
星空の光だけが綺麗な輝きを放つ真っ暗な世界。
まるで重力を感じられない。
全てから開放されたかのように、私はこの星空の海を漂っていた。
「―――――― おかえり」
母のような、父のような優しい声で私は声をかけられた。
声の主の姿は何処にも見当たらないが近くにいる事だけは感じられた。
どこかで聞いたことがある声だが思い出せない。
「―――――― また出逢えて嬉しいよ。」
腕を動かそうとするが力がまったく入らない。
「―――――― 本来ならば、私たちが出逢うのは、まだ先、と決めていたのだがね。なかなかどうしてうまくいかない。・・・よかろう。筋書きとは多少異なるが、彼の期待に答えてやるのも面白い。」
天に輝いている星々が一つづつ、流れ星となって消えていく。
「―――――― 女性を一人置いて去るのは忍びないが、お先に失礼するよ。」
声の主の気配が消えると同時に、一つづつ順に流れていた星が、一斉に流れて弾け散り、閃光となって世界を白く染め上げた。