はじまりは実験室
気が付くと白い部屋の中にいた。
--------「気が付いたかい?」
突然、後ろから声を掛けられる。
振り向いて確認をするが背後には誰もいない。
周りを見合わせてみるが、部屋には私、1人だけ。
・・・・気のせいか
「いいや。断じて気のせいではないよ。」
「・・・ああ。すまないね。本来なら直に会って話をした方が礼儀として正しいと思うのだが。いかせん。[私]は醜くてね。とてもとても人に見せられた物ではない。こんな形になるが許して欲しい。」
やわらかく、優しく、そして歌うような話しかけてくるが、その声はどこか寂しげな感じがした。
声は続く
「察しの通り、君は一度死んでいる。いや、【正確に言うならば、死んでいる最中】」
瞬間、最初からあったかのように白い部屋が水で満たされる。
「そこで選択を一つを。もう一度だけ、君は人生をやり直す事ができならどうだろうか?」
「このままでは、確実に死んでしまうだろう。君はまだ若く美しい。遣り残したこともあるはずでは?残してきた家族は?愛する人は?将来の夢は?」
やわらかい口調が淡々と続く
「さぁ・・・答えを聞かせて欲しい。諦めるか・否か。」
そんな事、答えは決っている。
こんな、意味不明な終り方なんか嫌に決ってる。
たとえ、夢や幻でも望みがあるなら生きたい・・・
「良くぞ。選んでくれた。ではまずは・・・」
部屋に満ちていた水が一瞬で消えると身体が宙に浮き上がり、視界が急に真っ黒にな
る。
平衡感覚がとれず、どちらが上か下かすら分からない。
―――――新たなる生への祝福の言葉と些細な物だが、贈り物をお送りしよう。これからの人生できっと役に立つ物だよ。
さぁ。今はお眠り。・・・・それではまた、【遭おう】
四肢に力が入らなくなり、だんだんと意識が遠のいて行く。。。
意識が消える寸前、ヒトの姿を見たような気がした・・・・・・